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#153 夜中2時にストレッチ

入院生活を送っている。
入院は人生で3度目だけど
今回は術後最低1週間とのことで、長い。
持ってきた本はもう2冊とも読み通してしまって
好きな方をまた読み直している。

部屋は広くて、事情により個室になったため
のびのび過ごせる。
夜中に吸引チューブの音で他の人を起こすんじゃないかと気を遣わなくていいのは良い。

窓から見える街をぼんやり眺める。
あの公園はつい半月前に家族で立ち寄ったところ。
隣、お墓だったんだ。生垣が高くて気が付かなかった。
暑いのにテニスをする人たち
横断歩道を渡る自転車
背の高い建物といえば、家電量販店くらい。

厚い雲が来たなと思ったら夕立だった。
道路が黒く濡れて、しばらく斜めに降る雨を見つめる。
家にいたら「今日子供の習い事あったっけ」とか「夕飯何にしようかな」とか考えてる様な時間に呑気なもんで。

でもとても帰りたい。

夜中、咳で目が覚めてから眠れなかった。
翌日とくに予定もないし、焦ることはないけれど
回診の足音がしたらなんとなく眠ったふりをした。
途中で諦めて起き上がり、痛いくらい凝った背中をほぐすことにした。

・・・


ここ何年かで毎日、少しずつ、手をかけることで
わたしの身体は本当に変わった。
ガシガシとトレーニングしていないのに、痛い所はないし、むくんだなぁ凝ったなぁと思ったら
自分で元に戻せる様になった。これってすごいこと。

痩せる!とか、これだけ!とか煽るものにどうしても目が行くけれど
わたしには会わないのだなと理解できた。
初めはこんなに緩い動きでいいの?汗かいてないし、筋肉痛こないし…って思うこともあったけど
徐々に習慣化してきたことが何よりも
「わたしにフィットしてる」ってことじゃないか
と気がついて粛々と続けてきた。
今はそうやって導いてくれた人に感謝しかない。

以前と変わらず食べているのに、太らない。
むしろ少し痩せた。
でも夫が驚くほどの筋がお腹にある。笑

たった4日、さぼっただけで
わたしの背中は悲鳴を上げていて、それももう断末魔みたいだった。
これを無視するとこのまま固まってしまうことが分かっているから、傷に響かない様にそっとストレッチする。

夜の街を眺めて、ゆっくり息をして
少しずつ伸ばす。

ちょっと前のわたしだったら、すぐに結果が出て欲しくて無理してでもほぐしたと思う。
でもそれがいいことないと知った今は、身体のあちこちに訊きながらじわりじわりと進める。
肩甲骨の間に板でも入っているみたい。
手の甲に点滴のルートがあって四つ這いができないので、なんとか他の方法を試す。
こうやったら気持ちいいかも
これならできるかも


急に「きっとなんでもそうなんだ」とわかった。

自分の中から聞こえる声を無視していると
だんだん聞こえなくなってしまう
聞こえないから、他の誰かに教えてもらおうとする
だけどそれで良いのかもわからない

闇雲に「良い」と言われることに手を出しては火傷し
上手くいかなくて投げ出し、
自分はだめだとがっかりする

たくさん消耗して疲れるのはもう十分やってきた。
あの人に良いものが、わたしにも良いかはわからないこと。正解はどこにおちていないこと。

きっとなんでもそうなんだな。

夜中にそんなこと考えるなんて
わたしも疲れてるのかな。
大して、何もしていないのだけど。

窓の外は白んだ灰色一色。
と思ったら向こうの方に青空も見えてきた。

早く家族に会いたい。

写真に撮ると青いな

るる

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