#141 『銃・病原菌・鉄』振り返り-⑩

さてさて,アクセス数が変動しても,いいねの数が少なくても,それでも続けている自分は,その辺の人気ブロガーたちよりもよっぽどすごいなぁと思う今日この頃です。それでも続けられるのは,物書きが好きだからなんでしょう。ぶれずに続けたいですね,今は。

マスの狙い方はわからないので,今は,自分の納得する文章を提供すること,それだけを守って続けていこうと思います。

さて,今日も今日とて,昨日のブログ(こちら)の続きです。おもしろい本の内容を自分なりにまとめることで自分の体に吸収させ,なおかつ,ご覧になっている皆様に本の情報をお届けしていきますよー

さて,今日は,病原菌についてのまとめです。

昨日まで,他の生物と同様に進化圧にさらされている病原菌が,自らの生き残りを図るために,人間に症状を起こさせるよう進化してきたことをお話してきました。うまく人間に症状を起こさせる病原菌が,多くの人間に感染することができ,その結果,生き残ることができたのです。

そういった病原菌にとって,農耕・定住生活に伴って始まった集団生活は,繁殖環境としてこの上ないものでした。そして,人間は,すばらしい繁殖環境を提供しただけでなく,人間に感染する病原菌を新たに誕生させる(進化させる)環境も提供しました。家畜に適した動物(集団生活できる動物)は,集団生活を送る人間と同様に,集団感染の病原菌を保有していました。この病原菌を保有していた家畜たちと一緒に暮らすという,農耕・定住生活は,人間へ感染する病原菌へ進化することを可能にしたのです。

こう考えると,農耕・定住生活,そして,それに伴う集団生活こそ,病原菌の進化・繁殖を加速させ,その結果として集団感染を引き起こしたと考えられます。

ユーラシア大陸では,どの大陸よりも先んじて,農耕・定住生活→集団生活が始まっていましたので,集団感染のリスクを,より古い時代から負っていました。より多くの世代にわたって,集団感染のリスクにさらされ,より集団感染に強い個体(人間)が生き残り,子孫を残していました。

こういう意味で,ユーラシア大陸には,集団感染に強い個体(人間)が生き残っていたといえるでしょう。

とはいえ,ヨーロッパ人(ユーラシア大陸人)が新大陸を発見した時点で,新大陸(南北アメリカ大陸)にも,集団生活を送っている人々はいました。インカ文明やアステカ文明のように,ユーラシア大陸と同じように,大勢の人々が「国家」を形成し,集団生活を送っている地域もありました。後で書きますが,コロンブスがアメリカ大陸を発見した時点で,アメリカ大陸の人口が,ユーラシア大陸と比べて極端に少なかったわけでもなかったのです。

アメリカ大陸において集団生活が存在していた地域では,ユーラシア大陸と同じように,集団感染のリスクがあったように思われます。アメリカ大陸固有の集団感染症があってもおかしくありません。

しかし,実際には,アメリカ大陸固有の感染症がヨーロッパで大流行することはありませんでした。ヨーロッパの感染症がアメリカ大陸で大流行するのみで,感染症の流行は完全に一方通行だったのです。

一見不思議ですが,この疑問は,集団感染症を引き起こす病原菌がどうやって人間に感染するよう進化したのかを考えれば解消されます。人間に集団感染を引き起こす病原菌は,家畜に集団感染を引き起こす病原菌から進化した,ということでした。

ユーラシア大陸には,集団で暮らす,家畜に適した野生動物が多く生息していましたが(牛,豚,馬,ヤギ,羊など),アメリカ大陸に生息する,家畜に適した野生動物は限られていました。しかも,ユーラシア大陸と異なって,農耕・定住生活の地域が,砂漠や山脈,熱帯雨林で断絶されていたので,例えば,アンデス地方の家畜であるアルパカが,メキシコで家畜化されることはありませんでした。そのため,それぞれの地方で,限られた野生動物(ほぼ1種類)を家畜化するしかなかったのです。これに加えて,アメリカ大陸の家畜は,ユーラシア大陸の家畜ほど,大きな集団で暮らしていませんでした。

こういった要因が重なり,ユーラシア大陸では集団感染が家畜化によって引き起こされたのとは対象的に,アメリカ大陸で集団感染は起こらなかったのです。

ヨーロッパ人には耐性のあった集団感染は,新大陸(アメリカ大陸)の先住民にとって,何よりも悪い贈り物でした。ヨーロッパ人がアメリカ大陸を発見した当時,南北アメリカ大陸にも,2000万人ほどの先住民が居住していましたが(この人口は,当時のユーラシア大陸の人口と比較して,極端に少なくはありませんでした。),たった200年で,95%が減少してしまったのです。

その人口減少に最も大きな役割を果たしたのが,アメリカ大陸の先住民が初めて直面した集団感染症でした。集団感染症は,アメリカ大陸の先住民に甚大な犠牲を払っただけでなく,オーストラリアのアボリジニ,南アフリカのコイサン族など,世界各地で猛威を振るいました。

しかし,最も大事なことは,アメリカ大陸の先住民が集団感染症に弱く,ヨーロッパ人が集団感染症に強かった理由が,双方の間に,身体的な優劣(ましてや,カトリックを信仰しているかどうかなどの思想的な優劣)があったからではなく(当時のヨーロッパ人は,新大陸征服の思想的正当性をキリスト教に求めていました),偶然にも,ヨーロッパ人が,ユーラシア大陸という,集団感染症に何世代もの人類がさらされてきた地域に生まれたからに過ぎない,ということです。

まあ,言ってしまえば,ヨーロッパ人に優位性をもたらしたのは,「生まれた場所」という偶然に左右されるものでしかないのです。

今日は時間がきましたので,ここまでにします。

ここまでが『銃・病原菌・鉄』の上巻なんですが,明日以降下巻について書くかどうかは,明日決めます(笑)。下巻もかなりおもしろいですが,他にも書きたいことがあるかもしれないし,なんか,今日で終われば,終わり方としてキリもいいので。

まあ,明日のことは明日考えます。

それではまた明日!


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