#147 利益相反取引-④

銀魂っておもしろいなと今日改めて思った古田です。

さて,昨日のブログ(こちら)の続きです。

昨日は「間接取引」について説明しようとしていましたが,結局,保証の説明に終始してしまいました(汗)。

それはそうと,法律を勉強していると「直接」とか「間接」とかいう用語がめちゃくちゃ頻繁に出てくるんですが(他にも,間接正犯,直接正犯など),この「直接」とか「間接」という言葉に何か意味があるかというと,おそらくほぼほぼ無意味だと思います。「直接」とか「間接」という言葉をどれだけ凝視しても,内容は全然見えてこない。

利益相反取引の場合も全くそうで,「直接取引」「間接取引」というワードに何か意味があるわけじゃなく,「利益相反取引」という規制するべき対象(取締役と会社の利害が相反するから代表取締役が了承(決済)すれば足りるような普通の取引とは違った決済システムを導入するべきもの)として,「直接取引」という,取締役が会社の取引相手(又は取引相手の窓口)になるものが第1に想定されるんだけど,それだけじゃ抜け道がいくらでもあるので,「間接取引」「直接取引」には当たらないけれども」規制すべきものを,別途「間接取引」と呼ぶようにしたわけです。

だから,「直接取引」「間接取引」というのは,「直接取引」に当たらないものを「間接取引」と名付けた,くらいの意味合いしかない。というか,取締役が取引相手や取引相手の窓口になったりする取引だけを規制するだけじゃ足りないよなぁという問題意識から,「取締役が取引相手や取引相手の窓口になったりする取引」とは別の枠組みを作ろうと思い立ち,その結果,「取締役が取引相手や取引相手の窓口になったりする取引」を直接取引と名付け,それに含まれないやつを「間接取引」と名付けたわけです(多分)。

だから,「直接取引」と「間接取引」の言葉自体には記号としての意味しかなくって,「直接取引」「間接取引」を「1取引」「2取引」とか「A取引」「B取引」とか「SMAP取引」「TOKIO取引」にしてもよかったわけです。どれを命名しようと,区別できてりゃそれでいいからです(多分)。

(本当はドイツ語とか英語の「直接・間接」を日本語の「直接・間接」に翻訳していたりするかもしれないので,あくまでも,(多分)です!)

これくらいにしておいて,間接取引の話に戻ります。

で,昨日は,ひたすらに保証・連帯保証の話をしましたが,その話になったのは,保証が間接取引になるからでしたね。

ここで大事なところを補足しますが,保証契約(もちろん連帯保証を含みます)というのは,借主本人が契約当事者ではありません。つまり,保証契約というのは,貸主と(連帯)保証人の2人がハンコを押して結ぶものなんですね(契約を結ぶこと=契約書に当事者両方がハンコを押したりサインしたりして契約を成立させることを,「契約を締結する」と言ったりします)

(あと,保証契約は必ず書面で契約締結しなければならないので,ハンコも押していないしサインもしていないのに連帯保証人になっていた!ということは(一応)ありえません。しかし,保証人が自分以外の他の人(例えば借主本人)に,代わりにハンコを押してもらったりサインしてもらったりすることはできます。これは別に保証契約に限ったことではありません。本人が了承しているのであれば,誰か代わりの人がハンコを押したりサインしても構いません。代わりの人がハンコ押したりサインしたとしても,本人が了承しているなら,契約は本人との間で成立します。保証の話に戻りますが,例えば,借主本人だけが銀行にやってきて,銀行との間で借金の契約をすると同時に,その借金の契約書の裏面に書かれている連帯保証契約書に,連帯保証人(例えば借主本人の父親)の名前を借主本人が書いたとしても,父親が連帯保証人になることをあらかじめ了承しているなら,父親と銀行との間で連帯保証契約が締結されたことになります。あらかじめ了承していなくても,後日父親が了承すると銀行に伝えたら,それはそれで,最初から父親本人との間で契約が締結されたことになります。問題は,あらかじめ了承していないし,「そんなの知らん!息子が勝手にやったんじゃ!」と父親が突っぱねてしまう場合ですよね。この場合,銀行は困ってしまいます。父親としても,勝手に名前を書かれただけなので,銀行から返済を求められても困ってしまいます。もちろん,悪いのは勝手に書いた息子なんですが,こんなことをするような息子にお金なんてあるはずがなくって,銀行としては,是が非でも父親からお金を取り立てたいわけです。逆に,父親としても,こんな放蕩息子のせいで1円も使いたくないわけで,是が非でも返済したくない。こんな場合どうなるかというと,原則としては,父親の了承もなしに勝手に息子が書いたわけですから,父親が返済する必要はないのですが,とはいえ,銀行としても,父親が連帯保証人になってくれると信じた理由が何かしらあったわけで,例えば,銀行の窓口で父親本人に電話で連帯保証人になることの意思確認を済ませていたのであれば,そもそも「了承していない」という父親の言い分が通用しなくなるので,父親は返済しなきゃいけないでしょう。銀行担当者が意思確認していなくても,例えば,父親が実印や印鑑証明書を別の目的(土地の売却に使うためなど)で息子に預けていたら,それを息子が悪用し,銀行の融資担当者を欺いたという場合であれば,正直なところ,父親にとってはかなり不利な状況=返済しなくちゃいけないと思います。これ,法律では「表見代理」なんて呼んだりしますが,このように,自分が了承していないことを勝手に自分の名前でされちゃったのに,結果的に責任を負わされてしまうことがありうるんですね。もちろん,父親が銀行に返済したら,後で息子に返済した金額分を払えと請求することができますが,まあ,息子にお金はないでしょう・・・。)

保証の話ばかりしていて先に進みなさすぎていますが,もう今日は先へ進めるのを諦めたのでもうちょっと保証の話をします。

前回,保証人をつける目的について「アテにできる財産を増やす」という話をしました。保証人と保証契約を結んでしまえば,保証人の財産も返済にあてるための原資になるので,「アテにできる財産が増やせる」ということでした(「アテにできる財産」のことを「責任財産」と呼んだりもします。「責任」というワードが用いられている理由は知りません!)

で,これと関連するのが,↑に書いた銀行と息子と父親の具体例から出てくる「無資力リスク」の話です。ちょっと説明しますが,↑の銀行というのは,保証人をつけなかったら,息子本人の財産しかアテにできないわけです。息子本人が全財産を失ってしまったら,当然,返済を受けることはできません。「天下無敵の無一文」なんて言われたりしますが,無一文の人間からは,どんなに頑張っても返済を受けることはできないのです。

(ここで大事なのは,本当の本当に「無一文」にならなくても「天下無敵」になれることですね。この仕事していると,生活するために最低限必要なお金すら返済に充ててしまい,本当の本当に無一文になっちゃう人がいますが,そこまでして限界まで返済しなくていいです。返済に充てるのは,生活費を差し引いた残りだけでいいんです。生活費を差し引いた残りが返済に追いつかないなら破産してください。その状況は借り過ぎです。状況は悪くなる一方ですから,すぐに弁護士に相談して破産(又は再生)の準備を進めてください。そして,破産しても,現金99万円は持っていていいです。破産というのは,財産を全部お金に変えて返済に充てる手続きですが,その「財産全部」に現金99万円は含まれません。だから,現金99万円を手元に持った状態で破産していい。というか,それくらい現金がないと,弁護士に依頼することすら難しい。お願いだから,弁護士に依頼できないほど返済して自分を追い込まないでください・・・!)

話を戻しますが,どんなに頑張っても返済を受けられない「無一文」の状態(「無資力」と呼びます)になるかもしれない危険性を「無資力リスク」と呼びます(↑に書いたことから,99万円を手元に持っていても「無資力」ですからね!)。この「無資力リスク」が銀行にはあるわけですね。借主が無資力になってしまうかもしれない危険性=リスクが,銀行にはある。

しかし,保証人をつけると,銀行には,借主の無資力リスクはなくなります。なぜなら,借主が無資力になったとしても,保証人から返済を受ければいいからです。このことを,「銀行は借主の無資力リスクを負担しない」,「保証人が借主の無資力リスクを負担する」と呼んだりします。もちろん,銀行は,借主本人と保証人のどちらもが無資力になってしまうと返済を受けられなくなるので,この意味で無資力リスクは消えていないのですが,とはいえ,無資力→破産となると,7年間ものあいだ,クレジットカードが作れなくなったり,ローンが組めなくなったりと,破産自体が悪いことではないにしても(こちら参照),不利益がないわけではありません。

だから,普通は,無資力にならないよう頑張るわけです。銀行としては,借主本人と保証人の双方が無資力になるリスクがあるのはわかってはいるんだけど,普通は無資力にならないよう頑張るんだから,2人のほうが,1人よりは,リスクを分散できるよね,と考えて保証人をつけようとするのです。

もうここまでくると,利益相反取引の話ではなくて,保証とか破産とかの話でしかありませんが,引き続き明日も,「利益相反取引」というテーマで書いていきます!

明日は,いよいよ,保証が利益相反取引になることを書くと思います!ポイントは,既に書いた,「保証は貸主と保証人との間の契約」だということです。借主本人は保証契約の場面では登場しないのが,重要です。

それではまた明日!


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