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#334 NHKの受信料-②

どうも,こんにちは。

古田博大(ふるたひろまさ)です。

このブログを初めてご覧になる方は,はじめまして。

いつもご覧くださっている皆様,いつもアクセスありがとうございます。

僕は,1990年生まれで現在30歳。2017年1月から弁護士として働き始め,ちょうど2年半が経過した2019年7月10日にうつ病を発症し,それから今日までずっと休職しています。

うつ病発症からしばらくは,眠ったり食べたりすることもままならず,生きることそのものが苦しい時期が続きましたが,長い時間をかけて少しずつ回復することができました。今は,週2日の休みをはさんで毎日出勤練習(慣らし勤務)を繰り返しながら,復職への準備を進めています。

うつ病をきっかけに「自分も何か行動したい!」と思い,2019年12月から,この毎日ブログを始めました。とはいえ,このブログでは,うつ病に関することだけでなく,日々考えたことを自由気ままに書いています。

書きたいことがたくさんあって,文章が長くなってしまうことも多いですが,ブログの負担が大きくなりすぎてうつ病に悪い影響を与えないよう,書き始めてから1時間程度でアップロードすることにしています(#ほぼ毎日時間オーバーしていることはナイショです)

「書きたいがたくさんある」と「1時間でアップする」は両立が難しく,そのため,文章がつながっていなかったり,文章自体がわかりにくかったりと,弊害も多々あるんですが,どうしても「毎日ブログ」を続けたいので,毎日綱渡り状態ですが,アクセスしてくださる皆様のおかげで,今日までなんとか続けることができています(;^_^A

僕のうつ病の経過については↓でまとめています。

それでは,今日も書いてきます!

今日は昨日に引き続き,NHKの受信料の話です。

昨日は,NHKが受信料を要求できる法律上の根拠についてお話しました。受信料の根拠は放送法なんですが,実はそう単純な仕組みにはなっていませんでしたよね。

昨日のブログで最後に書いたことをもう一度復習しておくと↓

①放送法には受信料の支払義務は書かれていない

②放送法にはNHKと契約しなければならないと書かれている

③受信料の支払義務は契約するまで発生しない

④「意思表示を命じる判決」によって無理やり契約を結んだことにできる

⑤契約を結んだ月からではなくテレビを設置した月から受信料を支払う必要がある

こんな感じのことを,昨日のブログでは書きました。

今日はちょっと別の角度から話を進めたいと思います。「NHKと契約しなければならない」らしいけど,じゃあ,「NHKと契約しなければならないのは誰なの?」という話です。

昨日のブログでは,わざと,「NHKと契約しなければならないのは誰なの?」という点を曖昧にして書いていました。今日はきちんと解説しますね。

さて,「NHKと契約しなければならないのは誰なの?」という疑問についても,放送法の条文から話は始まります。

昨日も書きましたが,放送法の64条1項には,こんなことが書いてあります↓

「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」

だから,「NHKと契約しなければならないのは誰なの?」という疑問に対しては,放送法が明確に教えてくれていて,つまり,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」が,NHKと契約しなければならないんです。

じゃあ,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」って誰だよ?という疑問が次に浮かんできます。

「協会」というのは,「日本放送協会(=NHK)」を指すことは,放送法2条9号に書かれています(ちょっとわかりにくい定義規定にしているのがいやらしいですけど)。

だから,「NHKの放送を受信することのできる受信設備を設置した者」は,NHKと契約しなければならない,ということが,放送法には書かれているわけです。

次に出てくる疑問は,「受信設備」とは何か,ちょっと細かいですが「設置」とは何か,ということです。

こんな疑問を浮かべるなんて,「弁護士って,めちゃくちゃ重箱の隅をつつくなあ・・」と思った人も多いかもしれません。放送法に書かれている「受信設備」や「設置」という言葉の意味なんて,普通考えませんよね(笑)。

でも,弁護士の仕事ってこういうことなんです。法律に書かれている言葉の意味をめちゃくちゃ考えます。もちろん,考える前に,判例や文献を最後まで調べ尽くしますが,その調査結果を踏まえて,更に考えます。その調査結果を鵜呑みにせず,「考える」ことが必要なんです。

あらゆる弁護士が判例を鵜呑みにしていたら,裁判所の思う通りに社会が運営され,より良い社会を実現することはできません。

例えば,かつては,「尊属殺」を,普通の殺人罪よりも重く罰する規定が刑法に定められていました。「尊属」というのは,自分より「上」に位置する親族を指します。自分にとっての父親や母親,祖父や祖母が「尊属」に当たります。

「尊属」を殺害した場合,無期懲役又は死刑しか裁判官は選べないと,かつての刑法には書かれていました。

その「尊属殺」規定がおかしいと,ある弁護士が思ったんですね。

ある女性が,尊属殺を理由に逮捕され,その弁護士に助けを求めてきました。

その女性は,実の父親を殺害したんですが,この女性,その父親から何度も強姦され,挙句の果てに,その強姦で身ごもった子どもを出産させられていたんです。こんな凄惨な事件が既に起こっていたんですが,この女性にも,愛する男性が現れ,その男性と結婚したいと実父に打ち明けたところ,その実父が激怒し,その晩再び強姦され,耐えきれなくなり,実父の首を絞めて殺害してしまいます。

こんな経緯で殺害してしまったとしても,「尊属殺」ですから,無期懲役または死刑になってしまいます。それはおかしいと,ある弁護士が思い立ち,尊属殺規定が憲法に違反していると最高裁まで争い,結果的に,尊属殺規定が違憲であると最高裁が判断しました。

僕ら弁護士が心に秘めておかなきゃいけないのは,「おかしい」と思える正義感です。

調べ尽くしたうえで,それでも「おかしい」と心の中の正義感がさけぶのであれば,堂々と「おかしい」と裁判で主張する。

これが,弁護士のあるべき姿ですし,僕の目指す弁護士像です。

ちょっと長くなりましたが,NHKの話に戻ります。NHKと契約しなければならなくなってしまう,「受信設備」とは何か,「設置」とは何か,この2つについて話します。

まず,テレビが「受信設備」にあたるのは問題ないでしょう。そして,テレビを電気屋さんで購入して,自宅に置くことは,当然「設置」にあたります。

だから,テレビを購入して自宅に置くだけで「受信設備」を「設置」したことになるので,そのテレビでNHKを見るかみないかにかかわらず,もっと言えば,そのテレビで民放すら見ないとしても,NHKと契約して受信料を支払わなきゃいけないわけです。

NHKの放送を「受信することのできる」受信設備ですから,そのテレビで実際にNHKの放送を見ているかどうかは関係ないんです。そのテレビがNHKを受信できる機能を備えていれば,NHKの放送を「受診することはできる」わけですからね(笑)。

放送法を素直に読む限り,こう考えるしかなくって,裁判所も同じように考えています。

じゃあ,テレビ以外の「ワンセグ付き携帯電話・スマートフォン」も「受信設備」に当たるのか?,そして,ワンセグ付き携帯電話・スマートフォンを購入して使っていることが「設置」に当たるのか?という疑問が出てきます。

まあ,ワンセグ付き携帯電話・スマートフォンも,NHKが発信する電波をひろって受信することでNHKの放送を見ることができるわけですから,やっぱり,「受信設備」に該当するでしょう。最高裁でも認められています。

じゃあ,ワンセグ付き携帯電話・スマートフォンを購入して使っていることが「設置」といえるのか?

この点は,かなり激しく争われ,実は,一審のさいたま地裁では「設置」には当たらないと判断されたんですが,控訴審の東京高裁では「設置」に当たる示され,結論がひっくり返りました。そして,最高裁でも東京高裁の判断がそのまま認められました。

東京高裁では,「設置」は,受信設備を携帯することが含まれると判断されたんですね。逆に,さいたま地裁では,受信料は,NHKを見る・見ないにかかわらず負担を強制され,税金に類似しているから,「設置」は厳格に解釈されなければならないと考え,「設置」に「携帯する」の意味は含まれないと判断していました。

さいたま地裁の示した解釈は,その理由を,「課税要件明確主義」,つまり,「課税する場合は,その要件が明確でないと,何に課税するか・しないかを政府が自由に決めることができてしまい,政府の横暴を許すことになってしまう」ということに求めていたんですが,まあ,「明確」なんて基準はあいまいです。何をもって「明確」と考えるかが難しいですよね。だから,正直なところ説得力に乏しいとは思います。

「設置」に「携帯する」という意味が含まれるのは,東京高裁が言うとおりなんだと思います。法律制定当時から受信設備を「携帯する」のは想定されていたらしいですし,受信設備を持ち歩くようになったら,それは「設置」じゃないよね,というのも屁理屈ですよね。

だから,ワンセグ付き携帯電話・スマートフォンを購入して使っているのも,「受信設備」の「設置」に該当し,NHKと契約しなければならないのは,まあ致し方ない結論だと思います。同じ理由で,ワンセグ付きカーナビも「受信設備」の「設置」に当たると判断されています。

この延長線上で,「ワンセグ」じゃなく,「インターネット」でNHKを視聴する場合をどう考えるか,ということが問題になります。

ワンセグ付き携帯電話・スマートフォンを購入して使っているのが,「受信設備」の「設置」に該当するのであれば,NHKがインターネット配信を始めてしまうと,あらゆるスマートフォンでNHKの放送を見られるようになるわけですから,スマートフォン所有者全員が「受信設備」を「設置」したことになりそうです。

でも,たぶんそうはならないと思います。

まあ,そもそもNHKが契約していない視聴者に対しては,インターネット配信が見られないようにすればそれでいいんですが,もし仮にそうではなく,契約しているかどうかにかかわらず,NHKのインターネット配信サイトにアクセスしたらNHKの放送が見られる,という仕組みにした場合,じゃあ,あらゆるスマートフォンやパソコンが,すべて「受信設備」に該当し,パソコンやスマートフォンを購入した途端に「受信設備」を「設置」したことになるのでしょうか。

直感的に「やりすぎ」ですよね(笑)。

パソコンやスマートフォンを購入した途端にNHKの受信料が負担として乗っかってくるのは,直感的におかしいとわかります。

じゃあ,それをどう理由付けるか。

そもそも,NHKの受信料は,NHKを見るかどうかにかかわらず支払いを強制されるので,「NHK視聴の対価」ではなく,テレビなどの受信設備を設置することに伴う「負担金」と考えたほうが,実態にあっています。

どうしてこのような「負担金」が必要なのかというと,NHKは,その財源を広告収入に頼らず,受信設備の設置者ひとりひとりから負担金を徴収することにして,その「公共性」を確保しようとしたからです。

財源を広告収入に頼ってしまうと,そのスポンサーの意向が反映されてしまい,公共性を担保できません。だから,受信設備の設置者ひとりひとりから徴収することにしたわけです。

受信設備の設置者から負担金を徴収すれば,財源を国(税金)にも頼らずに済むので,国に対しても,強気に発言できます。この仕組は,ジャーナリズムを発揮し,国民の知る権利・表現の自由に資すると思います。

そういう「負担金」としての受信料の性格はわかるんですが,じゃあ,受信料の徴収先をどこまで広めるか?という問題が出てくるわけです。

NHKが誰でもアクセスできるサイトでインターネット配信を始めたら,スマートフォンやパソコンの所有者は,全員「受信設備」の「設置者」として,負担金の徴収先に含まれると考えるべきなのか。

この問題はかなり難しいと思います。僕も今のところ,直感以外の理由付けが思い浮かびません。

最後にちょっと豆知識ですが,改造してNHKの放送が受信できなくなったテレビを設置した場合は,NHKと契約する必要はないと判断した東京地裁の判例があります(2020年6月26日)。

ここまで頑張れば,NHKの受信料を支払わずに済むようです(笑)。しかし,この判例はいくらでも覆る余地があると思います。「放送法による契約締結義務を潜脱する目的で改造しているから,NHKと契約しないのは信義誠実の原則に反する」「よって,NHKが受信できないとしても,NHKと契約する必要がある」なんて書かれた判決が出てくるのは,充分に予想できます。

今後の展開を見守りたいです。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

まだまだ僕のうつ病は治っていないので,毎日うつ病の経過を記録しています。

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):479日(1年3か月と21日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):400日(1年1か月と4日)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):359日(11か月と24日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):333日(10か月と28日)

・出勤練習(2020年3月30日~):215日(7か月と1日)

今日で,出勤練習を始めて7か月と1日です。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,約6か月間勤練習を積み重ねてきました。

今日は出勤しました。昨日は寝つきが悪く,疲れがたまっていたので,今日は午前9時には出勤しましたが,午後1時には退勤しました。

そんな今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),昨晩は午後11時15分に布団に入り,午前7時36分に目が覚めたことになっていますが,昨晩は寝つきが悪く,耳栓を装着して首にマッサージ機をあてるハメになりました。午前4時頃にも一度中途覚醒がありました。SleepCycle独自の睡眠品質は80%/100%と悪くはありませんが,あまり良い睡眠はとれていません。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

昨晩の調子が悪かったのは,そもそも,昨日までの4連勤で疲れがたまっていたことと(↓で書いたとおり,僕のうつ病の直接の原因は疲労の蓄積です),昨日は,「いよいよ復職するか?」という話を振られ,そのことについていろいろと考えていたら疲れてしまったことが原因でした。

まあ,そろそろ復職について話そうとは思っていたんですが,先に事務所から言われてしまい,それに対する返答をいろいろと昨晩は考えていたら,言いたいことがめちゃくちゃたくさん頭に思い浮かんでしまい,収集がつかなくなり,疲れ果ててしまいました。

仕事について考えると,まだまだ大きなストレスがかかるようです。このストレスによって疲労が蓄積してしまい,疲労の蓄積が一定量を超えたせいで,昨晩の睡眠が妨げられてしまったようです。

しかし,寝つきが悪かったにもかかわらず,なんとか昨晩から今朝にかけて少しは眠ることができ,しかも,昨晩考えていた返答を今朝伝えることができたので,それは自分を褒めてあげたいです。

すぐに現状を変えるのではなく,少しずつ復職に慣れていきたいことを伝えることができました。

うつ病前までは,自分のことを顧みず,なんでも「はいはい」言っていましたが,今は,一晩じっくり考えて,自分の意見を主張することができるようになりました。

これでいいんです。その場ですぐに返答せずに一晩じっくり考えていい。特に僕は,そのほうが得意です。その場では相手の雰囲気に流されやすいですが,一晩じっくり考えれば,きちんと言いたいことが言えるんです。

僕の頭脳はかなり明晰なほうですし,一晩じっくり考えると,結構いい感じの結論を出せます。

それと,もし仮にその場の雰囲気に流されたとしても,一晩じっくり考えて,翌日「やっぱり違う!」と前言撤回してもいいんです。自分が腑に落ちないことを訂正しないままズルズルいってしまうと,既成事実化してしまい,どんどん訂正が難しくなってしまいます。

でも,翌日ならギリギリ訂正できます。だから,「やっぱりやめた!」は言っていい。一晩じっくり考えて「やっぱりやめた!」と言い続けていれば,「ああ,こいつはその場でいいよと言っても翌日意見を変えてくるんだな」と思われますから,だんだんと,その場での決断は求められなくなります。

そうすれば,「一晩じっくり考える」という,僕の得意なフィールドに持っていくことができ,僕にとって非常にプラスに働きます。

・その場で流されず,一晩じっくり考えて結論を出す

・仮にその場で流されたとしても,一晩じっくり考えて翌日「やっぱりやめた!」と言う

僕が幸せな人生を送るためうえで,この2つはめちゃくちゃ大事です。

これからも,この2つを大事にして生きていきます。

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!・・・↓

昨日のブログ↓

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※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。



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