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一時保護所の学習支援を始めて2ヶ月で思うこと

 9月8日より他団体が設立した民間の一時保護所で、学習支援を開始し、2ヶ月ちょっとが経つ。その学習支援を通して思うことを書いてみる。

そもそもの経緯

 児童養護施設柏葉荘を運営している社会福祉法人扶桑苑からの依頼により開始した。もともと児童養護施設柏葉荘には学習支援で訪問していたこと、地域の子どもたちを対象とした学習支援を協働で行っていることから、「学習と言えばカコタムでしょ」ということで、有難いことに依頼をいただいた。その依頼があったのは、7月頃。開始前の2ヶ月前だ。話があったときのわくわく感は今でも覚えている。

急ピッチで進めた準備

 それからメンバー確保、当日の動き、当日使用するシートの検討・作成、必要なものの購入、メンバー研修の検討・実施など、急ピッチで進めていった。今までの活動と異なり、平日毎日実施するということで、バイトメンバー2~3名、ボランティアメンバー10名が必要となった。既存のメンバーから参加しているメンバーもいるが、半分は新規で集まったメンバーとなっている。既存のメンバーであれば、ある程度活動の場の雰囲気をつかんでいるので、スムーズに入ることができるが、そうではないメンバーが多かったため、事前研修は必ず行うようにした。また、バイトメンバーもなかなか集まらなかったことから、初めてindeedを使ってみた。思った以上に連絡が来て驚いた。面接を行っていき、無事に一人確保することができた。

活動の場の雰囲気

 一時保護所の運営法人の方針に則り、一時保護所自体は、しばりがなく、とてものびのびと過ごすことができるようになっている。以前、児童相談所の一時保護所でバイトをしたことがあったが、とにかくルールがきつかった。自由に何かをするというものではなかった。また、学習時間には、子どもが各自で学習していき、分からないときは動いているスタッフが声をかけるスタイルであるが、そもそもスタッフが少ないので、おとなしい子は聞けていない状況になっていた。
 でも、今伺っている一時保護所は、そんなルールもなく、優しい雰囲気が流れていた。学習時間は、児童相談所に併設されている一時保護所と同様に9:50~11:20まで学習時間となっているが、学習したい子は、早めに学習を開始し、12:00近くまで学習をしている子もいる。ある程度自由度があるため、子どものニーズに合わせて、学習時間の長短を決定することができている。また、学習前に外で運動してから学習に入ることもある。子ども話し合いながら決めている。

自己決定ができる環境に

 一時保護所に来る子どもは、自分自身で決定することが難しい状況にある。家庭に戻るのか、施設措置されるのか、そして、いつ一時保護所を出ることになるのか、全く見通しが持てないなかで、児童相談所の判断によって決まる。どこの施設に行くのかを自分で選択することもなかなか難しい。それ以前の環境においても、自分が考えたことを行動でき、それを応援してくれる存在はいないことが多い。
 だからこそ私たちの学習の場では、可能な限り自己決定ができる環境を整えている。例えば、毎週1週間分の時間割を子どもが自分自身で考えて、作っている。私たちはそれに基づき、一緒に学習を進めていく。また、当日の学習時間も最大1時間は伸ばすことも選択できる。学習前後に外で運動することもできる。合わせて、子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトも進めて、「やりたい」と思ったことに挑戦できる環境を整えている。最初に入所した子どもは太鼓づくりに挑戦した。

一時保護所の学習支援で必要なこと

 まだ活動して間もないが、現時点で思うことは、①関係構築、②その子にとっての学習に取り組める環境づくり、③スピード感をもった行動と連携の3つが必要だと考えている。

①関係構築
 これは一時保護所に限らず、学習支援を実施するうえで土台となる。ただ、他の活動と異なるのは、期間が明らかに短いということ。最大で2ヶ月となるため、関係構築ができる前に退所する場合がある。こちらが発した言葉が、別の意味として認識され、想定外の反応が返ってくることがあったり、こちらが信頼できる存在であるのか試されたりする。それらの言動を落ち着いて受けとめていく。
 そのような日々を積み重ね、安全基地となり得る関係に近づくにつれて、学習に対する苦手意識や不安感も少しずつ緩和され、学習に取り組める環境も整っていく。関わりの中で出てきた「やりたい」の種を拾い、やりたいことの具体化し、具現化していくことを通して、一人ひとりの関係構築のフックを見つけていく。この日々が一時保護所を退所した後のスタサポや学ボラなどの学習支援につながる土台にもなる。

②その子にとっての学習に取り組める環境づくり
 その子にとって、学習に取り組めやすい環境とは何か、色々と試行錯誤しながら進めている。一人の視点では限られてくるため、複数のボランティアメンバーの視点、一時保護所の職員からの視点を合わせながら、その子について理解を深め、学習に取り組める環境を整える。座る配置、使用する教材、学習するまでの過ごし方、担当するメンバーとの関係性、他の子どもとの関係性など、様々な要因によって、その日、その子にとって学習に取り組める環境は異なる。今日の目の前の子どもに何ができるかを考え、行動している。

③スピード感をもった行動と連携
 上記のように限られた期間、時間のなかでの関わりになり、不確定要素も大きい。そのため、子どもたちから「やりたい」という言葉が出たら、即カタチにできるように進めていく必要がある。他の活動も同様なことが言えるが、その意識の度合いは大きい。
 また、子どもから5教科以外で進路を踏まえて学習したいものが出てきたときに、教材をそろえ、学習に取り組める環境を整えていく。
 さらに、子ども同士の関係性から生じる課題の即対応も求められる。例えば、ある子のパーソナルスペースにずかずかと他の子どもが入り込んでしまい、けんかになったり、大きな声で強い口調で怒鳴ったりすることがある。また、ある子どもの発言によって、ある子どもが急にマイナスな感情でいっぱいになり、気持ちが高まることもある。そのような状況に対して、子どもたちにとってどのような環境にするのが良いのか、我々がどのような声掛けや行動することで、生じにくい状況をつくることができるのかなど、色々なメンバーが関わることで得られる情報、一時保護所職員からの情報をもとに考えていくことになる。子どもの出入りが多いので、その分生じる課題も様々なので、対応も様々になる。

今後目指すところ

 今回の活動で大きいのは、既存の活動である学ボラ(児童養護施設等における学習支援)とスタサポ(各地域拠点における学習支援)をつなぐ活動であること。一時保護された子どもにとって、施設措置あるいは家庭引き取りになったとしても、本人が望めば学習支援を利用することができる。家庭に戻った際にはスタサポを利用し、施設に措置された場合は学ボラを利用することができる。たとえ現在訪問していない施設であっても、希望があれば訪問できるように施設と調整していく。

一時保護所図表 (4)

 今まで児童相談所と連携することが難しく、職員レベルで当団体を紹介してもらうことはあっても、児童相談所全体と連携体制が整っているわけではない。そもそも札幌市の場合、行政といちNPOとの間には、大きな壁がある。その壁をどうにかぶち壊していきたい。
 まずは今回の取り組みで、直接子どもと関係を構築することが可能なため、私たち次第では、子どものニーズに応じて、学習支援を通しての関わりを継続するできる可能性を秘めている。これは、必要な子どもに必要な情報を届けるという命題に対して、大きく一歩踏み込んだかたちでもあると言える。
 今後は、そのつながりを生かして、各活動の連携を図り、子どもたちに継続的に学びの環境を整える実践をしていきたいと考えている。また、ポルの活動内では、学習に取り組める環境づくりに加えて、視野が広がる環境づくりとして、子どもの「やりたい」をカタチにするプロジェクトや体験学習の機会が得られるように体制を整えていきたい。いや、していこう。


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