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令和の歳時記 ヘクソカズラ

ヘクソカズラと命名した人を改めて尊敬する。この花をちぎって手で揉んで、匂いを嗅いでみると「本当に臭い」のだ。排泄物を指すであろう“クソ”の匂いはしないが、鼻腔をズキンとさせるには十分すぎる。

しかもこの命名のおかげでわたし自身にもメリットがあった。子どもたちを集めて自然散策へ行った際、「この花はヘクソカズラ」と言った途端、大爆笑が起きたのだ。

子どもって「ウンコ」とか「鼻くそ」などの汚いモノが大好きな生き物である。だから「ヘクソ」というワードにはごく自然な反応が起きたのだ。

しかも、実際に花を揉んで匂いを嗅くと更に大爆笑するという盛り上がりに繋がった。手に付いた匂いを隣の友だちの服に塗りつけるなどしてのコミュニケーションが一気に進むというおまけ付き。

お陰でその日の散策会は大好評となったのは言うまでもない。

ヘクソカズラは日本全土の日当たりのよい山野や藪、草地、道端、公園などに自生している。街中でも良く見られる。ただ、それほど派手な色合いではないし、他の植物に絡まって生えているので見落としがちである。

先日、山へ行って桑の葉っぱに絡まって生育しているヘクソカズラを見つけて、久しぶりに臭い「一発」を嗅いでみた。わたしの味覚ならぬ、臭覚が衰えてのか、何だか懐かしい“香り”に感じてしまったのだ。

例えば自分の体から出る“匂い”って愛おしく感じる瞬間ってあると思う。人は嫌でも自分の“オナラ”は大丈夫というのが、、、。

以前は花ばかりに目をとられていたが、今回目についたは葉っぱの方だった。よくよく観察してみるととても可愛らしいハート型をしているのだ。

もちろん植物は人間の目を意識してハート型に進化したのではないが、この形に心惹かれる理由は小さい頃から洗脳的に植え付けれたからだと思う。

ハート型の葉っぱを千切って、揉んで匂いを嗅いでみたが、それほど臭くない。それよりこれから咲くであろう蕾を揉んで嗅いでみると、途轍もなく臭かった。

やっぱり、人間もそうだが、若い方がフェロモンを放っているのだろうか?それは不明。なぜ、このような悪臭を放つのかは害虫などから身を守るためと言われている。

でも、このヘクソカズラを食べて悪臭成分を体に取り込んで、外敵から身を守っているツワモノの虫もいるというから驚きだ。

人間に例えると、わざと臭くて汚い格好をして自己防衛する人に近いのだろうか。ちょっとここで疑問に思うのだが、人間は匂いを認識することが出来るが、当のヘクソカズラには臭覚があるのだろうか?

自分の放つ匂いが「臭い」と知っているから、武器として利用していると思う。

何だか植物の世界を研究したくなった。

分布●北海道、本州、四国、九州などほぼ日本全土。アジアにも広く分布している。
生息地●日当たりのよい山野や藪、草地、道端、公園などに自生している
花期●7~10月  
学名●Paederia scandens
和名●ヘクソカズラ(屁糞葛)
英名●Skunk vine

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