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近所付き合い


これは私がまだ学生時分の話です。
我が家の隣は近所でも評判の気難しい、と噂される老婆でした。
ある土曜の朝の事です。
母は仕事へ行き、私は学校へ(当時はまだ土曜日、授業だったのですよ)行こうと支度していました。
チャイムが鳴ったので出ると、果たして、隣の老婆―仮にNさんとしましょう―がいました。
私は恐る恐る「なんでしょうか?」と聞きました。
と、彼女は体の影に隠していたゴミ袋をぐい、と押し出し、「これ!あんたんちが出したゴミでしょ!ちゃんと分別しなさい!!」と絶叫したのです。
はぁ?となりました。
何故ならそれは我が家が出したゴミ袋ではなかったからです。
私は端的に「違います。どこか別の方のだと思いますよ」と述べました。
近くにはアパートもあるし、そのどこかが出したゴミだと思われたからです。
ところが彼女はヒートアップ。
「嘘つけ!私は見てるからわかるんだ!」と叫び、ゴミ袋をぐいぐい押し付けていったのです…。
私は目が点。しかし、登校せねばいけません。
仕方なし、私は学校へ行き、夜、母の帰りを待つ事にしたのです。
果たして、母はブチ切れました。私にまで「なんで受け取った!馬鹿が!!」と暴言吐く始末。
私ゃ、被害者じゃ…(涙)。
そうして、夜も八時を過ぎていたのに、母は隣家に乗り込んだのです。
まぁ、凄まじい戦いでした…。
母が「うちの娘にゴミ、押し付けたね」と言えば、向こうは「あんたんちのゴミだろ」。
母が「これはうちのじゃない!アパートの人かどっかのだろ」と言えば、向こうは「私は見てるからわかるんだ」。
母が「人の家のゴミ、漁ってるのか?」と言えば、向こうは「分別せずに捨てるのが悪い!私はきちんとしてやってるんだ!!」。
…傍でこのやりとりを見ていた私の気持ちがわかりますか?
とにかく疲れた。
結局、母が「これはうちのじゃない!てめぇで面倒見ろ!!」(完全にキレてる)と押し付け返したのですが…。その一件以降、逆恨みを食らい、何かあれば、うちに文句を言いに来る始末…。おかげで私は散々な目に遭いました。
一度など、私が学校から帰ってくるの、仁王立ちで待ち構えていて(!)、「ちょっと!うちの郵便物、隠したの、あんたんちでしょ!」と怒鳴りつけられました。知りません。濡れ衣もいいところです。
結局我が家が引っ越すまでの数年間、戦いの日々でした。
実はいまでも存命していて、相変わらず、近所のアラを探しては文句言ってるそうです。
三つ子の魂百まで。
彼女の人生に何があったのか、知りませんが、きっと長生きするでしょう…。

憎まれっ子世にはばかる。
えっ、酷い事言うなって?
でも…ホントなんですもの。

#創作大賞2023 #エッセイ部門

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