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【ギフトシネマ会員インタビューvol.4】久岡 孝範さま

途上国の子ども達に映画を届けるNPO法人World Theater Project(以下、WTP)は、団体発足以来、多くの方々に支えられ活動を続けてまいりました。どのような方達がどのような想いで支えてくださっているのか。 活動を支えてくださる大きな存在である「ギフトシネマ会員」の皆さまに、お話を伺っていければと思います。
第4回目のゲストは、久岡 孝範(ひさおか・たかのり)さん。ギフトシネマ会員として応援してくださるだけでなく、寄付型自動販売機も導入してくださるなど、多岐にわたりご支援くださる久岡さん。インタビュアーが涙した現在の久岡さんの夢とは?

(聞き手:星野 瑞映、記事:教来石小織、取材日:2023年8月7日)


個人の支援だけでは限界がある
企業としても何かできないか

―本日はインタビューにご協力くださりありがとうございます。まず最初に久岡さんがどんな方なのかお伺いしたいのですが、普段はどんなお仕事をされてるのでしょう?

メインは介護施設の運営をしています。父が立ち上げた社会福祉法人きらめき会を手伝っている形ですね。千葉と埼玉、横浜に小規模多機能居宅事業所や特別養護老人ホームなどがあって、ご利用者の方やご家族が笑顔で任せられる施設作りを目指しています。

利用者の方と談笑する久岡さん

―久岡さんが介護施設に寄付型自動販売機を導入してくださったときの感動忘れません。

初めてWTPのイベントに参加した時に支援をしたいなと思ったのですが、個人でお金を支援するのは限界があります。何か企業としても支援できないかなと考えているときに、寄付型自動販売機のことを知り、これならうちでも支援できそうだなと思いました。
当時はまだ父の会社に入社していなかったのですが、父に置けるかどうか聞いてみたら快諾してくれたので導入したという流れでした。

―イベント会場の片隅で電話をかけて聞いてくださっていましたよね。本当にありがとうございました。お仕事、メインは介護施設とのことでしたが、他にも何かされてるのでしょうか?

介護施設の他には、資産管理、不動産管理の会社と、外国籍の方向けの人材紹介の会社もやっています。

―外国籍の方向けの人材紹介の会社。

日本で働きたい外国籍の方と面談して、働きたいという会社とマッチングさせて紹介しています。希望があればうちの介護施設にも入社してもらっています。

ミャンマーでの面接風景

―多岐に渡るお仕事でお忙しそうですが、趣味の時間なんかは取れるのでしょうか?

趣味…。昔はサッカーなどしていましたが、今はあまりないですね。仕事以外の時間では子ども達と遊ぶことが多いです。

―いいですね。どんなことして遊ぶんですか?

ゲームが多いです。スイッチとかプレステとかスマホゲームとか。三人いるのですが、真ん中の子はもう一緒に遊んでくれなくなりました(笑)。一番下の子は、今麻雀にハマっています。このインタビューの前も一緒に麻雀してましたよ(笑)。
あとは子どもがバスケをやっているので、大会があれば見に行ったりとかもします。

久岡さんと奥様、奥様のご家族も麻雀がお好きだそう

―平和な光景が浮かんできました。ところで、福祉のお仕事に就かれたのは、元々興味があったのでしょうか?

いえ。もともと福祉の仕事に興味があったわけではありませんでした。父が広島の方で経営していた福祉施設が関東に出てくるので、父から手伝って欲しいと言われたんです。最初は断っていたのですが、父の体調が芳しくないという話を聞き、手伝おうかなという気になりました。

映像の仕事は過酷だけど楽しかった

―大学時代にも特に福祉の勉強などはされていないのですか?

全くしていないです。経営に興味があったので経営学を勉強していました。大学卒業後は、映像や映画が好きだったので、映像制作の会社に入社して、DCPの仕事をしていました。ワーナー・ブラザースやソニー、パラマウント・ピクチャーズとお付き合いある外資系の会社で、働いていた友人に社長を紹介してもらって入社しました。

―映画に携わるお仕事をされていたのですね。不勉強で恐縮ですが、DCPというのは何でしょう?

デジタルシネマパッケージの略で、今の映画館で作品を上映する際の標準的な配信形式のことです。映画を制作した時の素材そのままを映画館では流せないので、時間やフォーマットを映画館用に変えてあげる作業や、営業なんかをしていました。あとは映画館で流れる音なんかも作っていましたね。どこの席を中心に音を作るかでも変わってくるから、こだわりのある監督はそのあたりも指定してきてくれました。

―奥深いですね…! やはり好きな映画のお仕事は楽しかったですか?

楽しかったです。すごく楽しかった。大変でしたけど(笑)。日本のアニメもやっていたのですが、海外の作品と比べて、アニメの制作期間がものすごくタイトなんです。素材をもらって2日で仕上げて3日後に上映が当たり前の世界です。日本の作品をやる時は徹夜で作業して、作業が終わったらすぐにチェックして、すぐに劇場に素材を発送するような感じでした。過酷だけど面白くて楽しい日々でしたね。

何も変わっていない。これが現実なんだ

―滅多に聞けないお仕事内容でとても面白いです。WTPを知ってくださったのは、映画関係の会社で働いてらしたからでしょうか?

WTPを知ったのは、2016年にアンコールワットが見たくてカンボジア旅行に行った時です。ゲストハウスに泊まっていたのですが、ゲストハウスにあるバーの店長といろいろ話していたんです。ブラジルの方だったのですが、奥様が日本人なので日本語が上手で。

仲良くなったブラジル人の店長と

『天空の城ラピュタ』のモデルになったというベンメリア遺跡を訪れた時、「ワンダラー、ワンダラー」と子ども達が寄ってきて、小学生の頃の出来事がフラッシュバックしたんです。

小学生の時、家族でバリに行きました。車に乗っていたら、お花を持って、「ワンダラー、ワンダラー」と言う子どもが寄ってきたんです。その時、同乗していたコーディネーターさんが、「汚いから見るな」と言ったんですね。「なぜ汚いのだろう」と思いました。僕と同じ年頃の子どもで、なぜこの子は汚いのだろうと。その時のことをずっと抱えながら生きてきました。

それでカンボジアで同じような光景を目にして、「何も変わっていない。これが現実なんだ」と感じました。小学生の時は何もできませんでしたが、社会人になった今、そうした子ども達のために何かできないかと漠然と感じたという話をゲストハウスで話しました。

そしたら、カンボジアではいろんな凄い人がいるよと教えてくれたんです。孤児院をしている日本人の方とか、クラウドファンディングでお金を集めて学校を建てた僕と同年代の方とか。その中で、WTPの話も出てきました。

映像の会社で働いていたので、映画の力の凄さはわかっていました。水や食糧ではなく映画で支援をしているというのはこれまで聞いたことがなかったので、素晴らしい活動だと思いました。日本に帰ったらイベントに行ってみようと思って参加しました。それが星野さんとも出会ったイベントです。

―あれが初めて参加されたイベントだったんですね。その場で支援者にもなってくださって、寄付型自販機も導入してくださったなんてすごいです。私もあれが初めてWTPに参加したイベントだったので、久岡さんとは同期みたいな気持ちでいます(笑)。

星野さんこそあのイベントでは参加者として参加していたのに、僕が次のイベントに行った時にはスタッフとして活躍していたのでびっくりしました(笑)。

久岡さんが初めて参加されたパソナ様主催のイベント。
二列目一番左が星野、同列左から四番目が久岡さん。

―私も映画という形で支援するという、娯楽を支援にする活動が世の中にそんなに多くないと思っていて。久岡さんと同じなんですけど、映画の支援って生きるために絶対に必要な食べ物とか、飲み物とか、ワクチンとかではないですけど、人生を豊かにしてくれるものなので大事だなと感じていて。気づいたらスタッフになっていました。

本当にその通りですね。映画には夢を与えるとか、希望を与える力があるなと思います。そういう活動は支援したいし、ずっと支援していこうと勝手に決めています。

日本で身につけた技術を母国で活かせる循環を

―ありがとうございます(泣)。最後の質問ですが、久岡さん、今夢ってありますか?

実はちょうど今、夢に向かって動いているところなんです。外国籍の方向けの人材紹介の会社をやっているとお話しましたが、僕たちの会社でも働いてくれている方がいます。

彼ら彼女らの中には、母国に子ども達を置いてきて働いている人も多いです。母国では働く場所がなかったり、日本と比べて給料が高くないので、日本にお金を稼ぎにきてるんですね。そうした現状を変えたいと思いました。

それで昨年から、ベトナムに介護施設を作ろうと動いています。土地も見つけて、現地パートナーも見つけて、今は事業計画や資金計画を作っている最中です。3、4年後にはオープンできるように進めています。

ベトナムの介護施設共同パートナーの皆さまと

それが完成したら、日本で働いていた子達が母国に帰りたいと言った時、母国での仕事を紹介してあげることができます。日本で身につけた介護技術を母国で生かしてもらうようなコンセプトを考えています。日本とまったく同じお給料というのは難しいのですが、ベトナムの平均給料よりは高いお給料で働いてもらえるように。そんな循環を作りたいなと思っています。

―すごいですね! ちなみに私はフィリピンに行ったことがあるのですが、介護が必要になった方は家族で面倒を見ていくという文化が強い気がして、介護の仕事は根づくのかなとふと思ったのですが、ベトナムでは需要があるのでしょうか?

ベトナムもフィリピンと同じような感じでした。ただ昨今ベトナムも経済発展してきていて、ハノイやホーチミンでは平均給与が高くなってきていて、男性も女性も働いている方が多いんです。ひと昔前のように、女性が家にいてという感覚がなくなってきています。日本と同じですね。

共働き夫婦も増えてきていて、仕事で親の面倒を見れない人も増えている中、高齢化も進んできています。なので、今後需要は出てくるのではないかと思っています。
もちろんベトナムにも介護施設はいくつかあります。ビジネスとして成り立たないと厳しいですが、いくつか施設も見学させてもらって、ビジネスになると踏んでいます。

ベトナムで見学した介護施設

―国が発展していくと共に働き方も変わるし、家族の形も変わってくるんですね。ビジネスでも国際協力をしたいと考えている方は多いと思いますが、実際に行動に移されるというのは本当にすごいことだと思います。

それを言うならWTPさんもすごいです。僕たちも行動しなきゃと思わせてくれる。動かなけば進まないので、とにかく行動しなければと思っています。
ベトナムだけじゃなくて、うちが関わっている他の国の子たちの母国にもそうした施設を作ってあげたいと思ってはいるのですが、他の国はまだ需要も少なそうなので……。なので今は日本に来ている子たちのサポートをしていければと思っています。

―久岡さんの想いや行動力に胸打たれました…。本日は素敵なお話をありがとうございました!


TAKANORI HISAOKA
社会福祉法人きらめき会法人本部 事務長
子どもの頃の夢はサッカー選手
好きな映画は『最高の人生の見つけ方』


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