夢と現実

もしこの世界が夢の中で死後の世界が現実だとしたら君はそれを信じるだろうか。
誰もが現実だと思い込んでいるこの世界が、夢の中だったらどんなに気が楽だろうか。匿名はぼんやりと考えていた。
ただの人間ただの心、普通であればなんでもいい。世間からははみ出さず当たり障りのない日々を送るだけ。ただそれだけなのに。
世間は目まぐるしいほど早く動き続けていて、その中で生きる人々は、皆朽ちていて、それでも明日は来るし、暗い日々は続いていく。だから自分の傷をえぐっては安心感を覚えていく。
みんながどう生きて、苦しんで、終わりを迎えていくのかなんて興味ないし、今を生きるのに精一杯で余裕なんてない。生まれてから死んでいくたったそれだけの過程で僕の心は揺らぎ、悶え、壊れていく。その自分の弱さを恨んではどうしようもなくただ途方に暮れる。見えない傷の治し方は誰も教えてはくれないし、誰も知らない。その傷を見て見ぬふりして誤魔化して、繕って、そこになかったかのように偽る。だからふとした時に湧き上がり涙としてこぼれ落ちる。それを止めようと、我慢しようとすればするほど止まない涙を決して見えないように隠す。その一連の誤魔化が自分を否定していく。だから消えたくもなるし、この世界から逃げ出したくなる。
よく人は死ぬ間際走馬灯が見えるという。きっと何にもなれない者にはその走馬灯はただ傷をえぐるだけだ。
ただそれだけ。
たったそれだけのことで心は枯れていく。

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