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【ETH】バリデータという概念の導入

ビットコインの誕生後、イーサリアムもPoW(Proof of Work)を採用しましたが、イーサリアムはその後、ビットコインのプロトコルを一般化し、単なる送金システムからプログラム(スマートコントラクト)を中心に据えるように進化しました。

2022年にPoS(Proof of Stake)に移行したイーサリアムでは、新たに「バリデータ」という概念が導入されました。バリデータは、ブロックの提案やその正当性の判断を行う重要な役割を担います。

これを一般的に イーサリアム2.0 と呼ばれます。(現状では、2.0とは呼ばれず、一般的なイーサリアムとなっています。そのため、本記事では、「PoS移行後のイーサリアム」とします。)

PoS移行後のイーサリアムでは、従来のマイナーに代わって「バリデータ」という新しい概念が導入されました。バリデータは、ブロックの提案の正当性を決定するための投票を担う重要な役割を果たします。


バリデータの誕生

  • ステーキング要件
    バリデータになるためには、EOA(外部所有アカウント: Externally Owned Account )が32ETHをデポジットコントラクトに預ける必要があります。

    すなわち、ステーキングという行為は、32ETHを預けるという行為のことを示します。

  • 複数のバリデータを所有
    1つのEOAが複数のバリデータを持つことも可能です。32ETHで1つのバリデータを所有できることは、その倍である64ETHで2つのバリデータを持つことができることになります。

    すなわち、32ETHの倍数分だけ預ける行為をするほど、バリデータを増やし、ネットワークへの参加が多くなり、報酬を受け取れる確率が高まります。

  • 現状のアクティブバリデータ数
    2024年4月時点で、アクティブなバリデータ数は約1,000,000個に達しているとされています。


ステーキングの仕組み

ステーキングとは?

一般的には、ステーキングとは、ブロックチェーンネットワークの運営やセキュリティを支えるために、特定の仮想通貨を「ロック」してネットワークに預ける行為とされています。これをさらに具体的にどういった行為になるのかというと、重ねてになりますが、ステーキングとは、32ETHをデポジットコントラクトに預ける行為を指します。

どうやって働くのか?

ステーキングでは、仮想通貨を特定のウォレットに預けることで、ブロック生成や取引の検証に参加します。これにより、ネットワークの運営を支えることができます。預けた仮想通貨の量やロック期間に応じて、ブロック生成の権利や検証の機会が与えられます。

預けた32ETHは増減する。

  • 報酬:

    • ブロック生成の報酬: ステーキングによってネットワークのブロック生成や検証に参加することで、報酬として新たに発行されるETHを受け取ることができます。これが預けたETHの増加につながります。

    • 手数料の分配: トランザクション手数料がステーキング報酬として分配されることもあります。これにより、預けたETHが増えることがあります。

  • スラッシング:

    • 不正行為やネットワークのルール違反: ステーキングノードが不正行為やネットワークルールの違反を行った場合、スラッシングと呼ばれる罰則が適用されることがあります。これにより、預けたETHの一部が没収され、結果的に減少することがあります。

    • オンライン状態の維持: ステーキングノードが常にオンラインで、正しく機能している必要があります。これを怠ると、スラッシングの対象となり、預けているETHが減少する可能性があります。

この二つによって、増減があると同時に、ネットワークの調整やメカニズムや仕組みが変化することによって額に差が出てきます。


バリデータの役割

バリデータは基本的には安全性の担保と正当性の維持をします。

  1. ブロック生成・提案
    一定間隔で新しいブロックを生成する役割があります。確率的に選ばれたバリデータが生成したブロックを提案します。

  2. 投票 / 取引の検証
    他のバリデータは、正当性があると考えられるチェーンの先端にあるブロックを宣言します。

  3. 合意形成
    他のバリデータと協力してネットワークのコンセンサス(合意形成)に参加します。これにより、ネットワーク全体でブロックチェーンの正当性が確認されます。バリデータたちは、最も重いチェーンを「正しい」状態遷移の記録として合意します。

  4. スラッシングの回避
    ルールに従って動作しない場合や他のバリデータが不利益となるような行為を行なった場合には罰則が与えられます。


Ethereum2.0におけるバリデータの導入がいかに画期的か


エネルギー効率の大幅な改善

従来のEthereum 1.0では、PoWを採用しており、ブロック生成に莫大な計算能力が必要となります。これにより、膨大なエネルギー消費が問題となり、環境負荷が高まっていました。

Ethereum 2.0でのバリデータ導入により、PoSへと移行することでエネルギー消費が大幅に削減されました。PoSでは、マイニングの代わりに、バリデータがステーキングした仮想通貨に基づいてブロック生成の権利が与えられるため、PoWのように大量のエネルギーを使う必要がなくなりました。これにより、Ethereumネットワークは環境に優しい持続可能な運営が可能となり、これが大きな転換点となりました。

消費電力量も2022年9月にPoWからPoSにコンセンサスアルゴリズムを変更したイーサリアムでは、99.95%削減可能としたとされています。

ネットワークのセキュリティと分散性の向上

バリデータの導入により、ネットワークのセキュリティが強化されました。PoWでは、51%攻撃のリスクがあり、十分な計算能力を持つ者がネットワークを支配する可能性がありました。しかし、PoSではバリデータがネットワークに参加するために仮想通貨をステーキングする必要があるため、攻撃を行うためには32ETH以上を保有しなければならず、攻撃者にとって経済的なハードルが非常に高くなります。

また、バリデータの数が増えるほどネットワークの分散性が高まり、特定のプレイヤーによる支配が困難になります。Ethereum 2.0はこの分散性をさらに促進するために、数十万人のバリデータが参加できるように設計され、攻撃に対して非常に強固なセキュリティを維持することが可能です。

スケーラビリティの向上

Ethereum 1.0の最大の問題点の一つは、スケーラビリティの限界でした。ネットワークのトランザクション処理速度が遅く、使用者が増えると手数料が高騰し、ユーザー体験が悪化することが頻繁にありました。

バリデータの導入を通じて、Ethereum 2.0はシャーディング技術を採用しています。シャーディングにより、ネットワークは複数のチェーン(シャード)に分割され、バリデータはこれらのシャードを検証します。これにより、並行して複数のトランザクションが処理されるため、トランザクションスループットが大幅に向上し、スケーラビリティ問題が解決されました。

シャーディングについての説明は以下の記事がおすすめです!

経済的インセンティブによる健全なネットワーク運営

バリデータは、ステーキングした仮想通貨に基づいてブロック生成の権利を与えられ、ネットワークの運営に貢献します。この仕組みによって、バリデータは正しい行動を取るインセンティブが働きます。先ほど説明したように、不正的な行為がある場合にはスラッシングが起きます。

参加のハードルを下げる分散化の促進

Ethereum 2.0では、32ETH(1ETHが30万円程度とすると約1000万円程度)をステーキングすることで誰でもバリデータとして参加できる仕組みが整っています。さらに、ステーキングプールを利用すれば、少ないETHでもバリデータの役割を分担でき、ネットワーク全体がより分散される形で運営されるようになりました。

→ 個人的にステーキングもできるような額であり、攻撃をするには大きめの額として設定されています。


参考文献

  • 東京大学ブロックチェーン公開講座:講義資料『イーサリアム2.0』より


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