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子どもの絵(意味がわかると怖い話)

 私は小学校で教師をやっている。40人も児童の面倒を見るのは本当に大変だ。特に毎年必ず一人や二人はトラブルメーカーがやってくる。こういった家庭の対応をするのは本当に面倒なのだ。

 当時の私は低学年のクラスを受け持っていた。その日は絵の具で「家族の絵」を描いて見ようという授業だった。描き終えた絵は教室の壁に貼り、授業参観の時に保護者が見られるようにするのだ。子どもたちは家族みんなで海に遊びに行っている絵や、原っぱでかけっこをしている絵を書いている。楽しそうである。

 クラスメートにAちゃんという子がいた。Aちゃんはとても優しいが、いつも暗い顔をしている女の子である。Aちゃんの描いた絵は食卓をお父さんとお母さんとAちゃんの3人で囲み、その後ろにもう一人の誰かが立っているという構図だった。そのもう一人の周囲は黒く塗られていて、なんとも言えない不気味な表情をしていた。確か面談で聞いたところによると、Aちゃんは3人家族だったはずだ。私はAちゃんの絵が気になっていたが、特にAちゃんに聞くことはなく、そのまま参観日を迎えた。

 参観日の日、Aちゃんのお母さんがAちゃんの描いた絵を見ると、すぐに引きつった顔をした。Aちゃんに不安げな顔でお母さんは話しかけていた。「駄目って言ったじゃない」まるで4人目の「何か」の存在を心の底から嫌悪するような表情だった。もしかして、ネットでよく見る心霊系の話だろうか。家に「人ならざるモノ」が居着いており、家族がそれを無視して生活しているというやつだ。

 それから10年以上の時が経過した。テレビでニュースを見ていると、近所で殺人事件があったというものだった。何しろ、引きこもりの30代の息子を父親と母親が殺したというものだった。動機は「家の恥だから」というものらしい。名前をよく見てみると、Aちゃんのご両親と同じ名前だった。










答え
 
「4人目の何か」は心霊の類ではなく、Aちゃんの引きこもりの兄である。両親は兄の存在を疎み、「いないもの」として扱っていた。優しいAちゃんだけは兄のことを忘れずに絵に描いていたのだ。

 

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