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ミッションから技術広報の成果と評価を定義し、技術広報の次の課題を考える

これはなに?

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Twitter上で上記の発言を発見し、「確かに。技術広報の成果と評価について尋ねられることがあるが、うまく言語化できず返答に窮することが多いのでちゃんと整理しておこう」と考えました。
頭の中を整理することによって、今後マネーフォワードに関係する人が会社の意思決定のプロセスを誤解なく理解できるのではないかと思い、筆を取りました。
あくまでこの意思決定や合意形成は一時的なスナップショットなので、数ヶ月後、あるいは極端な話明日には変わっているかもしれません。

用語説明
エンジニアブログ
マネーフォワードエンジニアブログのことを指す。

テックブログ
テック企業が運営している開発者向けブログ全般を指す。

デベロッパー
エンジニア、デザイナーなどの開発領域に関係する職種を指す。

アウトプット
成果物や発信されたものを指す。

アウトカム
アウトプットによって発生した成果や結果を指す。

ベネフィット
利益のこと。ここでは技術広報になることで得られるメリットを指す。

マネーフォワードにおける技術広報のミッション

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技術広報は情報発信の責務は担っているがミッションとしてはイメージとしてはデベロッパーサクセスのほうが言葉が持つイメージとしては近いです。マネーフォワードではテックエンハンスメントグループとされるチームがそれに当たります。
デベロッパーサクセスを考える前に、より知られているカスタマーサクセスについて調べました。

カスタマーサクセス (英: Customer success)は、顧客が製品・サービスを使うことで成功し、望ましい結果を達成することを支援するビジネス方法である
Wikipediaより引用
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9

これを技術広報の文脈におきかえると、「開発者がサービス開発で培った経験や知識、そして挑戦を成功させ、それによって開発者自身が思い描くキャリアパスを達成することを支援する方法である。」になります。

キャリアプランを達成するうえではアウトカムも大事だが、そのアウトカムを情報発信することが非常に大切だと考えており、この情報発信方面での強化を担うのが技術広報ではないかと考えました。

次に技術広報のミッションは何になるのか?を考えます。
これは「マネーフォワードに関わる開発者の成長を通じて、開発者個人が目指す理想のキャリアプランの達成を支援すること」になると考えました。

このミッションの対象者は主にマネーフォワードの開発者ですが、副次的に社外の開発者も含まれると考えています。
マネーフォワードの技術がコミュニティや業界にとってポジティブな影響を与えたのならそれは成功を支援したと考える、ということです。

正直まだ技術広報がどのような成果を生み、どう評価するかを明確に確立できたとはいえないと考えています。
理由はいくつかありますが、次のような課題があります。

技術広報の取り組みが直接的に情報発信量を増やしたか定量的に判断するのが難しいこと
ミッションに沿ったKPIを自信を持って出来たといえないこと
技術広報の次のキャリアパスを確立できていないこと

これらの課題に対して、どう考え、取り組んだか?を説明します。

根付いているテック文化は継承しつつ、より成長するための指標を作る

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まず、技術情報の発信量に関してですが、マネーフォワードの場合は非常に成果として計測しにくい環境でした。
マネーフォワードのエンジニアブログは、過去からいままでエンジニアの自発的な投稿によって運営、発信がおこなわれてきました。
この自発的な情報発信が生まれる文化は非常に稀有なことだと考えており、担当制や委員会、編集部のような自発性を損なう形を取ってしまうと、マネーフォワードにとって守り継承していくべき文化が壊れてしまうのではないか、と危惧しました。

これは単純に情報発信の量が増えること以上にデメリットがあり、一度失われた自発性の高いテック文化を取り戻すことは容易ではないと考えました。
また自発的なブログの投稿ながら2021年は月平均の投稿数が4.6本という数値が出ています、これはだいたい週1記事のペースでブログが出ているということになります。具体名は避けますが、他社の情報発信量が多いとされるテックブログと比較しても見劣りしない発信量でした。
この結果もあり、無理にテコ入れをするよりも文化を醸成していくほうが大事だと判断しました。
よりよいテック文化へ昇華させていくほうが、マネーフォワードが目指す未来に近いと考えたからです。

ですが、数値を取得すること自体は重要です。
KPIのような評価指標ではなくとも効果測定としての数値を追うことは、過去の施策や未来の分析のためにも必要です。
技術広報としてこの数年先を見越してどのような技術に投資をしたいと考えているか、またその優先順位をどう考えているのかをCTOやVPoEと相談して推していきたい技術の棚卸しをおこないました。
この棚卸しされた技術領域の優先度を元にどういったことをどれくらいの頻度でおこなうかを設定しました。

これによって選外となってしまった技術領域もありましたが、この取り組みによって技術広報の限られたリソースを積極的につぎ込む対象が明確になりました。

誤解を招きやすい部分なので補足しますが、選外となった技術領域を切り捨てたわけではありません。引き続き重要な技術領域だと考えています。
例えるならば、プロダクトオーナーがバックログに対して優先順位ごとにタスクを並べる、そのための指標を作るのと等価なおこないだと考えています。
限られたリソースでなにを優先しておこなうか?この指標は絶対的なものではなく、状況の変化によって変わり得るもだと認識しています。

テックブログを書く意味の原点回帰をした

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テックブログの場合、必ずしもPVの数値が技術的な質の高さを意味しません。
PVのような数値で技術的な質の高さが測れないにも関わらず、なぜテックブログを書いているのでしょうか?
またテックブログを書くコストは決して低くありません。それにも関わらずなぜテックブログを運営しているのか?という原点に立ち返って考えてみました。

テックブログを運営する代表的な目的は以下のいずれかに合致すると考えました。

・採用
・認知獲得
・技術ブランディングの向上

企業の考え方やその成長フェイズによって、多少違う点があるかもしれませんが、これらの目的を達成するためにテックブログを運営していると考えます。

テックブログを運営する目的を再確認すると、やはり単純にPV数を稼ぐだけでは目指すべき目的を達成することが困難だとわかりました。
PVはあくまで目安であり、効果測定的なKPIとして捉える程度に考えることが妥当だと判断し、選択肢から外す決断をしました。
チームメンバーからも次のようなレビューをもらったことで自信を持ってKPIから外せました。

・PVなどの数値を追う取り組みは容易にハックが可能であり、評価指標とするには適切でないこと
・ミッションとのズレが生まれやすくチームが目指したい方向性とマッチしないこと


では、マネーフォワードではなにを技術広報のKPIとして考えたのか?
前述したように投資する技術領域の優先度付けをおこないましたので、それを元にKPIを作成しました。
そのために以下のような自問自答をおこないました。

・マネーフォワードが中長期的に技術投資をしたい領域への発信ができているか?
・そのために十分な露出ができているか?
・十分な露出ができていないなら、どうすれば十分な露出になるのか?

こういった話をすると、次のようなことをよく質問されます。

テックブログの投稿やテックイベントの登壇で採用にどれくらい効果があるか?
各技術領域に代表されるようなテックカンファレンスにスポンサードすることの費用対効果をどう見積もっているか?
テックカンファレンスの登壇によってどの程度エンジニア採用にインパクトすると考えるか?

これらの質問は採用やチームをマネジメントする立場からすると、とても知りたい欲求です。
ですが、これらの情報は不確実性が高く、また複合的な要因が絡みやすい特性があります。
なによりも単一の影響力の測定が非常に困難なものばかりです。

以上の理由から、マネーフォワードではこのような目的でのKPIは追わないという判断をしました。
ただ露出の数に比例して目的とする項目への影響力が増大するのではないか?という仮説を立てました。
そこで露出する方法ごとに数値目標を立て、これをKPIとして定めました。

・各領域の年間登壇数をn件以上
・年間のブログ投稿数をn本以上
・テックカンファレンスのスポンサードをn件以上

実際には、もう少し細かい条件やその他のKPIもありますが、代表例としてはこれらの項目となります。
どれくらい効果があったか?を測ることは難しいので、影響を与えるであろう物事に対する露出の数を数値目標を設定するという方針としています。
それぞれ1つ1つの影響力を測ることはできませんが、露出の回数に対して成果がでているかどうかを測ることができるのではないかと考えています。

これによって、例えば露出の数は順調に増えているが成果に結びついていない場合は、KPIとするものが間違っているかもしれません。
あるいは採用市場全体が底冷えしてしまい、採用の分母そのものが枯渇しているかもしれません。
他にも、テックブログへの投稿は行われているが投資したい技術領域への投稿がおこなえていないかもしれません。
これらの数値の取りかたが正しいかはわかりませんが、少なくとも仮説検証をおこない改善する際に必要な数値だと考えています。

技術広報が考えるマネーフォワードの次の課題、あるいは将来の話

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最後に将来的な課題についてです。

これはまだ出来ていないことですが、技術広報という役割が生まれたことで今後必要になるだろうと予測していることです。
マネーフォワードが今後より成長するためには、技術広報という仕組み、あるいは組織そのものがスケールしていくことが重要だと考えています。
これは技術広報がボトルネックになってしまうと、エンジニアの成長や開発者の成功体験を阻害する結果につながると考えるからです。それでは本末転倒です。

そのためには技術広報のミッションに共感してくれるメンバーを増やす必要があります。
メンバーの数を増やすことだけが組織をスケールする方法ではありませんが、いま技術広報は1人しかおらずSPOF(単一障害点)となってしまっています。これは解決すべき課題だと認識しています。
そして、メンバーを求めるにあたって、技術広報になることのベネフィットの提示が必要です。

ところが、いま現在の技術広報にはキャリアプランの先がありません、言ってしまえばキャリアのどん詰まりです。
エンジニアであればテックリードやエンジニアマネージャー、VPoE、CTOなどの選択肢があると思います。
ですが、技術広報で大きな成果を成し遂げても進むべきキャリアのその先がありません。

仮に部長や室長というポジションを用意し、キャリアプランの先に据えたとしても「一体あの部長はなにをするひとなんですか?」と問われたときに返答に窮している自分の姿が脳裏に浮かびました。

そのため、技術広報という役割の次のキャリアステップを考え、用意する必要があると考えています。
喫緊の課題ではないものの大変重要な課題です。
今後思いを同じくするメンバーが現れたときに、そのメンバーの人生やキャリアがより充実し、輝いたものであってほしいとマネーフォワードでは考えています。
そのためにも、この課題について真剣に考えていきたいと思います。

まとめ

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いつも通り、長くなってしまいました。
これがマネーフォワードの技術広報がどのように考え、なにを成果と捉えて評価をどう設計しているか?の正直なところです。
かなり赤裸々に書いてはいますが、これはあくまでも現時点でのスナップショットに過ぎません。数ヶ月後、数週間後、数日後にはまた大小含め、いろいろと変化していると思います。
(この記事を書いている最中にもCTOより「エンジニア組織の英語化」というビッグトピックが公開されました。)

技術広報は組織変化と密に関係しているため、多くの外的要因による変化が激しい職責です。
また、マネーフォワードの技術広報は2021年3月に生まれたばかりです。
(詳細はエンジニアリング + 技術広報 = ユニークキャリアを御覧ください)


たった半年あまりの間に多くの変化がありました、ぼく自身も技術広報を副務で兼務する形から主務へと変化しました。
まだ半年、あっという間の半年という相反する気持ちを抱えていますが、マネーフォワードをMotto Forwardしていきたいと考えています。

おそらく技術広報といわれるものは各社ごとに役割やミッションが異なっていると思います。
いまはまだ変化の激しい状態なので、この記事を読まれているときには時代遅れな発想になっているかもしれません。
それを念頭においたうえで、この記事が技術広報を考えるかたの参考になれば幸いです。

最後に宣伝です。
マネーフォワードに国内開発拠点としては5つ目の名古屋拠点が誕生します。
株式会社スタメンさんとマネーフォワードでイベントを企画しています。

マネーフォワードに興味がある、名古屋や地方拠点に興味がある…などなど理由はなんでもOKなので少しでも琴線に触れるものがあれば是非ご参加ください!
これを気にマネーフォワードの取り組みに興味を持っていただければと思います。

マネーフォワードではチャレンジをMotto Forwardしたいかたを全方位、絶賛募集中です。
ご興味が1%でもあるかたは是非カジュアル面談などでお話をさせてください!