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クリスマスに読みたい本【43】

 今日は、クリスティ3冊目。
「クリスマス・プディングの冒険」です。

 とある国の王子が、伝統ある大切な宝石を遊び相手の女性に奪われてしまった。
このままでは大きなスキャンダルになると王子は名探偵エルキュール・ポアロに依頼する。
 ポアロは「昔ながらのイギリスのクリスマス」を楽しむためという表向きで、田舎の邸宅に滞在する。
 そこで、ポアロは女主人からもうひとつの依頼を受ける。
それは、女主人の孫娘が、よからぬ男と結婚しようとしているのを止めることで……。

 ひとつめの依頼である「王子が”特別な女友達”に伝統ある宝石を渡してしまい、それを取り返す」という依頼は、シャーロック・ホームズの「ボヘミアの醜聞」でホームズが受けた依頼を思い出させます。
あちらで取り返してほしいとされるのは、スキャンダラスな写真ですが。

 ふたつめの依頼にまつわる解決法は、以前に読んだ「クリスマスの冒険」によく似ています。

 ただ、こちらのお話では、「クリスマスの冒険」には登場しなかったポアロに依頼をする女主人が登場します。
この女主人が、クリスティが生み出したもうひとりの名探偵「ミス・マープル」によく似ていて、人間への深い観察が得意で、それをきっちり使って孫娘に影響を与えようとするところが、すごく好きです。
というとエゴイスティックな印象ですが、夫が圧力かけようとするのを抑え、あくまで孫娘の心が変わってくれるのを望む……若者の恋情に自分たちが無力だと知りながら、できるだけの手段を取ろうとしている公平で愛情ある人です。
 自分がおおざっぱなせいか、ミス・マープルやこの女主人のように、人の心の機微に敏感な女性には憧れます。

 お話は中編なので、読了は30分くらい。
ハッピーエンドの中、ひとりすこし傷ついた孫娘の前途に、ポアロの予言通りの幸福が待っているといいなと思います。

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タイトル: クリスマス・プディングの冒険
    (『クリスマス・プディングの冒険』収録の一作)

著者: アガサ・クリスティー(Christie, Agatha)
訳: 橋本, 福夫
PUB: 東京 : 早川書房 ; 2004.11
PHYS: p[9]-104 (本全体 466p) ; 16cm
VT:OR:The adventure of the Christmas Pudding
ISBN:4151300635
NOTE:原書の著作権年: c1960
PTBL:クリスティ文庫 ; 63

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*タイトル画像は「みんなのフォロギャラリー」からお借りしました。
 ありがとうございます。

*表紙画像の著作権が心配なので、Amazonのリンクを貼っています。


 

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