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【愛されたいって言えなかった】第10回「美人のあの子はいじめてもいいの?」

「愛されたい」をテーマにお送りしている戸田真琴の連載第10回。毎月、さまざまな角度からテーマについて掘り下げていく予定です。何かの要因で表になかなか出ることのなかった「愛されたさ」を発掘したり、誰かの愛されたさについて考えてみたり、私たちの人生を真綿で締めるようにじわじわと縛っているあの「誰かに(自分が望むやり方で / 満足に / 濁りなく)愛されたーい!」というほぼ実現不可能な巨大願望についてみなさんと考えていけたらと思っています。愛されたかったエピソードも募集したりする時もあるかもしれません。愛されたい!と一度でも思ったことのあるあなた、ぜひお付き合いいただけますと幸いです。

※当連載は「I'm a Lover,not a Fighter.」月額有料マガジンに向けた企画です。そのため、マガジンの停止とホームページのリニューアル作業に伴い、今回をもって一旦ではありますが休載のかたちを取らせていただきます。(リニューアルについてのお知らせ記事はこちら。)
これまでご愛読いただいたみなさま、ありがとうございました!先日ご応募いただいた当連載に関するアンケートの結果は、連載再開の際に大切に活用させていただきます。

前回の記事はこちら↓

【愛されたいって言えなかった】第10回「美人のあの子はいじめてもいいの?」


 今日もインスタグラムに流れる自分以外のほとんどすべての投稿に劣等感を刺激されている悲しきSNS漂流者のみなさん、こんにちは。戸田真琴です。より多くの人に憧れられたい……!という気持ちはなく、むしろより大多数の最大公約数的需要を狙うのには抵抗のある価値観でいるにも関わらず、(そう、自ら望んで王道と言われる価値観から逸れたたのしい横道歩きに行っている自覚もあるのに)ふとしたときに、まっすぐに可愛さや華やかさを貫いている女の子たちや、自分のおしゃれさをアピールすることにてらいない男の子たちの明るい自信に落ち込んでしまう日、私にもあります。YUKIも「聞き間違い」という曲の歌詞で、
"「素直で明るいだけで人には価値がある」って 
誰でもいい もう少し早く教えてよ"

と歌っていて、聴く度に「早く教えてよーーー!!!!!」と泣きたい気持ちになりながら、それでも素直にも明るくもまっすぐにはなれなかった自分をそれはそれで有りだと言ってあげたくて、よろよろと夜道をさまよいながら物思いにふけったりするものです。

今回は、くりかえし話題にしてきた「嫉妬心」をひもときつつ、劣等感を感じる自分を慰めるという第一段階を超え、自分より(社会一般的価値観に置いて)恵まれている人のことも慮り、思いやることのできるマジの良い奴になりたくないか?という、ハードルの高い問いかけを皆さんにしてみようと思います。
嫉妬も、劣等感も、愛されたい夜も、他者を蹴落としたい気持ちも、惨めさも、欲も、誰かから言われた最悪な言葉も、それによる自己否定も、いつかはぜんぶ乗りこなして、まじでいいやつになろう。そこまでは望んでないかもしれないあなたを引き連れ、私はあの果てまで生きたいのです。こんなに愛されたいのに、それをも超えて、すべての人生に祝福を鳴らすあなたに最大の愛を!「愛されたいって言えなかった」ひとまずの、一旦の、最終回。始まります。

「こうなれたらよかったのにな」と思うような女の子

わたしの大好きな漫画に、『スキップとローファー』(高松美咲/アフタヌーンKC)という作品があります。田舎で神童と呼ばれたちょっと天然だけど憎めない不思議な魅力の女の子"みつみちゃん"が、入学式の朝に出会ったシュッとしてかっこいい、だけどどこか掴めない雰囲気のある男の子"志摩くん"をはじめ、都会の高校のクラスメイトたちと交流していくハートフル(で、ときどき胸にチクリと刺さる)な青春ストーリーなのですが、その最新巻で、「なんて繊細でリアルなところを描いているんだ」と驚愕したシーンがありました。

みつみちゃんの一年次の仲良しグループのひとりだった"ゆづ"が、ひとりだけ別クラスに離れてしまった二年生のはじまりのことでした。
ゆづは自らも自覚しているとおり、「客観的に見て相当めぐまれてる」女の子。"外見はどこへ行ってもかわいいキレイと褒められて、家は裕福で仲もいい。入れてもらえるのはいわゆるカースト上位組で、基本的に皆やさしくしてくれる"とモノローグでわかるとおり、たくさんのひとたちに羨ましがられる要素を持っています。そのぶん男子からしつこく迫られたり、そのことを気持ち悪いとこぼしたら女友達に嫌われたりと、本人の意志とは関係のないところで、恋愛がらみで人間関係が悪化する経験を重ねていました。今回のクラス替えでも、クラスメイトたちと仲良くなろうとして行った映画の待ち合わせが実はゆづに思いを寄せる男子と周囲のクラスメイトたちとの共謀で、サプライズ的にデートをさせる計画だったことを知り、彼女は大きく傷つきます。

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