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【愛されたいって言えなかった】第2回「モテの奴隷にならないために」

「愛されたい」をテーマにお送りしている戸田真琴の連載第2回。毎月、さまざまな角度からテーマについて掘り下げていく予定です。何かの要因で表になかなか出ることのなかった「愛されたさ」を発掘したり、誰かの愛されたさについて考えてみたり、私たちの人生を真綿で締めるようにじわじわと縛っているあの「誰かに(自分が望むやり方で / 満足に / 濁りなく)愛されたーい!」というほぼ実現不可能な巨大願望についてみなさんと考えていけたらと思っています。愛されたかったエピソードも募集したりする時もあるかもしれません。愛されたい!と一度でも思ったことのあるあなた、ぜひお付き合いいただけますと幸いです。

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第2回「モテの奴隷にならないために」

 「愛されたい」というささやかな願いさえ今日も叶わず、傷ついた心を抱えながら夜を迎える悲しき戦士のみなさん、こんばんは。私は只今、飛行機に乗って遠方までロケに来ています。同業者に友達がほぼいないという状況にも慣れ、移動時に読むための漫画や電子書籍のダウンロード、人見知りしすぎてお腹が痛くなったときのための胃薬・整腸剤セット、夕飯を一緒に食べる友達がいなかった時のためのカップ麺など、ぼっち対策が年々万全になっている昨今です。本日も大半の時間を控え室の隅でInstagramのタイムラインを眺めて過ごしました。なんてことない。みなさん、教室やバイトの休憩室、会社のお昼ご飯の時間などいかがお過ごしでしょうか。ひとりでもひとりじゃなくても、なるべく穏やかな時間が流れていることを祈ります。人の輪に入れなかったあなたの行き場のなさと、私をとりまく心許なさは異次元でつながっているので、あなたがひとりぼっちのとき、それは私がひとりぼっちのときの寂しさと手をつないでいます。そうして愛されにいくことがどうにもうまくやれない私たちで、なんとか生きていきたいな、と遠くから願っています。  
 しかし、私もこんなに強くなるまでにさまざまなことがありました。一緒の日程で撮影だった女の子がかわいい・やさしい・コミュ強・お酒も強いの4拍子でスタッフさんがみんなその子にくぎづけになり、劣等感にまみれて夜中にホテルでひとり泣いたこと。インスタ映えしそうなビーチでオフショットを撮ってほしい、と思いつつも自意識過剰だと思われそうで誰にも写真をお願いできなかったこと。かわいくないしお酒も飲めない自分はせめてご飯をもりもり美味しそうに食べよう!と思い無理して食べすぎて苦しくなったこと……。これまで私がしてきたたくさんの空回りや惨めだった出来事は、その根っこに「愛されたい」という気持ちがあったからかもしれない、と今になっては思います。

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 これを読んでいて少しでも共感する人というのは性別にかかわらずいらっしゃると思いますが、私たちのことをあらためてこう呼びましょう。「愛され下手なひとたち」と。
 愛されたい気持ちを素直にまっすぐ表現できていたら、私たちはどうあれきっとこんなややこしい迷宮には迷い込んでいなかったはずです。”愛されたい”と伝えるどころか、それを願うことさえもどこか気恥ずかしい人や、”私なんかが愛されたいと望んではならない”と自分の欲望に蓋をしている人もいるでしょう。
 きっとここで生半可な雑誌記事ならば、「では、愛されるにはどうすればいいのでしょうか。」と続けて、素直になろうとか愛嬌を持とうとかステレオタイプのモテ知識を書き連ねていたに違いありません。しかし私は知っています。愛され下手なひとたちが、それぞれの愛しい癖を持ってその人生を生き抜いてきたことを。他人から見たら屈折しているように見えるその思考回路は、確かにあなたの人生を迷いながら戸惑いながら時には傷つけられながら進んできた、尊い星座の成す線だということを。私は、自分自身の屈折も面白がりながら、あなたの歪みを、そここそがかわいいと、愛すべき目印なのだと伝えたいです。なので、今回はすべての愛され下手な人たちに向けて、世に蔓延る「愛され女子になるには…」みたいなクソ記事に犯されないためのワクチンのようなメッセージを届けたいと思います。

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