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さまざまな美/戸田真琴

「かわいいはつくれる」という言葉が担っているのはおそらく単なるメイクへのモチベーションを上げるためなのだけれど、それでもあまりに耳慣れたこの言葉には、言い得て妙なところがあると思うのだ。
 アダルト業界にいると、それはもう異常なほどに顔や身体がぴかぴかに磨かれた女の子たちに会うことになる。何年いてもまったく慣れることがない。彼女たちは自らの美しさと、気遣いや工夫や勇敢さやエネルギーによって得たお金で、さらに美に磨きをかけていく。私のように撮影日以外はほとんどルックスを見られる職業だという自覚がないまま朝4時まで起きている人間と比べ、プライベートの大部分の時間を美容に割いている女の子も多い。そこにはそもそもユーザー男性たちが求める女性のルックスのレベルがあまりにも高くなっていることへのプレッシャーももちろんあるのだろうけれど、女の子自身が、どうせ映像に残すならより美しい姿を、と自らすすんで努力しているような空気をも感じる。磨きをかけ続ける一人ひとりに聞いたわけではないので真相はわからないけれど、努力をしないでもそのままの姿を最上級に美しいのだと認められる世界であってほしいな、と願うと同時に、その美しさのインフレーションのようなある種の現象を、単にまぶしいな、と感じて見惚れてしまう気持ちもある。かわいいは確かにつくれる。これは、単なるメイクや美容整形などを意味する「つくる」を超えて、美しくなろうとするある種の念のようなものと、それが一身に注がれた顔や体の持つ、「かわいい/きれいになろうと念じ続けたこと」自体のもつ華やかさをも意味するのかもしれない、と思う。かわいくなろうと思い続けること自体がかわいいをつくり上げる。本気で美容に取り組んでいる女の子たちにとって、美しくなること、はライフワークの一種と言っても良いのかもしれない。

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