『ルビンの壺が割れた』元祖ステルスマーケティング、2度騙される!
小説『ルビンの壺が割れた』は、覆面作家の宿野かほる氏が執筆、新潮社より2017年に刊行された小説だ。宿野かほるは正体不明、性別不明の覆面作家であるが、その正体は現在、日本保守党代表であり、420万部を突破した大ベストセラー小説『海賊と呼ばれた男』の著者である、百田尚樹氏だ。
加えて、小説『ルビンの壺が割れた』はステルスマーケティングの成功例といえるのだ!
注意して欲しいのだが、この小説は刊行されたのが2017年であり、ステマの法規制は2023年からなので、当時は法的には問題はない。
俺は「ステマ」と書いたが、売上げのために宣伝する行為というよりは、世の中に新しいものを出して「あっ!」と言わせたかっのではないか、という手法であり、そうそう何度も繰り返しできることではない。
著者の百田尚樹は「ステマ」に問題提起をしたかったのではないかとも思える。
俺はこの本の存在を初めて知ったのは、書店に並んでいるのを見た時だ。
執筆したのが覆面作家であることポスターと、本の帯には「日本一の大どんでん返し」のハードル高めのフレーズ、そして、レジ前のに大量平積みにされた光景は、否が応でも興味を惹かれた。
もちろん、買う。そこまでされたら、買ってしまう。
レビューするにあたり、ネタバレするけど、まぁ、ネタを知ったところで、どうってことはない内容だ。
では、いきます。
小説【ルビンの壺が割れた】レビュー
『ルビンの壺が割れた』は全体で175ページと短い小説となっている。加えて、フェイスブックを通じての書簡式の文章であり。情景、背景を伝える文章が、日常会話、手紙なので読みやすい。本を読むのに時間がかかる、俺だが、それでも、2時間ほどで読み終えてしまうような文章だ。
著者は「宿野かほる」という覆面作家であるのだが、「かほる」という名は、女性、男性どちらにもとれる様に中性的に名付けたそうだ。俺は物語の序盤の文体から、自然と女性だと思い込んでた。
序盤の結城未帆子と水谷一馬の二人の馴初めシーン、女性から好きな男性に送る眼差しは作家が女性であると思わせた。
少しやりすぎな感のある女の熱視線は、意図して、読者がミスリードするように表現したのではないか。実際は、女性に代筆してもらったのではないかと疑ったほどだ。
物語の中盤から突如、不穏な空気が漂い始めたかと思えば、ゆっくりと登っていたジェットコースターが加速するかように展開する。
「水谷の初体験」「叔父のレイプ」「未帆子のソープ勤め」「宮脇君横領」と登場人物全員がエゴ剝き出しデビルと化す。極めつけは「伊豆の夜にて、未帆子のお花摘みから初キスの流れ」「水谷の貞操観念(that,s 昭和)」
俺はこの段階で作者は、変態の高年男性であると確信した。
そして、ラストは「ふぁ!」と言いたくなる。水谷が犯人であった。
俺は突然の出来事に、初読では納得がいかず、3度は読み返した。そこまでさせるということは、ある意味、「問題作」大成功なのかもしれない。のめり込んでしまう内容だった。
水谷が幼女殺害の犯人である事をわかったうえで読み返してみると、未帆子を殺そうと考えていたこと、優子を殺したことの伏線に気づかされる。
その伏線には、水谷の隠れた狂気が垣間見え、薄気味悪さが心地良い。見逃してる、伏線を知りたいがために2度目を読んだが、伏線回収業務も十分に楽しめた。
さぞかし、練りに練られた緻密なストーリーかと思うだろう。しかし、水谷が犯人であるという一点が、どんでん返しの核であるため、ストーリーは唐突で不自然であり、後日談から驚愕の事実がポンポンと出てくるが整合性は感じられない。コマンドーのベネット並みのトリックだ。
俺は読後のショックを共有したく、ネットでレビューを読み漁ろうとした。そうしたら、意外と早く覆面作家の正体に気づいてしまった。覆面作家は『百田尚樹』。検索エンジンの割と上の方に出てきた、、
それに伴い、本が出版されるまでの内情も知ってしまった。出版社に勤める方の内部事情リークだ。こちらの事情の方が小説より「してやられた感」が強かった。突如、出版社に天才覆面作家が現れて、持ち込みのネタが本になるまでのくだりは全部嘘じゃねぇか!俺は2度騙されてしまった、、
新潮社の行ったことは「全く消費者には広告だと明示されず宣伝する行為」だった。
新潮社のステルスマーケティングは背景を知ってしまうと行き過ぎている。
覆面作家、ステマも含めて、ミステリーのトリックとしては新しいが『やらせ、嘘』ともとれるので、かなり疑問が残る問題作だ。
ステマが規制されて良かったと思える作品。問題作であり、ただステマだと非難するのは尚早だ。こんな手法は誰にでもできることではないし、画期的だった。もう当時の状況を覚えている人は少ないだろうから、わざわざ買って読むほどではない。もし、読んでも2時間程度で読めてしまうので、それなりに楽しめる。タイパ良し!
『ルビンの壺が割れた』を読んだ人でこの事実を知らなかった人は、是非とも知って欲しい裏事情だったので、「ルビンの壺」「百田尚樹」で検索して欲しいと思ったのだが、現在、裏事情に関するページは消えていた。
俺のひとりマンデラエフェクトか、もしくはインターステラーに迷い込んだのか気になるので、この事実を御存知であった人がいたらⅩに「知ってた」と書き込んで欲しい。