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散文『あいしてる』

愛してる。
僕は彼女にそう伝えた。

終わりを知って思う。
本当に愛していたのかと

好きだったことは確かだと思う。

彼女との時間を思い返せば
カバンの中からものを出すように
好きだと思った時間を取り出せる。

それでも愛していたとは言えない。
思えば始まりからそんな気がしていた。

色んな想いが交錯する。

彼女は告白されて
色んな関係性から断れなくて
付き合い始めたんじゃないかなとか?

好きかどうかもわからない。
でも、仕方なく始まった関係とか。

僕は一方的な思いだけ握りしめて
どこか踏み込めない壁に
向かっているような気持ちだった。

付き合い始めてから2ヶ月くらい
なんで付き合ってるのかよくわからない
と思う時期が続いた。

仕事が落ち着きようやくお互いに時間を
作れるようになり、ぽつりぽつりと
会うようになり少しずつ距離は縮まっていった。

でも、いつも壁はそこにあった。
砂の城を作る時のように崩れないように
優しく丁寧に触れるような恋だった。

今までのどの恋とも違う暖かいけれど
どこか悲しさを秘めた関係。

何がいけなかったのかわからない。
でも
どこか歯車の噛み合わないところがあった。

愛はなかった
それでもしあわせな時間が
そこには存在していたことは確かだ

手元に残された
想いという様々な色の毛糸の塊。
複雑に絡み合い
どこから解けばいいのやら。
きっとその先に答えがあるのかな。

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