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通勤徒然日記 第4回 葛藤の日々

 最初にはっきり言っておきたい。
私は自由と平和が大事だと思っている普通の会社員だ。
奥さんひとりと子どもがふたり、やっと大学まで卒業させて今少し親としてホッとしている時だ。ただし、中古ではあるが家のローン返済はまだ残っているため、もう少し働かなければならない。

 しかし、勤めている鉄道会社の中では、少し変人に思われているのではないかと感じることがある。
 地方ローカル線の赤字問題の解決ヒントを得て、それまでどちらかというと内気な性格だった自分が、仕事として、いやひとりの人間としての生きる意味を見出したからだ。
 「大量輸送機関である鉄郎を会員制度を導入して全路線を乗り放題にする」
 と会社の内外で主張を始めた。また、当時から文章を書きたいという潜在的な欲求もあったのだろう、自分なりの提案書として提示もした。
 それは組織として取組む方針とは異なっていて、私も入社2年目の新人であったためか、まともに取り上げてもらえなかった。前作であげた九州人口と会社収入から計算した数値は理論上不可能とは考えていなかったが、そのような具体的な検討をする前段で、「国の認可制となっている鉄道運賃に異をとなえる」ということが許されないような反応であった。
 
 「人口が減少する時代に在来線に未来は無い。新幹線で稼がなければ、“新幹線の安全神話”ならぬ“新幹線は金の成る木である”と捉えられているのかという会社の雰囲気も感じられた。

 その後、結婚し子どもも出来て守らなければならないものができる。自分の意見を周囲に逆らうように主張し続けることについて、不安にもなっていく。当然、会社の営業部門は頑張ってくれるとの期待もして、自分の気持ちを押し殺す日々が続いた。
 しかし、当初に感じたように既存の鉄道運賃制度では在来ローカル線の経営状況はよくならない。各部門では経費節減に力をいれるだけの印象であった。
 列車乗務員のワンマン化、子会社に駅業務の委託、または無人化。各保守区の統廃合などが少しずつ進んだ。
 「やはり収入を上げることが企業活動では重要だと思いながらも、専門外の営業部門にひらめきだけの提案では説得力がないことも分かっていたので、大きな行動を起こすことは出来なかった。

 九州は新幹線が開業したために、鉄道全体の収入は上がる。しかし、新幹線が無い四国、そして特に北海道の会社が、先にローカル線の廃止についての議論が始まることになるのである。
  さらにコロナ禍の伴い鉄道利用者は激減し、日本全国でローカル鉄郎の存廃に関する議論が始まることになった。

 



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