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落雷と踊る植物

もう、今日は本当に驚いた。

起きた時からずっと、酷い雷雨だった。

最近はずうっと暑い日が続いたが、窓を開けると少し涼しかったので、いまのうちにと植物の剪定を始めた。

が、土砂降りの豪雨と落雷が相次いで、まぁ騒がしい朝である。


雷は好きじゃない。

だけど苦手というほどでもないので、そんな天気を横目にわたしはベランダで植物の世話に集中した。

ルビーネックレスを一本水差しにした。

調べると、どうやら夜中からこの荒天は続いているらしい。

落雷により市内のあちこちで火災も発生しているようだった。



小学生の頃、学校に二本の杉の木が植わっていた。

大きくて立派な二本杉は、昔は三本杉だったそうだ。

雷が落ちて二本になった。

わたしたちは二本杉の麓でお弁当を食べたし、理科の実験もした。

タイムカプセルも埋めた。


私たちが中学生になった頃、またその杉に落雷があり、とうとう一本杉になった。

子供たちを守った、神聖な杉だとわたしは思っている。


ーーー。

ようやく剪定も一息ついた頃、部屋の電気がカチカチっと光り、瞬間停電になった。

「またか」とざわつく心を押し込んで、窓際に水差しを並べる。

ルビーネックレスとローズマリー

こんな時でも踊るように水を吸い上げる植物たち。


時刻は午前8時過ぎ。

向かいのマンションからは続々とスーツを着たサラリーマンたちが出勤していく。

月曜の朝からこれとは、本当にお疲れ様だ。



今日は一日中、外は暗かった。

あの大きな杉の木は、何年生きて何万人の子供を見て大きくなったんだろう。

大きくなりすぎたから雷が落ちてしまったんだ。

何を思っていたんだろうな、なんて小さく踊る植物を見ながら思った日。

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