【マンガ業界Newsまとめ】「マンガ図書館Z」サイト停止は決済代行会社通告/KADOKAWA2Q好調サイバー特損縮小/IMART終幕 など|11/17-176
マンガ業界ニュースの週1まとめです。
1週お休みしてまして、今週は2週分なのでいつもの3割増しくらいになっております。恐縮です。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。
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「マンガ図書館Z」サイト停止の背景を創設者の赤松健さんが説明 SNSでは決済代行会社による「焚書」と強い反発
「マンガ図書館Z」が、11月26日にサービス終了します。
2011年に、旧名「Jコミ」として、漫画家の赤松健さんによりスタートし、2度の改名ののち現在の名称になりました。Yahoo系のGYAOの傘下となり、2018年にメディアドゥ傘下、2023年に現在のナンバーナイン傘下となり、現在に至ります。
当初のサービス名が「絶版マンガ図書館」となったこともあるように、主に旧作の絶版作品を無料閲覧ができる形で掲載し、広告宣伝費を作家に支払うビジネスモデルと取っていました。
今回は、一部サービスの決済をするためのクレジットカード決済が、決済代行会社からの通達で使用不可能になり、サイト維持が難しくなったため、「マンガ図書館Z」のWebサービスが終了することに決したようです。同サービスで付帯して行われていた、作品をKindleUnlimitedなどで配信し、作家に還元するサービスは継続するとのこと。
クレジットカードの決済については、他社でも様々に話題になっていますが、今回の決済停止は、Webサイト運営の生命線を絶たれるものだったようっです。
このケースでは、「マンガ図書館Z」の中に、成人向け作品の掲載があったため、これを取りやめることでサービスを継続する道もあったようですが、運営側は表現によって掲出を左右することを良しとせず、他様々な状況からWebの運営停止を決したようです。詳細は以下発表より。
とばっちりのようなものもありました。
マンガ図書館Zを運営するJコミックテラス社の現在の親会社、ナンバーナイン社が、生成AIを使用したアダルトコンテンツを配信していたため、カード会社から決済を止められたという憶測がSNS上に飛び交いました。
根本的な話として、マンガ図書館ZというWebサービスと、ナンバーナインの配信事業は別のサービスのため、この間には関連がありません。とはいえ、生成AI作品の件については、チェック漏れということで取り下げに向けて動いているとのこと。この点には、謝罪と改善を発表しています。
漫画専門店の物理店舗の雄、メロンブックスでVISA/Masterのカード決済が停止。一方でU-NEXTでは、成人向けサービスを切り離して別サービスとすることで、本体U-NEXTの決済機能が4か月ぶりの復帰とのこと。この辺りは一進一退ですね。
KADOKAWA、9月中間決算はゲームと出版、アニメ牽引し売上高10%増の1363億円、営業益24%増の106億円と増収増益 サイバー攻撃への補償・復旧費用で最終減益
KADOKAWAが中間決算を発表。売上10%増、営利24%増と増収増益。
また、サイバー攻撃の特別損失を36億円と見込んでいたものが、クリエイター補填費用などが想定を下回り、24億円に収まったとのこと。
クリエイターさん達の被害が収まり、会社の損失も軽微となれば、なによりですね。
IMART2024終幕
※:筆者の主催するイベントです。ご了承ください。
11/12~16の5日間開催されていたIMART2024が無事終幕いたしました。
ご協賛企業、ご登壇者様、チケットご購入の皆様、その他関係者の皆様、誠にありがとうございました。
まだ、各種数字では集計完了していませんが、ご協賛企業60社超、25セッション登壇者80名と、今年も豪華な取組となりました。
新しい取組も含め、いくつか報告です。
今年からIMARTを運営する法人として登記した「MANGA総研」では、「IPマーケット調査」・「インバウンド観光客調査」等を行いました。こちらについては、追って簡単な調査報告発表動画も公開させていただく予定です。
また、参加者クローズで行ったイベントですが、国際商談会・国内商談会を開催しました。
海外商談会については、国内から40社、海外から20社ほどの企業が参加。また、株式会社メディアドゥの会場や人員ご協力もあり、第1回目をなんとか開催できました。不慣れなところもあり、一部の皆様にご不便おかけいたしましたが、これもまた後日報告させていただきます。
また、そうした海外からの来場者が増えたことから、米国で一番著名なマンガ関連のライター、Deb Aokiさんも来場。セッションを見ての感想をSNSにアップされました。後に英語記事にもなる予定です。
IMARTには「国際マンガ・アニメ祭 Reiwa Toshima」という本名があるのですが、「国際」と冠しておりますので、今後も国際化に向けてつとめてまいります。
また、セッションのアーカイブ配信につきましては、月内で発表します。少しお待ちください。
国内News
note更新が1週空いてしまい、その間様々なサービスが開いたり話題になっています。
文春が、Webマンガサイト「Seasons」をオープン。ファンタジー、BLなど幅広いジャンルを扱うとのこと。文春だけに季節ですかね。
SBクリエイティブは、電子書籍ストア「SBCr電子書籍ストア」をオープン。
Webアクションは、機能拡張で作品販売のマネタイズを強化。
KADOKAWAのカドストは、カドコミなどの連携する公式ECサイトになるかなと思いますが、名称変更してリニューアルとのこと。
このあたり、SNSに直結するWebは新規読者獲得に向き、アプリはユーザー囲い込みに向きという基本的な部分がある中で、各社様々な手を打つところかなと。
viviONは、クリエイターに向けて、自社運営の「DLSite」「compo」の他、複数の電子書店への取次的な販売も請け負うということで、これまた強そうなサービスです。
広告代理店と講談社女性コミック編集部のコラボとのこと。
現在、主に女性向け作品において、ボーンデジタル作品が電子書店で活況を呈する中で、大手出版女性向け編集部作品の立ち位置が厳しくなりつつあります。
この辺り、既存の繋がりの中から施策が出て来るのはわかる流れですね。
英語、中国語、韓国語の自動翻訳機能をもつ「comilio」が正式ローンチとのこと。
決済手段に、暗号通貨まであるようです。
めちゃコミのボンデジオリジナル作品が、売上総額5億円超えとのこと。なかなか見ない数字の領域になってまいりました。ボンデジ作品は、これまでの「100万部」などという発行部数に寄る計量が出来ないわけですが、直接的な金額による表現が最もわかりやすくなるわけですね。
作家還元や売上単位など原価構造が全然違いますので、簡単には比較できませんが、単行本1冊500円とすると、5億円はちょうど100万部相当となりますね。
ちなみにその計算だと『ONEPIECE』のギネス記録である「5億部」は、2500億円ということになります。(1冊400円として2000億円)
最近流行の版元の電子コミック運営のクラウドツールですね。この管理、確かに大変なんですよね。DEDENはDADANの運営経験をもとに作られたとのこと。しばらくは、この界隈の話題が増えそうです。
赤松健さん、参議院一期目にして、文部科学大臣政務官に就任です。
実務家として早々に認めてもらったということなんでしょうね。政策への影響力は上がりそうですので、着実に進んでいると思います。
なお、様々な案件に対して「反対」を貫き通す役割は、政府与党議員よりも、野党議員の方が立場的にやりやすいです。与党内で、議決済みの政策に「反対だ」みたいなことを声高に唱えたりすると、実務音痴の「バカの子」扱いを政党の中でされてしまうので、おすすめできない振る舞いです。
インボイスや表現規制など、様々な法案のダメージコントロールを水際でしてくれている赤松さんに、野党議員と同じ役割を望むのは無理筋です。そういうことを期待できる政治家を支持したいのであれば、野党議員から選びましょう。
そうした意味で、今回の就任は政府中枢に近づく一歩ですので、業界としては喜んで良いと思います。こうなると、野党側にもエンタメに強い議員、一人は欲しくなってきますねぇ。国民民主あたりから、良い人出てくれないですかね。あ、でも、反対勢力となると、また別の党になりますか。
コミケ共同代表のひとり、フデタニンさんによる、例のコミケCMの紹介。内容も良いんですが、「檄!帝国華劇団」が流れるのが、本当にアツいですね。これ聞くと反射的に泣きそうになります。ちなみに、今年の冬コミは初のコミケ個人参加をいたします。
Webtoon・ショート動画関連
『喧嘩独学』などの横読み版をジャンプTOONが「ジャンプコミックス」(JC)で出すということのようですね。
普通にWebtoonをスタジオとして制作するビジネスを始める場合、他社のWebtoon作品を自社で横読み化しようなんて思わないと思うんですが、集英社の場合は国内最強のブランド「JC」の横漫画営業力(電子コミックも紙コミックも)があるため、横漫画化のオファーをされた側からすると大きなメリットになりますね。『俺レベ』のKADOKAWAでの成功もありますしね。
ちなみに、価格は1100円など。このあたり、カラー版の横漫画が1000円台で販売されるのも定着化していきそうです。
記事タイトル:無料のインディーズマンガおよびインディーズ Fliptoon への広告掲載に関するお知らせ
Kindleインディーズは、見るだけの無料で収益がクリエイターに還元されてきましたが、ここに広告を掲載することで、より多くの収益還元が行われるようになるとのこと。
Webtoonスタジオ等のPlottに、バンナムからショートアニメ制作で出資とのこと。年間10億、3年で30億円とのこと。これは大きいですね。もともとPlottはショート動画で実績のある会社ですので、バンナムと組んでこれは大きいですね。
少しずつ知られてきているショートドラマですが、日本でも語られる機会が増えてきました。
先日のIMARTでもこのテーマで一つセッションをしましたが、大変面白かったです。
海外News
タイトル訳:WEBTOONショップの開設により、ウェブトゥーンの購入がさらに簡単になりました
WEBTOONなどのコンテンツ提供サイトとグッズ販売などIP展開の連携は洋の東西を問わず進んでいますね。
タイトル訳:Noonoo、OKTOON、TVWIKIがアニメとウェブトゥーンの著作権侵害で逮捕され閉鎖
タイトル訳:ウェブトゥーンは大規模な著作権訴訟で海賊版を取り締まっているが、効果があるのだろうか?
韓国で、海賊版サイトの大型摘発があったようです。効果が無いことは無いと思いますが、どう効果があるかの検証そのものは必要ですね。
タイトル訳:ネイバーのウェブトゥーン、女性蔑視や差別的コンテンツで反発に直面
タイトル訳:ウェブトゥーン業界、CEOの昇給で労働環境の見直しに直面
こうした感じで、Webtoonに悲観的な記事が増えてますね。指摘されていることは、ファクトもあり、認知のゆがみもありですが、立ち上がっていく事業には紆余曲折あるものですからね。あまり気にしてもしょうがないでしょう。現時点では、今後の未来は、担っている人たち次第としか言いようが無いと思います。
タイトル訳:第3四半期の売上高は4,725億ウォン、前年同期比9.5%増、日本での売上は25%増「AI推奨モデルによる有料コンテンツの成長」
WEBTOON Entertainmentの3Q決算は好調。カカオの『梨泰院クラス』の単行本は好調とのことです。
タイトル訳:「すべての人に創作の喜びを」…“電子コミックのYouTube”目指す韓国のスタートアップ
そして、これまた韓国内の話ですが、最大の財閥系サムスンから、マンガ系サービスが出てますね。それもAIを中心に据えてですね。なにか物凄い爆死の臭いがしますが。
それはともかく、韓国内でもNAVERやカカオと言った新興グループでは無く、旧財閥系からもエンタメに進出していますね。日本で言えば三菱や三井がエンタメに進出するようなものですかね。
タイトル訳:ウェブトゥーン「アンスクロールド」が人気シリーズを印刷物に
米国のWebtoonの紙展開の話題何ですが、紹介の3作品目が『喧嘩独学』のようで、これジャンプTOONで横化したやつでしょうか。表紙のイラストは同じですがデザインはちょっと変わってますね。
日本からはニュースを捕捉しにくいのですが、米国に進出していた英語版マガポケ「K MANGA」が、更にカナダ、オーストラリアなど複数国に進出しています。
libroさんの北米ニュースまとめです。このnoteは、もっと業界の人に読まれて良いと思うんです。なかなか無いですよ。
タイトル訳:州上院、書籍禁止を中止し図書館員を保護する法案を可決
焚書を禁止する法律をカウンターで作ったというものですね。トランプ氏の大統領就任により、このあたりこれから大変なことになりそうですが、前哨戦ですね。
タイトル訳:CBセブルスキーが大阪コミコンで2025年のヤング・アベンジャーズを発表
大阪コミコン、なかなか大事なことを発表する場になってるみたいですね。
まず、フランスで電子コミックを販売するMangas.ioというサービスがありまして、ここに日本のコミックの販売について「フランス漫画市場の最大手出版社」のGlénat社が参加ということのようですね。
このGlénat社は『BLEACH』、『亜人』、『シャングリラ・ フロンティア 』、『寄生獣』と、日本の作品を仏語版で販売しています。その際、紙の出版をするに伴い、電子書籍の出版権もライセンスされているため、こうしてフランスの会社がフランスの会社に版権展開しているわけですね。
これは、興味深い話題が多いですね。ドイツの出版社の中にも、日本のマンガを販売する存在の中に、老舗から新興まであるのですね。そしてやはり、女性向けが増えて行くと。このあたり地続きですね。
AI・画像生成関連
音声は、イラスト以上にAIのインパクトが大きそうです。
個人的には、ルフィの声を田中真弓さんの声のまま英語に出来たら、海外のファンは嬉しいのかどうなのか、ちょっと興味はあるのですが。
ここしばらくは、この話題が大きかったですね。
この記事、勉強になりました。
気持ち的にはともかく、技術的に正しい振る舞いをするのは、難しい世の中になってしまいました。サービス側も、正直に言うとバカを見るみたいで、新しい社会への適応に、みんな振り上げたこぶしどこに降ろして良いか困っちゃう感じですね。
クリエイターに味方するAIのかたちの模索ですねぇ。後半にアニメの制作の例が入ってますけど、中割を指定してますね。どこまでできるのかなぁ。
こちらは小説制作側ですね、イラスト系に比べると安心して見てられます。
週プレの記事ですが、ちょっとどう捉えて良いか困っちゃいましたね。
この記事、AI制作っぽい印象が強いなーと。
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