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【マンガ業界Newsまとめ】唐突なみずほ銀行の産業調査発表にエンタメ業界ざわめく「日本企業の勝ち筋」とは?|4/24-049

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みずほ産業調査 Vol.69コンテンツ産業の展望 2022~日本企業の勝ち筋~

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今週、エンタメ業界の個人のSNSの間で「出来が良すぎる!」と、突然話題になったのがこちら、みずほ銀行の産業調査レポート「コンテンツ産業の展望2022」です。

テーマは「日本企業の勝ち筋」とのことなのですが、マンガから始まり、アニメ、映画、ゲームなど、経産省が以前定義した「エンタメ産業」全般に渡り、極めて詳しい調査、分析、提言がなされていました。

全148ページとかなり長いですが、ジャンルは多岐にわたっており、興味のあるところは目を通すことをおすすめします。しかし、これまでみずほでこうした調査がなされたことは無かったと記憶してまして、エンタメ業界への注目が上がっての初の試みだったというところでしょうか。

内容ですが、コミチ代表の萬田さんが、レポートを搔い摘んで説明ツイートしています。ビジネスサイドの方にはわかりやすいかと思います。

私のピックアップとしては、マンガのデジタル展開や各プラットフォーマーの立ち位置などの詳しい説明から、以下のような提言に唸りました。

しかしながら、電子書籍も展開する大手EC 事業者やプラットフォーマーが存在感を徐々に高めてきている。
出版社によるコンテンツ供給力の弱まりや、交渉力の低下が進むと電子書籍の価格決定権がEC プラットフォーマーに渡ってしまうリスクもあり、引き続き出版社がコンテンツホルダーとしての価値を発揮し続けるためには、デジタルに対応したコンテンツ発信の場の提供等を通じてコンテンツ供給量(新規発刊点数)の維持と同時にテストマーケティングによる返品率の改善にも力を入れていく必要がある。

みずほ産業調査 Vol.69コンテンツ産業の展望 2022~日本企業の勝ち筋~

普段私がしているマンガ業界DXの仕事は、まさにここに書いてあることを、様々なデータや知見から業界の方に説明しているわけですが、外部の方にここまできちんと分析されて説明されると、なんだかとても別の意味での説得力があります。

レポートの内容としては、ともかく各産業のこれまでの経緯や現状を整理するという点において、とても素晴らしいものがあります。基本となるデータは既にある資料を合体させたり整理したものが主ですが、とにかくよくまとまってます。

マンガ産業面については、海外PFとしてAmazonを例に出すものの、現状のマンガアプリやWebtoonの趨勢にはほぼ触れておらず、恐らく有料のアプリデータサービスはデータ取得先として避けたのと、ほかは国内に確たるデータが無いのでスコープ外としたと思うのですが、そこはすっぽり抜けているものと認識してよいと思います。

また、肝心な「勝ち筋」ですが、コンテンツ制作のみならず、テーマパークやPF事業などエンタメ全域に事業展開するDisneyをモデルに、日本のエンタメ産業の基幹に「製作委員会」を置き、コンテンツコングロマリットを構築するというものでした。

ここはまぁちょっとなかなかなとは思うのですが、少なくともNAVERやKAKAOといったグローバル企業化しつつある他国勢とこれからより深く付き合っていくことを宿命づけられた日本のマンガ産業にとって、「座組を大きくとれる国産の仕組みをつくる」という点はそうだろうなと思います。ただまぁ、ここに来て製作委員会はまぁ意思決定遅そうだなぁとはおもっちゃいますが。

しかし、みずほ銀行の中の人には、こんな重厚なレポートを書けてしまう人がいるのですね。驚きました。人手や時間、整理をしていく頭脳を使うという点において、すごいリソースを使ったのだろうなと思います。

ただ、Webtoonの趨勢が抜けている点などから、恐らく文献や堅く数字を読める資料中心の調査だったと思いますので、次に作る際は最新事例を取り込むためにヒアリングなど多く入れたら良いのではないかなと思いました。


デジタルコミックの年代別GRPは35-49歳が最高 月間視聴者数は「ピッコマ」が最多/ニールセン調査

調査会社ニールセンの「デジタルコンテンツ視聴率」のレポートの中で、「コミック」のジャンル視聴状況を発表とのこと。

それによると、2022年2月にピッコマを見た人は821万人平均利用回数が76回、LINEマンガが553万人で平均利用が28回、以降、シーモア、ヤフー、めちゃコミと続くようです。

ピッコマの利用数が多いことなど、リアリティのある数字ではあります。ここのところ、あらゆる場面でピッコマの勢いが強いというお話が出てきますが、このデータを見ても頭一つ抜け出たというところまで来たのかもしれません。

ただ、この手の調査データを出す際は、基礎データ情報を出さないとデータを読み取るのが難しくなるので、こうしたリポートを出す際は基礎データ情報をニールセンにはきちんと明示して欲しいなぁとは思います。

調査する会社が少なかった時代はそれでも良かったかもですが、多くのデータが出てきている現在は、そこを明示しないと情報としての価値が落ちてしまいますね。歴史ある調査会社でも、そのあたりは時代に合せて対応していただきたいところです。

そこから、以下の「電子書籍アプリ・サービス利用経験は42.3%/コミック・小説・雑誌をおトクに、手軽に読みたい!利用率・満足度ともに第1位は「Amazon Kindle」」という記事に続きます。

調査対象が「「あんふぁんWeb」「ぎゅってWeb」会員、こどもりびんぐアンケート会員に対しWebで調査を実施」ということで、子育て世帯の女性向けの調査ということがわかります。

これによると、利用率第1は位は、AmazonKindleで、続いてシーモア・ebookjapanと続き、以外にも先の結果にあったピッコマ、LINEマンガの名前がありません。ただ、調査概要を見ると、両サービスは「その他」でくくられていた可能性もありますね。


「ドルガバ」の「少年ジャンプ」表4広告は効果があるのか?

紙の雑誌「週刊少年ジャンプ」の広告のお話です。マンガ誌で唯一安定して100万部の発行部数を超えるは少年ジャンプのみ。そこに「ドルチェ&ガッパーナ」が、呪術廻戦でコラボ広告をしたということですね。

ここでは、広告料金は表4(裏表紙)が350万(税抜き)、表2(表紙の裏)が320万円(同)、表3(裏表紙の裏)が300万円(同)というリアルな数値が書かれています。一見してへーっと思いました。

記事の趣旨としては、ジャンプの読者は19歳以上の大人が半分以上占めるので、効果はあるのではないという趣旨の記事ですね。なるほど。あるのかなー、そうかもですねー。


「ウェブトゥーン原作ゲームは成功しない」という汚名を晴らせるか?

日本でも、当初マンガ業界にアプリで参入してきた企業のほとんどはゲーム企業で、マンガ制作事業の開始を「ゲームのIPを自力で育てるため」という動機と説明していた企業が多かったです。韓国Webtoonでもその事情は変わらず、それでもなかなか上手く行かないみたいですね。

そもそも、大ヒットゲームのIPが漫画(アニメ)だったという例はあまりなく、大ヒットしたマンガ・アニメ作品のゲーム化したものが、それに花を添える形でゲームにもなるというのが日本のパターンではあったかと思います。決して小さくはないですが、本編を超えることはないというか。

こうしたマンガ・Webtoon発のIPによるゲーム化は、映像化時のヒットがセットと思いますので、IPの複合化戦略はますます進みそうですね。


小説家とイラストレーターのマッチングプラットフォーム「たいあっぷ」、Webtoon事業に参入 約2000名のクリエイターネットワークによる作品制作

今週のWebtoon参入企業1社目

トレンダーズ社による小説家とイラストレーターのマッチングサービス、「たいあっぷ」の登録作家を起点に、Webtoon事業に参入とのこと。あの経沢香保子さん率いるトレンダーズ社が進出してくるということですから、Webtoonはすっかりビジネストレンドになったということなのでしょう。

小説家とイラストレーターのマッチングというのは、出版社や編集者を介さずにこれを行うとなると、領域的にはいわゆる「個人出版」的な、あまりビジネスとしてはスケールしない分野ですので、これどうするのかな?と思ってましたが、クリエイターを集めてWebtoonに進出するという、こうした手順は恐らく当初計画通りの手順だったのかもしれませんね。


CyberZ、Web縦読みマンガの企画・制作から販売までをプロデュースするコンテンツ制作スタジオ『StudioZOON(スタジオズーン)』を設立

今週のWebtoon進出企業2社目

CyberZはサイバーエージェント社の100%子会社のネット広告代理店で、とはいってもマンガ広告をやっていたというよりは、広告計測ツール「F.O.X」や、eスポーツやNFTなども手掛ける企画に強い会社のようです。

Webtoonからは若干距離を置く同グループ内のサイコミに対して、Webtoon専業で棲み分ける形でしょうか。


海外News

『接近不可レディー』など、ヒット作品を制作している韓国のWebtoonプロダクション、ContentsLabBlueが、日本とタイへ法人設立して進出とのこと。同ケースだと、韓国COPINがCOPIN JAPANを設立し、作品の日本展開やオリジナル作品制作をしていますが、同じような形とイメージして良さそうです。

日本のWebtoon業界に参入という意味だと、今週3社目ということになりますね。


「KAKAOエンターがD&Cメディアを買収」「D&Cメディアは、「俺一人だけレベルアップな件」(俺レベのことですね)を流通」とあります。

この俺レベの制作まわりについては、会社名が入り乱れていて、良くわからないですね。一度整理してみていただけないかと思ったりします。


NAVERの第1四半期決算結果が、好調で、前期比4/5%増。その中で、コマースが好調、他に低調な事業もあるものの、Webtoonは前年同期比で79.5%増ということで、グループに貢献しているようです。


ウェブトゥーンレーベル「POPTOON」を立ち上げた、トゥーヴァージンズ社による漫画賞で、漫画家の東村アキコさんと編集者の江上英樹さんが審査員をされるそうです。

このお2人のコンビと言えば、LONEマンガに吸収されたWebtoonサービス「XOY」の中で『偽装不倫』を制作、LINEマンガの中で『私のことを覚えていますか』などを連載しましたが、その流れでしょうか。


記事はめっちゃコタツ記事なんですけど、確かにこの3人の作家さんは美男美女ですねぇ。インスタの挿入画像が美しいです。すごいなぁ。

国内News

ぶんか社の直近決算で純益が10億円弱ということで、非常に好調ですね。
ぶんか社と言えば、2020年にはビーグリーグループの傘下に入っていまして、この際は電子コミックに強いビーグリーとのグループシナジーを謡っていましたが、このあたり奏功したといえるのでしょうか。作品も良いですよね。


『家庭画報』など文化や児童向け絵本などを手掛ける世界文化社が、少年少女向けWebマンガサイト「コミックカルラ」をオープンしました。

児童向けとなると、コロコロやボンボンはYoutubeなどのネット向けを強化、学研などでは学習マンガをWeb上ではほぼすべて無料公開しつつ、図書館や家庭での紙書籍の導入を狙うなど、各社工夫をしているところです。

少年誌以上の年齢帯と違い、単行本化してのマネタイズが難しい分野ですので、今後の展開をどう考えているか興味深いです。やはり図書館方面でしょうか。


『先輩はおとこのこ』などのヒット作品も輩出した、LINEマンガの取組「マンガ家応援プロジェクト」の記事です。

取組そのものの詳細は記事をと思うのですが、興味深かったのが、投稿作家のニーズに応えるために「辛口」「褒めて」など、どう講評して欲しいか目的を選択できるという機能で、とても良いなと思いましたし、シンプルな施策ですけど珍しいですよね。

これは話者の小林さんの言う通り、元クリエイターが編集部に多いことで生まれたものというのは納得のいくところで、なかなか大手出版社の編集部では生まれなかったでしょうね。個人的に小林さんの前職からの知人なのですが、お元気でご活躍で何よりです。


以前、ともに大阪にオフィスを持つ、シーモア×マッグガーデンの「なにわの漫画コラボ」としてご紹介したこの取組ですが、作品配信が始まったようです。独占先行とありますので、のちに各PFにも展開するようですね。

ジャンルとしては同社の得意ジャンルでの横読みですが、サムネイルの気合の入り方を見ると、ガチっとWeb向けに仕上げてきてそうです。


月刊『創』の篠田編集長による、マガハ、光文社、文春に加えて新潮社もはいっての、文芸各社のコミック事業進捗記事ですね。

各社の動きが具体的になっていっていますが、やはりバンチで先行した新潮社は実績が出てきている点で、この中では抜きん出ている印象ですね。


現在、Webtoon制作スタジオの多くが、作家獲得に注力していますが、DLSiteのviviON社も専門学校との取組を開始したようです。


記事のみ紹介


告知関連

筋肉&ぽっちゃりのVoicy更新してます。手が回ってなくて、更に2本ほど未公開ストックがあるのですが、今週また公開していきます。あと、まだGWなどに向けて情報公開してないイベントやTwitterスペースもありますので、ぜひTwitterフォローしてください。

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(編集後記)先日4/21に開催したイベント「あなたの知らない女性向けWebtoonの世界」は、100人近い方にお申込みいただき、お陰様で好評でした。秋にはまた、アーカイブ公開できるかと思います。
それと、4月末は京都精華大学のマンガ学部、5月中旬には東京工芸大学のマンガ学科で、この業界Newsまとめに絡めて講義を一コマやらせていただくことになりまして、現在絶賛講義内容準備中です。若い漫画家志望の方々にお役に立てる情報が発信できればと思っています。

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