JT重力をやってみよう-導入2(作用)

前回の続きです。

本稿ではJT重力の作用を一般のディラトン場の形から導出していきます。議論の誤りや計算間違いなどがあるかもしれないので注意してください。もしあったら教えて下さい。

今回の設定から、曲率を含み、スカラー場$${\tilde{\Phi}(x)}$$とその運動項を含めた作用を考えます。一般の関数$${U_{1}(\tilde{\Phi}),U_{2}(\tilde{\Phi}),U_{3}(\tilde{\Phi})}$$を用いて

$$
I=-\frac{1}{16\pi G_{N}}\int_{\mathcal{M}}d^{2}x \sqrt{g}\left(U_{1}(\tilde{\Phi})R + U_{2}(\tilde{\Phi})g^{\mu\nu}\partial_{\mu}\tilde{\Phi}\partial_{\nu}\tilde{\Phi}+U_{3}(\tilde{\Phi}) \right)
$$

と書けます。この$${\tilde{\Phi}(x)}$$がディラトンと呼ばれるスカラー場です。この作用からJT重力における作用を導いていきます。まず、ディラトン場を

$$
  \tilde{\Phi}\to\Phi=U_{1}(\tilde{\Phi})
$$

と定義し直します。ただし、ここで

$$
U_{1}(\tilde{\Phi})'=0
$$

を満たす$${\tilde{\Phi}}$$は存在しないものとします。もし存在する場合、場の逆変換が行えず、$${\Phi}$$の運動項がうまく定義されなくなるためです。実際、逆変換を

$$
  U_{1}^{-1}(\Phi)=\tilde{\Phi}
$$

と書いたとき、この項の微分について

$$
\begin{align*}
  \partial_{\mu}\tilde{\Phi}&=\partial_{\mu}(U_{1}^{-1}(\Phi))\\
  &=\partial_{\mu}\Phi(U_{1}^{-1}(\Phi))'=\partial_{\mu}\Phi \frac{1}{U_{1}(\Phi)'}
\end{align*}
$$

となり、分母にゼロが現れてしまいます。

次に、2番目のポテンシャルをゼロと取れることを使います。

$$
U_{2}(\Phi)=0
$$

これは計量のWeyl変換から導けます。関数$${\omega(x)}$$を用いて、計量を

$$
 g'_{\mu\nu}=e^{2\omega}g_{\mu\nu}
$$

と変換します。このときスカラー曲率は

$$
\sqrt{g'}R'=\sqrt{g}(R-2\nabla^{2}\omega)
$$

となります。この変換則については以下の記事を参照してください。

一般次元については私の記事ではありませんがこの方のサイトにありました。

いま、$${\omega(x)}$$を

$$
  \omega(x)=-\frac{1}{2}\int^{\Phi(x)}U_{2}(\Phi')d\Phi'
$$

と取ることで2番目のポテンシャルをゼロにできます。このとき

$$
-2\nabla^{2}\omega=\nabla_{\mu}\partial^{\mu}\left(\int^{\Phi(x)}U_{2}(\Phi')d\Phi' \right)=\nabla_{\mu}\partial^{\mu}\Phi U_{2}(\Phi)
$$

となり、この式は$${\partial^{\mu}\Phi}$$をベクトルと見たときの共変微分

$$
\nabla_{\mu}(\partial^{\mu}\Phi U_{2}(\Phi))=\partial_{\mu}\partial^{\mu}\Phi U_{2}(\Phi)+\Gamma^{\mu}_{\mu\alpha}\partial^{\alpha}\Phi U_{2}(\Phi)+\partial^{\mu}\Phi \partial_{\mu}U_{2}(\Phi)
$$

と計算されます。したがって、Weyl変換によって現れたこうと運動項の部分をあわせて

$$
\begin{align*}
-2\Phi\nabla^{2}\omega+U_{2}(\Phi)\partial_{\mu}\Phi\partial^{\mu}\Phi=&\Phi\partial_{\mu}\partial^{\mu}\Phi U_{2}(\Phi)+\Gamma^{\mu}_{\mu\alpha}\Phi\partial^{\alpha}\Phi U_{2}(\Phi)\\
&+\Phi\partial^{\mu}\Phi \partial_{\mu}U_{2}(\Phi)+U_{2}(\Phi)\partial_{\mu}\Phi\partial^{\mu}\Phi
\end{align*}
$$

となります。これは次の形の共変微分にまとることができます。

$$
\nabla_{\mu}(\Phi\partial^{\mu}\Phi U_{2}(\Phi))=\Phi\partial_{\mu}\partial^{\mu}\Phi U_{2}(\Phi)+\Gamma^{\mu}_{\mu\alpha}\Phi\partial^{\alpha}\Phi U_{2}(\Phi)+\Phi\partial^{\mu}\Phi \partial_{\mu}U_{2}(\Phi)+U_{2}(\Phi)\partial_{\mu}\Phi\partial^{\mu}\Phi\quad (*)
$$

したがって、Weyl変換を行った後、作用にはこの式が現れることになりますが、ここで一般のベクトルの共変微分について

$$
  \sqrt{g}\nabla_{\alpha}W^{\alpha}=\partial_{\alpha}(\sqrt{g}W^{\alpha})
$$

と書けることを用いると、(*)はすべて表面積分となります。結局、適切な境界条件を課すことで、この項の寄与を消すことができます。

以上の議論により、$${U_{1}(\tilde{\Phi})=\Phi }$$とおき、$${U_{2}(\Phi)=0}$$とできることがわかりました。ここで改めて$${U_{3}{(\Phi)}=U(\Phi)}$$と表します。すると、最終的に一般の2次元ディラトン重力の模型の作用を

$$
I=-\frac{1}{16\pi G_{N}}\int_{\mathcal{M}}d^{2}x \sqrt{g}(\Phi R +U(\Phi))
$$

と書くことができます。$${U(\Phi)}$$はディラトンポテンシャルと呼ばれます。このディラトンポテンシャルを宇宙定数$${\Lambda}$$を用いて

$$
U(\Phi)=-\Lambda\Phi
$$

とした模型をJT重力といいます。ここでは特に、負の定曲率を持つ場合、すなわち反ド・ジッター時空($${\mathrm{AdS}_{2}}$$)を考えます。宇宙定数は

$$
\Lambda=-\frac{2}{L^{2}}
$$

と取りますが、ここでは$${L=1}$$となるような単位にします。最後に、外曲率$${K}$$を含むGHY項を加えて、JT重力の作用が以下のようになります。

$$
I_{JT}[g,\Phi]=-\frac{1}{16\pi G_{N}}\int_{\mathcal{M}}d^{2}x\sqrt{g}\Phi(R+2)-\frac{1}{8\pi G_{N}}\int_{\partial \mathcal{M}}du\sqrt{h}\Phi(K-1)
$$

以降、この作用をもとに様々な議論をしていきます。次の記事ではJT重力の古典解について考える予定です。

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