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☆宵月夜の蟹の念仏☆ 暗中模索のまま、noteを始めました。 昔に書いていた文章の手直…

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☆宵月夜の蟹の念仏☆ 暗中模索のまま、noteを始めました。 昔に書いていた文章の手直しをしながら、ゆるりと「完」まで辿り着きたいと思います。 気になってもらえたら、喜びます☆

最近の記事

刹那一千秒物語 四夜

∞ satoshi ∞   最悪な気分。  梅雨時期の独特なねっとりとまとわりつくような温い空気が、さっき抱いた女の香りと混じり合い余計に気持ちが悪い。  フラリと入ったバーで、覆面パーティーが行われていた。  俺は茶色い紙袋に目だし穴を開け傍観者に徹していた。滑稽な日常には、こんなくだらない生き物の遊びを遠目から見ているのが一番良い。 「ワタシ、本当はこんな女じゃないのよ。だけど、どうしても友達が出来ないの。だから寂しくて、どうしてなのかな?」  暗がりでマスクを取った女は

    • 刹那一千秒物語 三夜

      ~ミドリとサトシ~   ∞ midori ∞  仕事帰り。  家までの道、空を見上げながら歩く私の足はフラフラとぎこちない。  近頃、雨が続いていたから久し振りに見る星空は空気も洗われて、何時もより少しだけ沢山の瞬きを見せていた。  この辺りもだいぶ家が建ち並びはじめて、昔の面影は何処にもない。私がまだ小さい頃、此処は一面の野原だった。少し先に見える丘の向こうは未知の世界で、想像するだけでワクワクしたのを憶えている。  色々な草花が咲いていた、色々な遊びをした。  子供達の

      • 刹那一千秒物語 二夜

        ~私が月と再会った瞬間~  トクリ・トクリと音がする。  夕方、太陽が西に向かう時刻。  何時もと同じ道を歩きながら、胸が詰まりそうな瞬間。  私はソノ空に確かにドキドキしていた。苦しいほどに、胸が張り裂けてしまいそうで痛かった。  痛いココロが、トクリ・トクリと音を立てる。  何かを期待するココロが、トクリ・トクリと……  忘れていたはずの、あの空だった。  あの時の空が今蘇って、私の頭上に広がる。  記憶の中の、夢の中の、空。  泣いていた…… 「来ないで!」  私

        • 刹那一千秒物語 一夜

          ~僕が月と出遭った理由~  コトリ・コトリと音がする。  誰もいないはずの小さな部屋で、そのコトリ・コトリと忍び寄るように小さな音は聞こえてくる。  その音が何処からはじまっているのか耳をすましていると、僕は気付いたんだ。  それは、僕の頭の奥からの音。  狭い汚れた窓の隙間から、月が、其処から手を伸ばすように僕の頭に忍び込んできて……  絶対に誰も入れない部屋の扉を、コトリ・コトリと叩いている。  絶対に誰も入れたくないソコを、コトリ・コトリと叩いている。 「一緒に行

        刹那一千秒物語 四夜

          刹那一千秒物語 前夜

          『月はチーズで出来ている』  貴方は知っている?  月が、何で出来ているのか。  宵闇にいつも離れずに浮かんでいる、あの月。  千年前も千年後も、今の刹那も次の刹那も。  月は、過去の未来も未来の過去も、今の未来も今の過去も。  ずっと……

          刹那一千秒物語 前夜

          刹 那 一 千 秒 物 語

          「銀曜日の月」の続編が、ふたつある。 どれも途中で、まだ完成はしていない。 その一遍を、推敲しながら書き足していこうと思う。 ーーーー「刹那一千秒物語」ーーーー

          刹 那 一 千 秒 物 語