粉々

誰か今、私の頭をぶん殴ってくれないかなと思うときがある。ぶん殴ってもらえば、頭の中で湧き上がってきたいらないものたちが、霧散するかもしれないし、ごちゃごちゃに混ざり合ったピースがすとんと元に戻るかもしれないし、そもそも、頭自体がなくなって余計なことを考えなくても済むかもしれないし。もちろん比喩だが、そういう、頭を殴られるような経験が、足りないのかもしれないし、自分で殴る方法を知らない。だからいつも、頭が煮詰まっていて、いつもそわそわしていて、考えているのに、何も考えられない。

もし、粉々に頭を、体を砕かれたなら、それはもうきれいな粉末になりたい。さらさらと、泥団子の仕上げに使われるような、さらさらの粉末。粉薬なんてのはまだまだ甘い。白い、そう、焼かれたお骨のように、さらさらの、粉末。風に吹かれてさらりと消える。そういう、粉々なものに、なりたいのだけど。だけど、反して私はいつも塊で動けない。表面も中身もどろどろしていて、時間が来ると固まって、そうしてまた、どうにか動こうともだえるたびにどろどろ、どろどろ、固まる。

みんなどうしてそんな風にバランスをとれるのだろう。どうして、そんなにさらさらと、誰にもくっつかないで生きていけるのだろう。私はもうここからどこにも動けない。焼き払われたって、きっと黒ずんでのこってしまうのに。