東京横ばい、名古屋は上昇 不動産価格に市況の変化

販売会社も変化を感じている。東京23区で単身者向けの中古ワンルームマンションを仕入れ販売する日本財託。同社の重吉勉社長によれば、2016年半ば頃から一部の地域を除き、都内の中古ワンルーム価格は上昇から横ばいに転じてきたという。

 今後、長期金利の上昇に伴ってローンの金利も上がる可能性がある中で、どのような対応があるか。重吉社長は過大な借り入れは禁物という。賃貸収入からローンの返済や賃貸管理費などの諸費用を支払っても、手元に資金が残る条件にする。

 日本財託では、投資家に繰り上げ返済をしながら複数の物件を保有する戦略を提案する。1軒目のローンを完済していれば、2軒目は2つの物件の家賃から返済するので1軒目より返済期間が短くなり、3軒目はさらに短縮できる。「定年後にローン返済のない物件が複数あれば安心のはず」と重吉社長は言う。

 価格の上昇余地がある地域はあるのか。健美家のデータでは札幌市の一棟アパートは足元では上昇傾向だが、07年以降の高値圏を超えている。

 区分マンション価格が上昇している名古屋市はどうか。健美家の倉内社長は要因の一つにリニア効果を挙げる。不動産投資で新線建設は重要な注目材料だ。オリンピックも注目されているが、「新線などインフラ整備を伴うことが重要」と倉内社長は言う。リニア中央新幹線の開通は27年だが、既に名古屋駅周辺の開発が進んでおり、これらが追い風になる可能性はある。

 個人投資家はどうみているのか。秋田市内の一棟アパートなどに投資する声楽家の菅原久美子さんは、価格が横ばい圏に入ることを視野に入れている。秋田市では中心部の再開発が進む。今後郊外に一戸建ての空き家が増え、価格の安い一戸建て物件が出るとみて、投資の好機がないかを探る。先を読み、次の一手の準備を先回りして進めるのが投資の王道だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?