「はるかカーテンコールまで」デジタル栞文 ‐第3回‐

「遠泳」同人の笠木拓の第一歌集刊行記念note!第三回目の更新担当は中澤詩風です。祝日なので、昨日の北村早紀に続いてお得な連続公開です。

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笠木さんの歌集が刊行されたということで、とてもめでたいです。
漫画は単行本化を待つタイプの人間である私としては、笠木さんの歌をまとめて読める機会ができて、とても嬉しいです。

さて、今回笠木さんの歌をまとめ読みして、いいなと思った歌を引きます。

(永遠は無いよね)(無いね)吊革をはんぶんこする花火の帰り
/もう痛くない、まだ帰れない
ケータイを畳み両手で胸に当てあこがれこがれこわがるなかれ
/もう痛くない、まだ帰れない
見くびってほしいとおもう 夕闇に君は首すじすんと伸ばして
/声よ、飛んでいるか
君が泣くところが見たい 夕闇に手さぐりで挿す自転車の鍵
/木馬と水鳥
体ならあるのに輪郭がなくて浮かんでおりぬプラネタリウム
/フェイクファー
空港をくださいどうかてのひらにおさまるほどの夜の空港
/ラウンダバウト
北白川の夜に灯る黄色い幌
「あかつき」に有史以来の注文の数だけ〈並、ねぎ多め〉ありにき
/千年一夜
トーキョーに来るたびにお茶しすぎるよ ぜんぶ追伸みたいな会話
/バスタ新宿

最初にひいた三首は特にもともと好きな歌で、電車に乗ったときや夕焼けを見たときによく思い出しています。リズムが心地よいです。
後ろから2番目の歌、「あかつき」は北白川にあるおいしいラーメン屋さんです。京大短歌には北白川に住んでいた人が多く、よく食べに行っている人もいたなあと思いだします。私もよく行っていました。この歌が入っている連作「千年一夜」は京都を題材にした作品で、情景が目に浮かびます。

いろんな人がこの歌集を読んで、それぞれに好きな歌というのが生まれるのだろうと考えると、それは素敵なことだなあと思います。

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