股旅CENTRAL_day8_名古屋〜静岡
「旅はどうですか」友人が聞いた。
「いやあ大変だよ」私は返した。
友人は言った。
「大変じゃない旅、そんなもの旅行ですよ」。
大変なことになっている。
本来であれば今日は富山から新潟に入っているはずだった。
ところが私が今いるのは愛知で、向かっているのは静岡だ。
"股旅CENTRAL"の趣旨に背きはしないが、日本海側と真反対の太平洋側を進むとは計画倒れもいいところである。
思いもよらず名古屋に戻ってきてしまった私は、目が覚めてからずっと考え事をしていた。
ここから先どこへ向かおうか。
昨日SNSを使って
「予定が狂った、何処へでも行く、撮影料金は交通費だけでいい」と大々的に呼び掛けたにも関わらず、私の元に届いた連絡といえば「誕生日おめでとう」というものばかりだった。
Twitterのインプレッションなるものが示すことには3.5万人、横浜スタジアムを満員にできる人数がそれを目にしている計算なのにおかしいものである。
文句を言えども何も始まらないので思いつく限りの候補を出してみたのだが、まずは腹が減ったので空腹を満たしに出かけることにした。
やって来たのは名古屋の繁華街、錦。
地下鉄伏見駅から徒歩すぐのベトコンラーメン新京。
名古屋名物ベトコンラーメンの発祥店、
ちょい辛スープにニラ/もやし/豚肉の炒め物にニンニクがゴロッゴロ。
めちゃくちゃうまい。
店内にはわたくし撮影のイメージビジュアルも飾ってある。
お近くの方や名古屋に行かれる方はぜひ。
続いて向かったのは少し懐かしい場所。
地下鉄 塩釜口駅を降りてしばし歩く。
ヴィレッジヴァンガード本店に到着だ。
少々昔話を。
写真家になる前、2001年〜2011年、私はこの会社に所属していた。
アルバイトで入って店長になり、転勤先で色々な土地を経験した。
愛知にはじまり東京、大阪、神奈川、また愛知……
新店を作る部隊に参加したこともあった。
千葉や神戸や広島や…たくさん行ったなあ。
それらの経験で、知らない土地の楽しさというものを覚えたのかなーと今になれば思う。
最終的には社長や会長に厄介者として追い出されることになり、当時はそんな扱いに憤慨していたのだが……
致し方なし。歳をとって振り返ってみれば、自分が経営側でもそうしたと思う。勝手にあれこれやって言うこと聞かないんだもん。
そんな若き青春の日々といっても過言ではないあの頃、あの世界に導いてくれた人……つまり私を採用してくれた最初の店の店長だ、
その人も全国を巡り巡った末にここ本店の店長になったと耳にしたのではるばる訪ねてみたわけだ。
その噂を耳にしたのは2年前。
転勤の多い会社なので、ひょっとしたらもういないかもしれないなあと思いつつ、前もって電話で確認するなんて野暮なことはしたくないのでノーアポで突撃することとした次第。
前置きが長くて申し訳ない。
さて、そんなわけで入店。
自分自身10年以上ぶりに来たが、歩に合わせてミシッ、ミシッと音のするウッドフロアは当時のまま、味があってとてもいい。
店内には1人も客がいなかった。
採算……取れてないだろうなあ……
なんかあの人っぽい字。
しかしあの人は居なかった。
いる気がしたんだけどなあ……
会えなかったということは、今ではなかったということ。
今日いたスタッフ2名は知らない顔だった。
私を見ても「ッッッせーーー」としか発しない、このゆるい感じで私も育った。嫌いではない。
むしろ何か言うだけ素晴らしいとさえ思う。
全体としてはさすが本店、というところ。
下北沢店がいちばん有名だが、外観のレトロさ、店内の雰囲気などは比にならない。ここが最高で至高だ。
だが、私自身は以前から言ってるのだがこの会社はもう役目を終えた会社だと思っている(ひどい)。
インターネットが普及しきるゼロ年代前半までの輝きはもうない。
ネットショッピングが当たり前になってしまった今、リアルのショップはただでさえ厳しいというのに、ドンキほど安くもない。
そしてこれは内部事情によってだが、エロ・グロ・ドラッグなどに代表される本当のサブカルチャー商材はもう扱えない決まりになっている(ガチの内部事情なのでここでは言えない)。
そんなビレバンの現在を言い表すならば
"ちょっとアクの強いファンシーショップ"といったところだろう。
ここにいけば何かが見つかると、わくわくしながら通ったビレバンはもう過去のものなのだ。
大体どこの店にでも置いてあるであろう瓶コーラを飲んで店を後にした。
今回が10数年ぶりだったから……
次来る頃に、まだ残ってるかな……
それにしてもここからどうする。
冒頭で書いたが、ここからどこへ行こうかかなりの数の候補を挙げてはみたのだ。
そのひとつが、もしかすると恩師がいるかもしれなかったビレバン本店だったのだが、
他にリストアップしたものの一部がこれだ。
・佐久島(愛知の離島)。ぼーっと海でも見ようか。でもマジで海しかないな。
・刈谷市(愛知県三河地方)。かつて3年ほど住んでいた。いとこもいる。が、行きつけだったカフェが月曜定休。興を削がれた。
・小牧市(愛知県尾張地方)。幼少期住んでいた。うーん少しパンチがない。
・飛行機に乗って沖縄でも行くか。いやそんなに金がないし股旅「CENTRAL」だっての。
さーてどうするか。
そんな時であった、1件のDMがやっと届いたのは。
何度か個展を見に来てくれたことのあるメンズが「もし良かったら撮ってくれませんか」と言っている。
場所は静岡。
私は二つ返事で列車に飛び乗った。
やってきました静岡。
愛知の隣県なのでアクセスは良かった。
静岡駅にて依頼主と合流し、駅周辺の飲み屋街を中心に撮影した。
教えてもらうまで知らなかったのだが、
静岡駅近辺にはこんなものがあった。
実際に機能するプラモデル風公衆電話、
そしてポスト。
静岡は世界のTAMIYAのお膝元なのでこんなことになってるそうな。
私も男子なのでテンション上がった。
いやほんとに呼んでくれる人がいてよかった。
そんなわけでこの旅は名古屋から始まり岐阜→福井→金沢→富山→名古屋→静岡。
明日は何処にいるでしょう。
風の吹くままに。
旅は続く。
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