股旅CENTRAL_day5_金沢
所謂そこらへんの人里の風景なんてものは、沖縄にでも行かない限りは日本全国どこでもだいたい同じだ。
福井駅から鈍行に乗り、仕事や企画の返事などをしているうちに列車は人生初となる石川県に入っていたが、風景そのものに特に感動するといったことはない。
よくある日本の人里の風景であった。
しかし、都会と田舎の最大の違いは、管理が行き届いていないという点だ。
管理が行き届いていないと、どうなると思う?
そういう建物や土地はひとつ残らず全て絵になるのだ。
錆が、ヒビが、褪色した看板が。
使われなくなった空き地が、
打ち捨てられた農業機械が、
人工物を飲み込まんとする植物が。
管理不足というものは「隙」なのだ。
体面を整えきれなかった隙間こそ輝いている。
それは素、リアリティ、生、なんとでも言い換えられるが私はそこにこそ真実があるのだと思っている。
恋人がパートナーを撮った写真が(技術的なことは置いておいて)プロのカメラマンのそれを凌ぐことがしばしばあるが、それと同じだ。
こんなにいい場所がいくらでもあるのになあ……と残念に思う。
金沢での撮影依頼はゼロである。
1時間半、福井から鈍行列車で20駅。
金沢に到着するも、すぐに北陸新幹線に乗り換える。
本来なら明後日入るはずの、ここ金沢の次の目的地である富山にて今日の依頼主が待っている。
どうしてもスケジュール的に今日でないと都合が合わないということで、金沢をいったん飛び越えて富山で撮影することを了承し引き受けた。
ということで1年ぶりの富山に降り立つ。
昨年来たとは言っても、1件撮影をして慌ただしく帰路についたので全然詳しくはない。
今日の依頼主はよく仕事を振ってくれている個人のお客さん。ありがとうございました。
広い公園で撮影をして金沢へUターン。
滞在わずか1時間、
富山には2日後に改めて降り立つ。
今日の日中は長袖で行動するには暑すぎた。
ここから10℃以下まで下がるので、こっちの昼夜の寒暖差は半端ない。
そんなわけで金沢に逆戻り。
石川県に人生初上陸だ。
例によってホテルに荷物を預けて街を徘徊する。
駅の近辺はとても整備された美しい街で、冒頭で書いたとおり個人的にどうも食指が動かない。
私としてはやはり路地裏の……「街の隙」ともいえる風景が好きだ。
どれだけ取り繕おうとも無駄だ。
すべてを綺麗に管理することは不可能。
こういうものが見たいんだよ。
さて、ところで実は昨日ぐらいから切実な問題がひとつあった。
花粉か黄砂か、目が痒くて痒くて真っ赤になってたまらんのだ。
寝れば治るだろと放っておいたのだが治らない。
今日になって腫れもでてきた。
私は花粉にはかなり耐性があるので、今とんでもない量が飛来しているという黄砂の影響だろうか。
満足に目を開けることも敵わず街歩きにも影響が出るほどになってきたので、意を決して買ってみました目薬。
人生初の石川県で人生初の目薬購入。
ドラッグストアがあるような市街地でよかった。
お値段1,500円。
この極貧旅である、少しでも節約したいのもあってめちゃくちゃ安いのを買うかどうか悩んだが、
悩みを打ち明けた店員さんに「そんなものは効かない」と止められた。
痛い、1,500円は痛い。
だが目はもっと痛い。
私は目薬が怖くて、お目々が真っ赤な時にはいつも恋人に押さえつけられながらギャーギャー騒いで差してもらってるのだが、ここに愛するあの子はいない。
一人でやった事なんてないがやるしかない。
案の定私の瞳はパーフェクトブロックを繰り返し、貴重な薬用成分が瞼を撃つこと数知れず。
何分かかっただろうか、とうとう目薬が眼球を捉えた。
えっ気持ちいい。
気持ちいい気持ちいい。
なんて気持ちいいのだろうか!
あんなに辛かったのに一発で治った。腫れも引いた。現代医学の素晴らしさが身に、いいえ目に染みました。ありがとう目薬。ありがとうスギ薬局。スギ薬局の店員さん。
こちらは本日の夕飯。
つくづく観光や土地のうまいものは二の次なのだなと自分でも思う。
勿体ないと思う人もいるかもしれない。
だけどこれでいい。
しっかり侘しい時間を過ごしているよ。
段々といつもの感じになってきた。
世界は春だが我が世も春だ。
旅は続く。
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