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股旅CENTRAL_day1_名古屋
西へと向かう新幹線。
隣の席に座ったヒスパニック系の男女はスマートフォンにて大音量で動画を鑑賞しはじめた。
私は彼らに「電車では静かにするのが日本のマナーだよ」と話しかけた。
「周り皆静かだろう?」と。
二人は揃って怪訝な、というよりは明らかに不満げな表情を浮かべたが、渋々動画を止めてくれた。
4月10日。
長い冬が終わり、春が訪れるこの時期になると私は毎年きまって旅に出る。
昨年4月
股旅CENTRAL_day2_名古屋
以前から実家に泊まった翌朝に母と連れ立って行っていた古い喫茶店は、田舎特有の趣味の悪いカフェバーに変わっていた。
緩い接客ではありつつも優しかった爺さんと婆さん。二人のどちらか、はたまた両方ともが、動けなくなったか死んでしまったか。
変わらないものはない。
それにしたってさよならはいつだって突然すぎる。
愛着のある人や場所に、お別れぐらいは言わせてほしいもんだ。
母は車の助手席で、私に比べ
股旅CENTRAL_day3_岐阜
毎年4月になると旅をしている私は、
一昨年は北海道と東北を
昨年は沖縄と九州を
そして今年は中部と北信越を巡る旅をしているわけだけれども……
長旅に出るこの時期になると毎年お金が底をつき、結果として極貧旅を強いられている。
なぜだろう。
別に年中こんな状態なわけではない。
潤っている時期も存在するのだが旅のときだけはいつも決まってそういう塩梅になっている。
「自然とそうなる」。
そういうリ
股旅CENTRAL_day4_福井
31駅、3時間半の列車旅で岐阜から福井へと向かう車窓からは、見慣れない風景が窺えた。
大陸からの黄砂だろうか?
写真では分かりづらいが遠くの山々が黄ばんだ靄に覆われている。
快晴にも関わらず地表に届く太陽光はディフューザーがかけられたかのように眠く弱々しい。
今外に出て人を撮ったら面白いのだろうと思い外を眺め続けた。職業病だ。
岐阜から福井へは、道中滋賀県を通過する。
琵琶湖の真横を北上、細
股旅CENTRAL_day5_金沢
所謂そこらへんの人里の風景なんてものは、沖縄にでも行かない限りは日本全国どこでもだいたい同じだ。
福井駅から鈍行に乗り、仕事や企画の返事などをしているうちに列車は人生初となる石川県に入っていたが、風景そのものに特に感動するといったことはない。
よくある日本の人里の風景であった。
しかし、都会と田舎の最大の違いは、管理が行き届いていないという点だ。
管理が行き届いていないと、どうなると思う?
股旅CENTRAL_day6_金沢
今日の北陸は終日雨が降ったり止んだりのぐずついた天気。
昨日は半袖でもよかったぐらいだったのに、
一転アウターが必要なほど気温が下がった。
金沢の街を昨日のうちに見ておいてよかった。
今日だったら厳しかったな。
IRいしかわ鉄道なるものに乗り込み、私はある場所に向かっていた。
私鉄なのにJRそっくりだ。
それもそのはず、つい十数年前にJRから分離して車両や駅をそのまま使っているとのこと。
股旅CENTRAL_day7_富山
かのバディ・デフランコの名曲「Stardust」の閑やかなクラリネットの音色が、そろそろ蓄積してきた旅の疲れを癒す。
柔らかな鶯色のソファに身を沈めれば、
よくある味のアメリカンコーヒーがやけに美味く五臓六腑に沁み渡る。
昨日から降り続いた雨はようやく止んで、
窓からはレースカーテン越しに暖色の光が差しはじめた。
いいね、とてもいい。
思考が捗る。
頭の中で膨らむ、今日の撮影のイメージ。
股旅CENTRAL_day8_名古屋〜静岡
「旅はどうですか」友人が聞いた。
「いやあ大変だよ」私は返した。
友人は言った。
「大変じゃない旅、そんなもの旅行ですよ」。
大変なことになっている。
本来であれば今日は富山から新潟に入っているはずだった。
ところが私が今いるのは愛知で、向かっているのは静岡だ。
"股旅CENTRAL"の趣旨に背きはしないが、日本海側と真反対の太平洋側を進むとは計画倒れもいいところである。
思いもよら
股旅CENTRAL_day9_秘密の海
昨日は誕生日だった。
必ずこの時期に旅に出ているのもあり毎年旅先でその日を迎えるのだが、さて今年はどこで迎えるのかな?という楽しみがある。
どこであろうが孤独なのには変わりないのだが。
一昨年は仙台、昨年は熊本、今年は愛知だった。
さて来年はどうなるか。
鈍行列車と徒歩で約3時間。
そろそろ旅を締め括るために私はある場所へ向かっていた。
最寄り駅と言っていいのかどうかもわからない駅で降り
股旅CENTRAL_day10_帰路
昨晩の旅日記更新後の22時過ぎ。
強風のためテント内で休んでいると外から何者かが照明でテントを照らしているのに気づく。
何事かと身構えたが、なんと現れたのは友人であった。
以前何度もこの場所に共に来たことがあるキャンプ仲間なのだが22時過ぎの漆黒の闇の中の訪問者に心底驚いた。
風が強く気温も下がってきたので早々に寝てしまおうかと考えていたのだが、友人が酒とつまみを携え来てしまっては酒盛りを