見出し画像

還る

ひとつぶの灰 落ち
海へぬける風が
あまりにもかたくなに閉じられたわたしをひらく
少しずつ軋みながら
わたしは新たなものに組み換えられる

一滴の恍惚 湧き
女が眠る部屋に
しずかに影をなしながら存在しようとする意志たちの群れ
鼓動が宿る前の
しずかな予感が
女の血のなかからやってこようと

わたしが午睡で亡くした午後が
吹き過ぎていった風とともに回帰する
死んでいった者たちとともに
言ってしまった言葉たちとともに
消滅してまもない
眼たち 記憶たちとともに