なぜコロナ禍にもかかわらず大学の休退学者が減少したのか?
昨日12月18日20:45に配信された「朝日新聞デジタル」の「コロナ禍で休退学5千人超——大学生・院生、文科省が調査」というタイトルの記事がある。この記事は、次のような文章で始まる。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、10月までに大学・大学院を退学したり休学したりした学生が少なくとも計5238人いることが18日、文部科学省の調査で分かった。文科省は感染拡大で経済が冷え込めばさらに増えかねないとして、学生らへの支援を拡充させる。
ここまで読むと、「コロナ禍」の影響により、大学生・院生が5千人以上も休退学に追い込まれたと感じるのが普通だろう。これは大変な事態だと思う読者も多いかもしれない。ところが、よく読むと、その先には次のような記載がある。
文科省が全国の国公私立大に調査したところ、4~10月に新型コロナの感染拡大の影響を受けて中退した学生・大学院生は1033人、休学は4205人に上った。このうち、学部1年生はそれぞれ378人(約37%)、759人(約18%)だった。一方、全体の中退者は2万5008人、休学は6万3460人で、昨年の同時期と比べると、ともに6833人、6865人減っていた。
つまり、退学者は昨年の同時期よりも 6833人、休学者は 6865人も減っている! したがって、実際には「コロナ禍にもかかわらず大学の休退学者が減少した」のである。
なぜこの内容の記事のタイトルが「コロナ禍で休退学5千人超——大学生・院生、文科省が調査」になるのか? 読者の目を引きたいのか? あるいは読者を「ミスリード」させたいのだろうか? いずれにしても、仮に学生が、この内容の記事にこのタイトルを付けたら、アウトである!
もともと、この記事の取材源である第1次資料は、文部科学省高等教育局・総合教育政策局が18日に発表した「新型コロナウイルス感染症に係る影響を受けた学生等に対する追加を含む経済的な支援及び学びの継続への取組に関する留意点について(依頼)」である。
文科省は、国公私立大学に「経済的な支援及び学びの継続への取組」を継続するように「依頼」した。その文書の中に出てくる基礎情報なのである。
それでは、なぜコロナ禍にもかかわらず大学の休退学者が減少したのか?
4月~10月といえば大学の前期に相当する。今年度前期の退学者の理由は、「経済的困窮(18.0%)」「学生生活不適応・修学意欲低下(17.3%)」などで、2019年度と「概ね同様の傾向」だという。
また、休学者の理由は、「経済的困窮(14.6%)」「心身耗弱・疾患(9.4%)」で、昨年度に比べて「経済的困窮」の割合はやや増加しているものの、「心身耗弱・疾患」の割合は「概ね同様の傾向」だという。
要するに、今年度も昨年度と同じような理由によって、実質的な休退学者の実数だけが減少していることがわかる。
この資料によれば、全体の 98.3%の大学等において「後期分授業料の納付猶予」が実施され、86.4%の大学等において「授業料の納付猶予・分納・減免」に加えて、「給付措置(64.5%)」「貸与措置(31.5%)」「物品支援(48.7%)」といった大学独自の支援措置が取られている。
読者は、今年度前期の退学者と休学者が各々7千人近く減少した理由について、どのようにお考えになるだろうか? 現時点で大学等が行っている支援措置については、いかがだろうか? むしろオンライン授業が、大学生や院生にポジティブな影響を与えている可能性も考えられるのではないだろうか?
#エッセイ #コラム #サイエンス #テクノロジー #コミュニケーション #ジャーナリズム #政治・社会 #新型コロナウイルス #コロナ禍 #休学 #退学 #大学生・院生 #文部科学省
Thank you very much for your understanding and cooperation !!!