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著者が語る:『愛の論理学』<誘拐結婚>!

『愛の論理学』は、マスターとバイトのアイと常連の名誉教授が飲んでいるバーにゲストが訪れて、4人が多彩な「愛」に関わる問題を議論する形式になっている。本書の目的は、『哲学ディベート』や『自己分析論』などと同じように、読者が臨場感を味わいながらディスカッションに一緒に参加して、自分自身の見解を自由自在に考え抜くことにある。

その「第2章:『服従愛』と『名誉殺人』<文化人類学的アプローチ>」のゲストである「国連職員」は、次のように語る(PP. 60-61)。

国連職員 人類の大部分の歴史において、女性は虐げられてきた。欧米でさえ、女性の参政権が認められたのは十九世紀から二十世紀にかけてだし、世界中の多くの文化圏に共通して、女性は家や夫に従属する扱いを受け、社会に進出することもできなかった。                                                                          現在の先進国では、女性も男性と平等に大学に進学し、男性と対等に働くことができるようになってきたが、それは世界の中から見れば、ほんの一部の話でね。想像することさえできないような、もっともっと悲惨な状況で虐げられている数えきれないほど多くの女性や子どもたちが、世界各地で苦しんでいるんだよ。
 たとえば、現在もアフリカ中央部に位置する二十八か国やインドネシアのイスラム系住民の間では、女性の性欲を害悪とみなすことから「女性器切除(FGM: Female Genital Mutilation)」が行われている。キルギスでは男性が気に入った女性を略奪して結婚する「誘拐結婚」が行われ、見知らぬ相手に女性が嫁がされる「人身売買」に近い因習も中東やアフリカ各地に残っている。

さて、彼の発言の中に登場するキルギスとは、次のような国である。

キルギスでは、21世紀になった現在でも「アラ・カチュー」と呼ばれる「誘拐結婚」が行われている。その「伝統」は、ソ連邦に従属した時代に一旦収まっていたにもかかわらず、共産主義政権が崩壊していくにつれて、逆に「自文化中心主義」が高まって復活するという奇妙な状況にある。

読者は、この「習慣」をどのようにお考えだろうか? 「文化相対主義」的観点から、これも独自の一つの「伝統」だと容認されるだろうか? 女性の「人権」を踏みにじる行為だと国際社会で非難の声を上げるべきだろうか?

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