高い塔の男

高い塔の男  2019年7月1日

 ミスター山田は雲の上で朦朧としていた。いま自分が雲の上にいるのか、それとも雲と同化しているのかと聞かれると、はっきりわからない。雲に同化すると、惑星を取り巻くすべての雲が自分の手足になり、あらゆる方向からの情報を直接受け取ることができる。雲の成分は地上に生きている生き物の成分とほとんど同じだが、重い成分が減り、軽い成分が増えるというふうに比率が変わってくるので、地上では形が変わる雲が生き物だと思われていない。確かに地上の生きものはなかなか形が変わらないが、それは彼らが身体により多く鉱物と金属を含んでいるからだ。雲のボディにもこの成分はあるが、地上の生き物からすれば、ほとんどないと言えるくらい少ない。ミスター山田は地上の人や牛や馬ではないので、雲に同化している自分に鉱物や金属の比率が少ないとは思っておらず、むしろ地上の生き物がほとんど岩や金属と変わらない生き物に見えている。
 地上に生きる生き物は地上の食物を呼吸しているので、鉱物や金属を大量に含むものを一日に何度も体内に取り入れるが、しかし同じ比率で排泄しないので、重たいものが身体に日々蓄積されていく。吸ったと同じくらい吐くという呼吸のリズムがまともにできていないので、地上の生き物は日々重たくなり、地上の土と同じくらい重くなった段階で、ミスター山田が雲に同化しているのと同じように、自分たちも土に同化して、土と違いがなくなる。地上はすべて墓場であるに違いない。少し動くものが地上を歩いてもまたすぐに土に隠れ、また動くものが登場してもすぐに土に埋もれる。土から独立して生きるということはほとんど考えていないらしいので、地上の生き物は大地の絨毯の模様のようなものではないかと思う。

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