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多胎・多子世帯。困難を抱えた親子を支えるために「ショートステイ」の充実を。

乳児暴行死 母親に実刑判決「3つ子の育児 同情できるが…」 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190315/k10011849981000.html

どう考えても1人で3人は無理…。うつ病も発症してるし、不妊治療の末の出産ということで、子育てへの思いも大きくあるはずだ。控訴審で執行猶予となることを強く願う。

そして、母親の実名報道はもうやめてほしい。母親と残された子どもたちのこれからの人生を、メディアは支えてほしい。

で、今回のような多胎世帯の支援について、考えていることを綴りたい。
行政関係者のみなさんが今後施策検討する際に、念頭に置いてもらいたいこと。

自治体マターで進められると思うので(ただし、児相(県)と市区町村の連携は必須)。ぜひ検討をお願いしたい。

朝日新聞の記事に、以下のような記載がある。

三つ子の育児、背負い込んだ母 泣く子を投げ落とした夜:朝日新聞デジタル(有料記事)
https://www.asahi.com/articles/ASM3G462FM3GOBJB008.html

「出産前、子育ての不安を市に相談したが、双子の育児ガイドブックと多胎育児経験者の会のチラシを渡されただけ。三つ子のような多胎育児を想定した対応は手薄に感じられ、不安は解消されなかった。出産後、自宅を訪問した保健師に相談すると、子どもを一時的に預けられる『ファミリーサポートセンター』の利用を勧められたが、事前面談に3人の乳児を連れて行くことが難しく、利用することはなかった。」

出産後、父親が育休時の判断だからファミリーサポートセンター(以下、ファミサポ)の利用を進めたんだろうけど、ここでは「ショートステイ」に確実につないでほしかったとおもう。ファミサポは原則宿泊できないが、ショートステイは最大7日間預かってもらえる。
(事前面談含め)日帰りで3人送迎なんて…、現実的に頼れない。

※参考: https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000104548.pdf
ショートステイについてはp.10、ファミサポについてはp.11に。

いま僕らが福岡市児相、そして西区と進めている「みんなで里親プロジェクト https://local.sosjapan.org 」では、「短期の養育里親」そして「ショートステイ里親(正確には、ショートステイを受け入れる養育里親)」を増やす取り組みをしている。全国のショートステイの受け皿のほとんどが乳児院や児童養護施設なので、里親を増やし、近所の里親家庭で預かることがその趣旨だ。

その中で、ショートステイのニーズがありながら、受け入れが難しいのが「多子世帯」だ。ひとつの里親家庭で(例えそれがファミリーホームであっても)3人以上のきょうだいを預かるのは、なかなか難しい。

でも、今回のような多胎世帯はもちろん、多子世帯が育児に(経済的にも)困難を抱えるケースが少なくない。つまり「多胎・多子世帯を支援する仕組みとして『ショートステイ制度』をブラッシュアップしてほしい」というのが僕の願いだ。

現状で工夫すればすぐに可能な取り組みとしては「乳児院」で受け入れるショートステイについて、「施設側からの送迎付きのショートステイ」にしてほしいということ。それだけで、利用者の心的・物理的ハードルが下がる。今回のケースだって、送迎付きのショートステイとして乳児院が受け入れつつ、家庭支援専門相談員が伴走してくれていたら…と強く感じる。

社会的養護全般に目を向けたとしても、今後乳児院でさらに機能強化した方がよいのは「要支援児童のショートステイ」だ。「措置としての入所」ではなく、「措置前の支援(利用契約/在宅支援)としての入所」。

今後、一時保護後の乳幼児の「措置」は、可能な限り「養育里親」に移行していくだろう。その流れに沿いつつ、「措置前」の特に困難なケース、そして「多胎・多子世帯」をサポートする機能を乳児院で強化していくということだ。

そして。さらに次の展開として検討してほしいのが「(仮称)出張里親」だ。

里親家庭で預かるのではなく、里親が出張(アウトリーチ)し、家庭におじゃまして支援する制度ができるといい。普段過ごしている馴染み深い家庭環境でケアするという意味でも、「多胎・多子世帯」だけでなく、その他の子どもたちにとっても望ましい。そのまま学校にも通えるのだ。

別の言い方をすると(社会的養育ビジョンの中にも記載されている)「親子里親」にもなる。子どもを支えるだけでなく、親も一緒に支える。料理や掃除をはじめ、育児のノウハウを教える立場にもなれる。

この「出張里親」は、子どもにとっても親にとっても、そして多胎・多子世帯にとっても望ましい「短期の里親」制度のひとつになるはずだ。その先に、ゆるやかな「拡大家族」のイメージを重ねれば、さらに豊かな制度の発想も出てくる。

また、全国のショートステイを調査すると特に都内は「協力家庭」を活用しているケースが少なくない(2年前の調査だけど)。協力家庭とは、養育里親ではない一般家庭でもなれる。僕が福岡で経験してきた範囲で言うと、「リクルートの効率性」と要支援児童の「ケアの質の担保」を勘案すると、受け皿は「養育里親」を目指した方がよいとおもう。

一方で、家族のかたちは多様になっている。いま、シェアハウスを運営する友人たちが、養育里親になろうとチャレンジしてくれている。これが本当にうれしい。養育の質を担保しながら、受け入れ家庭の「家族のかたち」が多様になることで、多胎・多子世帯だけでなく、スペシャルニーズを持った子どもたちの受け皿としての可能性がひろがる。

とどのつまり、子育て支援の延長であれば、ファミサポのように蓄積のある相互扶助システム(フランスのパランパルミルもよい)や保育園の一時預かりをさらに充実させた方がよい。その上で社会的養護の延長として、要支援児童および「多胎・多子世帯」の支援を見越し、乳児院と養育里親によるショートステイ制度を充実/ブラッシュアップさせること。そうした困難を抱える「親子を支える制度」設計に取り組んでほしい。

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