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基本無料ゲームが、これだけビジネスになるわけ 〜UUとARPUの話〜

日本では、ここ10年でゲームを遊ぶ人口はものすごく増えたと思います。
中でもここ10年で驚異的な伸びを見せたのは「基本無料」で遊べるゲームですね。これによりゲーム人口も随分拡大したと思います。

近年、ゲームというのも基本的にはビジネスで成り立っています。「基本無料」がなぜここまで普及したかというと儲かるから。ですね。
筆者も毎月すごい売り上げを叩き出す「基本無料」ゲームを運営してた経験があります。
こんなに儲かるならみんなやるよね」と思わざるを得ない数字が毎日並んでいました。

ということで、本記事ではなぜ「基本無料ゲーム」はどのような形のビジネスでどう儲かるのかを述べていきたいと思います。

買い切りゲームのビジネス

まずはこちらの話をする必要があるでしょう。

買い切りゲームとはいわゆる税込み◯◯円などで売っているゲームです。
既存のゲームっていうとこちらを差すことが多いです。
こちらのビジネスは非常にシンプルで、売れれば売れるほど利益になります
例えば3000円のゲームソフトが100万本売れると、3,000×1,000,000=3,000,000,000。30億円の売上になります。
ミリオンソフトになるとこれくらいの数字は叩き出すわけです。ゲームがハイリターンビジネスと呼ばれる由縁ですね。

基本無料ゲームの強さ

一方、基本無料ゲームはダウンロードしてもらったところでその時点で利益は1円も発生しません。ですのでマネタイズを考える必要があります。
※マネタイズ=収益化する手法

買い切りゲームは「買ってもらう」というハードルさえ越えてもらえればもう利益になるわけですのが、
「基本無料」ゲームはダウンロードしてもらう→お金を払ってもらうという二段階のハードルが存在するわけです。

しかし、「無料」は強い。
家庭用ゲームと違い、その最初のハードルはものすごく低く、結果的に買い切りゲームに比べてUUがとても大きくなる傾向があります。このUU数が1つの武器になるのです
※UU=Unique Userの略。特定の期間内にそのコンテンツに触れたユーザーの数を表す指標

さらに「基本無料」ゲームはARPU/ARPPUを伸ばすことができるビジネスを確立したことで大きく売上を伸ばすことに成功しました。
買い切りゲームは今でこそDLC(ダウンロードコンテンツ)がありますが、買ったらそれで終わり。ARPUは基本的に一定なのです。

※ARPU=Average Revenue Per Userの略で、ユーザー1人あたりの払ったお金の額の平均を図る指標。
※ARPPU=Average Revenue Per Paid Userの略。こちらはお金を払った人の額の平均を図る指標。課金単価とも言ったりします。


まとめると、基本無料ゲームはUUとARPUという指標を大きく伸ばしたことから成功したビジネスだと筆者は考えています。

しかし、このARPUを変動するというこのビジネスモデルは「青天井」という負の側面も生み出してしまいました。
そして基本無料のゲームは利益が出ている限り運営を続けなければいけない。というのがこのモデルの1番キツいところです。
そしていくら努力しても、ゲームは飽きるものなので売上も人員も減っていくのが常です。

そして最初のリリースという離陸に失敗するとそのまま堕ちていく…ですので筆者はこのモデルを鳥人間コンテスト型モデルとよく言ってます(笑)

大きく売り上げる基本無料ゲームのパターン

筆者は仕事で、先ほどのUUとARPUをよく使います。
というのも基本無料ゲームはUU×ARPU=売上 と考えられるからです。
どちらかを伸ばせば、売上は伸びる可能性は高くなりますよね
昨今大ヒットした基本無料ゲームにもパターンがあります。
大きく分けて2つと筆者は見ています。

1.高UU数で勝負するゲーム(高UU型)
「無料」という武器を最大限に活かして、圧倒的なユーザー数で勝負するタイプのゲームです。めちゃくちゃダウンロードされて遊ばれているので、そりゃ儲かるよね。というゲームがこちらに当てはまります。
ARPUが100円でも月のUUが3000万人もいれば月の売上は30億円です。
ですので、国民的・世界的人気キャラやIPが使われてるなどのゲームはこのタイプのヒット作が多いです。

2.高ARPUで勝負するゲーム(高ARPU型)
一方こちらは、熱心なファンがたくさんお金を払えるようなマネタイズをして勝負するタイプのゲームになります。
月UUが10万人でもARPUが3万円あれば月の売上は30億円になります。
熱狂的なファンの多いキャラクターやIPのゲームはこちらのタイプが多いと考えています。こちらは超熱心なファンの存在が重要になり、極論を言ってしまうと月1億このゲームにつぎ込む大富豪が1人いれば、それだけでビジネスが成り立つ。可能性もあるわけです

基本無料ゲームのデメリット

そんな経緯で発展していった基本無料ゲームですが、良いことばかりではありません。社会問題的な面もありますが、ここではビジネス的なデメリットについて述べます。

・UUを維持できないと成り立たない
無料なので間口はとても広いのですが、どんなに面白いゲームでもいずれ飽きます。いくら人気のキャラクターを用意しても、そのゲームを遊び続けてもらわない限りビジネスが維持できないのです。

・ARPUの上昇=ユーザーの先鋭化が増長する
ARPUを上昇させるということは、お金をもっと払って満足してもらうサービスを揃えることになります。うまくやらないとPay to Winというマネーゲームになってしまう側面があります。
さらにそんなにゲームに何万ものお金を毎月出せる人というのは世の中にそう多くいませんから、そのゲームについていけなくなり、UU数が減ります。そうなるとたくさんお金を出している人も徐々に遊べなくなっていき、結果的にサービス終了にもなってしまうわけです。
ARPPU上昇施策は卑劣」という資料を読んだこともありますが、私もそう思うものの、売上を計上していかなければ成り立ちませんのでバランスが難しいところです。いたずらにARPPUを上げずにARPUが上がるようなアイデアをゲーム開発者は考えていかなければなりません。

筆者は、ちゃんとお客さんに納得してお金を払ってもらえるようなものを作りたいなと考えています。そういう意味でもっと良いアイデアがあるのではないかと開発者は模索する必要があります。

最後にガチャについて

そしてここ10年のゲームで絶対に話題になるのが「ガチャ」というマネタイズですね。
コンプガチャだったり、確率の問題だったり定期的に社会問題化していますが、その理由はARPPUを大きく底上げする青天井システムだからだったと筆者は思っています。
ガチャがこれほどマネタイズとして広まったのは、
ARPUを上げる最も効果的な施策であり、時流的にもSNSなどの拡散によってPR効果も備えていた(UU数の増加につながった)
のではないかと分析しています。それ以上のアイデアがここ10年で出てこなかった。という面もあるでしょう。

これは主観でしかないのですが
2020年現在、少しこのビジネスモデルに陰りが出ているような気もしています。今以上にお客さんに納得してもらって企業も対価を得られるようなアイデアを日々考えていきたいものですね。

長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。

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