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スピッツ全曲ランキングTop100雑考・コメント①(個人的ランキング91位〜100位編)

先日、単純な思い付きとして、スピッツの曲の中で「個人的に好きな曲ランキングを作ったらどんな結果になるのだろう」と思い、ランキングを作成しました。

この記事では、ランキングで、区切りのいい「100位以上」の曲に絞って、それぞれの曲に関し好きなフレーズ等に言及しながら一言ずつコメントをしていきたいと思います。



100位:トンガリ’95

君は今 誰よりも
とがっている

「スピッツのテーマソング」であることを公言されている曲。バンド名である「Spitz」はドイツ語で「とがっている」という意味を持ちます。
この曲が発表されたのは1995年であり、タイトルの「トンガリ’95」は95年時点でのスピッツのテーマソングである、ということでしょう。

曲自体は、疾走感あふれるロックと、あまりにもシュールで難解な歌詞が特徴です。逐一見ていくときりがないので、ここでは、サビの「とがっている」という表現について言及しようと思います。

スピッツの歌詞において「とがっているもの」は、重要な意味を持つことが多いです。有名な解釈として、「丸いもの」が死を表し、「とがっているもの」が性的なものを表す、というものがあります。

その解釈に基づいて考えると、この曲のサビの歌詞は「君は今誰よりも/俺は今誰よりも とがっている」を連呼しているので、いったい何が「とがっている」んだ!?なんだかとんでもなくやらしい曲なのか!?みたいな思いにもなりますね。

僕は、この曲の「とがっている」は、「性愛や人を好きになることについてについて真摯に向き合っている」、「ちょっとひねくれていて思考が”尖っている”」みたいな、いろいろな要素を内包した表現じゃないかな、なんて思っています。

個人的に、スピッツはすごく爽やかに、優しくいじらしい表現で、一見そうとはわからないように「性欲・パトス」について歌うバンドだと思っています。スピッツには「君」への強い想いをひたむきに綴るような、恋や愛の歌に捉えられる曲がたくさんありますよね。

「性欲」ということばのニュアンスとして、「やらしいこと」みたいなとこが強いですが、いわゆる恋や愛といったものも、元はといえば「知りたい・知ってほしい」「受け入れたい・受け入れてほしい」そして「そんな大切で大好きな人と触れあいたい」…というふうに、性欲が源となっている(と僕は思う)のです。

そんな、性についてひたむきに向き合うスピッツの曲を作っている「俺(=作詞者である草野マサムネ)は今誰よりもとがっている」し、それを聴いている「君は今誰よりもとがっている」。性や愛にひたむきに向き合い、ちょっと歪んでいて尖った思いを持っている俺たちは「とがっている」んだ、そんな俺たちが誰よりも「Spitz」だ!…とかそんなことを歌っているんじゃないかなー。そう思うと、「テーマソング」と称されていることにも説明がつきますしね。

99位:虹を越えて

何もかも 風に砕けて
色になっていく 虹を越えて

なんだか重い曇りの日のような薄暗さ、アンニュイを感じる曲。スピッツの中で「虹」をタイトルに含む曲は僕の知りうる限りでこの「虹を越えて」しかありません(歌詞に虹が出てくる曲は他にいくつかあるけれど)。

一般的な歌詞の世界では、「虹」という言葉からは雨上がりや晴れ間等が連想され、「ここから明るくなっていく兆し」「レインボーの綺麗さ、そこから連想される幸せ」的なニュアンスを含んだ、ポジティブな使われ方をすることが多いですよね。

だから、一番最初にこの曲を聴いた時の驚き、衝撃のようなものは結構大きかったような覚えがあります。イントロといい、間奏のギターの音色といい、「モノクロ」から始まる歌いだしの白黒の歌詞世界といい、どこか物憂げで、心がざわざわします。こういったところで、やっぱりスピッツは一筋縄でいかないなー、みたいな風に強く感じて、大変印象に残っている曲の一つであります。

そして、物憂げで超かっこいい間奏を経た後のラスサビの「なー↑にーもーかーもー」という盛り上がりの部分が、僕はもうとにかく大好きなのです。ガチかっこいいこの曲。

98位:今

いつかは 傷も夢も忘れて
だけど息をしてる それを感じてるよ今

躍動感のあるアコギの音色が印象的な、ロック色強めの2分程度の短めの曲。これまたロック色強めなアルバム「ハヤブサ」のトップバッターを担う曲であります。

この曲が収録されているアルバム「ハヤブサ」の一つ前のアルバム「フェイクファー」を発表した頃のスピッツは、というか作詞者の草野マサムネは「非常に苦しい時期であった」と、苦悩と共に曲を作成し、アルバムを発表したという旨の発言をしています。

長年お世話になっていたプロデューサーの下を離れたこと、また「ロビンソン」「チェリー」をはじめとするヒット曲を続けて発表し続けた後の周囲の期待、プレッシャー等、様々な状況の変化が彼を苦しめたのです(だからこそ、その苦悩の中発表された「フェイクファー」はとてつもない名盤であると僕は感じているのですが…おっと、余談です、失礼しました)。

その苦しい時期を経て、「スピッツ」というバンドとして一皮剥けたというか、方向転換期となったタイミングに発表されたのが、「ハヤブサ」。アルバムを通してしっかりとロック色を感じられる名盤で、草野マサムネのやりたいことがやれているような、そんな印象を感じさせます。

そんなアルバムの一曲目を飾るのがこの曲「今」。

「スピッツには『現実主義なところがあり、永遠や不滅などないと考えている』『何事もいつか終わりが来る、だから尊く美しい』的な、刹那を大切にする視点がある」ということを結構昔から僕は考えており、そういったことは以前の記事でも発信してきました(たぶん)。

先ほど記述したようなバックグラウンドがあるということも踏まえて、実にシンプルな「今」というタイトルを冠するこの曲の「いつかは傷も夢も忘れて だけど息をしてる それを感じてるよ今」というフレーズは、単純にかっこいいのはもちろんのこと、それ以上の奥行きがあるように感じられてならないのです。

ちょっと話が曲本来の魅力から逸れすぎたかもしれません。単純にギターと歌詞がカッコいいのでぜひ聴いてください(投げやり)。

あ、そうそう。こないだサブスク解禁された「優しいスピッツ」でも「今」が演奏されてますよね。そっちのヴァージョンもかっこいいぞ!!

97位:クリスピー

クリスピーはもらった
ちょっとチョコレートの
ちょっとカスタードの
ちょっとチェリーソースのクリスピー

アルバム「Cryspy!」の一曲目を飾る、底抜けに明るいポップソング。

「クリスピー」という言葉からは、「サクサクした」的なニュアンス、軽快さを感じます。曲自体も軽快そのもの。イントロからとにかくハイテンションで聴いてて楽しくなっちゃう曲です。

…ぶっちゃけると、何でこんなに順位が高くなったのかよくわからない曲です。まあ聴いたり歌ったりするとすっごく楽しい曲だし、歌詞を引用したラスサビの部分のとこの盛り上がりとかも可愛らしくて別に嫌いだったりはもちろんしないのですが、歌詞のフレーズとかにそんなに思い入れはないような…笑

スピッツを好きになってから、結構初めの方によく聴いていた曲であることとか、「クリスピーはもらった」を繰り返すフレーズが耳に残るので、そういうところで印象に残ったのかな。なんか必要以上に悪いふうに書きすぎてしまいましたが、いい曲ですよ。ふつうに。

96位:夏が終わる

また一つ夏が終わる 音も立てずに
暑すぎた夏が終わる 音も立てずに
深く潜ってたのに

この曲を発表した頃(アルバム「Crispy!」くらい)のスピッツに多い、ストリングス等の音色が印象的な、ムード全開のゆったりした曲。

最近、夏暑すぎますよね(唐突)。

以前、僕は夏って(すっごい安い表現で申し訳ないが)エモい季節なので、わりかし好きな季節だというふうに思っていました。夏って、特に子供の頃なら夏休みがあることしかり、イベントごとが多いこと然り、なんかワクワクするじゃないですか。

あと僕は夏の夜の雰囲気がとっても好きなのです。暗くなるのが遅かったり、蒸し暑い草の匂いが立ちこめてたり、夏の夜にしかない独特な雰囲気、あるじゃないですか。うまく言語化はできないけれど。

ですが、最近の夏は暑すぎてもうやってられませんね。実際に自分の身に夏が訪れると、あっついし虫は多いしで早く終わらんかなーと、毎年夏が始まると思ってしまいます。

しかし、こんなことを言っておきながら、いざひぐらしが鳴き始め、陽が沈むのが早くなってくると、「あ、今年も夏が終わってしまったんだ…」と、そこはかとない喪失感に包まれるのです。この曲の表現を借りると「深く潜ってたのに」…と言ったところでしょうか。こんなに喪失感を感じる季節は他にありません。

夏が終わってから、なんだかんだ僕は夏が大好きなのだろう、と毎年思います。そして、こんな感傷的になってしまう、夏の終わりが、ひぐらしの鳴き声が、僕は大好きなのです。

話が逸れまくって曲の魅力について何にも喋っていませんが、結局なにが言いたかったかというと、僕は夏が終わるときの、あのえも言われぬ喪失感が大好きで、それをスピッツイズム溢れる表現をたっぷり用いて歌われている「夏が終わる」という曲が、とっても好きなのです。

「日に焼けた鎖骨からこぼれたそのパワーで 変わらずにいられると信じてた」というフレーズが特にお気に入り。

95位:胸に咲いた黄色い花

このまま僕のそばにいてずっと
もう消えないでね
乾いて枯れかかった僕の胸に

初期スピッツの、「君」への切実な想いを表現する軽快で優しい曲。

なんで黄色い花なんでしょうね。いったいなんの花なんでしょうか。聞く人によって、「なんの花か」という捉え方は変わるのではないでしょうか。僕のイメージではタンポポかなー。「タンポポ」は別の曲としてあるけどね。

2番の「君と笑う みんな捨てて 街の音に揉まれながら」というフレーズに続く、「このまま〜…」というサビの歌詞がすごい好き。

スピッツの表現する“愛”や“恋”みたいなニュアンスの強い思いには、「君の存在さえ、君への想いさえあればそれでいい」「他の全てはいらない、失っても構わない」みたいな、すこし破滅的な思考を伴うことが多いです。優しくて、ひたむきで、なんだか弱気で、だけどわがままで、そして悲惨。だからこそ、スピッツが歌う「“君”への想い」は、文字通り、痛いほど、痛切なのであります。

この曲のサビもそう。
「このまま僕のそばにいてずっと もう消えないでね」というシンプルなフレーズの、この痛切さ。切実さ。

僕がスピッツを好きな理由の一つが、この「痛切さ」であることに、もはや疑いはないのです。

94位:裸のままで

そして時はゆっくり流れ出す
二人ここにいる 裸のままで
どんなに遠く離れていたって君を見つめてる
ほら早く!早く!気づいておくれよ

売れることを意識しだした初期のスピッツが、「売れるために作った」と明言しているポップソングのシングルです。珍しくラスサビで「君を愛してる」とまっすぐな表現を用いて、“君”への想いを表現しています。この頃の曲の特徴であるオーケストラサウンドやシンセサウンドもふんだんに使われていることからも、「売れ筋」を意識した曲であることが伺えます。

「売れるために作った」と明言されているだけあるキャッチーさと、スピッツ特有のシュールさを兼ね備えた名曲だというふうに僕は考えております。
二番の歌詞とか、大概ですよね。なにしろ「地下道に響く神の声を麻酔銃片手に追いかけた」だもの。どういうこと…?他にも、「人は誰もが寂しがりやのサルだって今わかったよ」や、「小さなズレさえ許されない掟なのにめぐりあえたよ」など、わかりそうでわからない、ちょっとわかる気がするシュール表現が目白押し(なんか某ラー油みたいな表現になってしまった)。

キャッチーなメロディーに乗せられるこの哲学的でシュールな世界観の歌詞が、他にないスピッツの魅力なのだ!と強く主張しておきます。ひとまず。

あと、すごくベタで申し訳ないんですが、ラスサビの「君をー⤴️あーいしてる」の盛り上がりの部分が、雑にいいなーとずっと思っております。

そんでもって、売れるために作った曲のサビのキラーフレーズが「二人ここにいる 裸のままで」…とすっ裸なのは、もうさすがスピッツ、といった感じがしますね(?)。ムッツリなんですよね、スピッツ。それを感じさせない爽やかさでごまかせていますが。

93位:君が思い出になる前に

君が思い出になる前に もう一度笑ってみせて
冷たい風に吹かれながら 虹のように今日は逃げないで

スピッツ初のオリコンチャート入りを果たすこととなったシングル曲。上記の「裸のままで」と同じく、「売れること」を意識して作った曲であることを明言されている、しっとりとしたバラードの曲です。

「売れ筋」を意識して作られた曲ということもあり、曲の持つメッセージ自体も非常にわかりやすい、別れの曲です。しかし、だからといって単調で薄っぺらいということはまったくなく、随所に「草野マサムネ節」と言えるようなフレーズが散りばめられています。抜粋した「虹のように今日は逃げないで」なんかもそう。「消えないで」とかではなく、「逃げないで」ってのが、スピッツだなあ、って感じがします。

あとお気に入りのフレーズとしては、「はみ出しそうな 君の笑顔を見た」「水の色も風のにおいも変わったね」「君の耳と鼻の形が愛しい」あたり。

「はみ出しそうな笑顔」とか他に聞いたことない表現なんですが、それがどこかスッと馴染むような、そんな表現をさらっと歌い上げるのが上手なバンドだなあ、と感じずにはいられません。

92位:君だけを

君だけを必ず 君だけを描いてる
Woo ずっと

なんだか、意図していないのですが「Crispy!」の曲ばっかりになってしまいました。どうしてでしょうか。これまたストリングスの音が用いられた、ゆったりしたロックバラードです。

メロディ自体はわかりやすく泣きメロ、といった印象を受けるのですが、それだけでは片付けられないような、なんだか一筋縄ではいかない曲です。ところどころ不穏で不気味、不思議な表現が出てきます。「街は夜に包まれ 行きかう人魂の中」「白い音にうずもれ カビ臭い毛布を抱き」「不器用な手で組み立てる 汚れたままのかけらで」と、どこか手放しに「いい曲」と言い切ることのできない不気味さを曲全体に纏っていると感じます。

そんな中でも、「大人になった哀しみを見失いそうで怖い 砕かれていく僕らは」…など、どこかハッとさせられるような表現もあったりして。

サビに関しても、タイトルの「君だけを」につづくフレーズは「愛してる」「想っている」とかではなく、「描いてる ずっと」という、ちょっと捻ったものになっています。なんだか独りよがり、というか…

「虹を越えて」の項目にも書かせてもらっていますが、スピッツの歌詞の「一筋縄ではいかないところ」は、スピッツの大きい魅力ではないかな、と感じております。

91位:謝々!

いつでも優しい君に 謝々!!
大人も子供も無く
涙でごまかしたり
意味もなく抱き合う僕ら
今ここにいる

スピッツ18作目のシングル曲で、【冷たい頬】とともに両A面収録されています。「謝々」は「しぇいしぇい」と読むのが公式の読み方ですが、本来の中国語とは表記も発音も正しくはないです。中国語としては「謝謝」・読み方も「シエシエ」であり、どっちも間違っています。たぶんワザとだと思うけど、あんまり知りません。すまない。曲自体は、とてもにぎやかで楽し気な曲、という印象。また、「スピカ」と同じようにですます調で綴られる優しい歌詞が特徴的です。

この曲も楽しそうな曲調に反して、なかなか哲学的なフレーズが魅力。
「終わることなどないのだと強く思い込んでれば 誰かのせいにしなくてもどうにかやっていけます」「生まれるためにあるのです じかに触れるような 新しいひとつひとつへと 何もかも悲しいほどに」…という、普段用いられないこのですます調で綴られた、あまりにもふっかい表現!!(あっさい感想)

そしてこの曲の最後、「くす玉が割れて 笑い声の中 君を見ている」という盛り上がりの部分。この終わり方がとっても好きです。

「謝々」という珍しい表現で感謝を伝えるかわいらしさ、曲調自体の楽し気な感じ等のポップさもありながら、この曲もまた一筋縄ではいかない哲学的表現にあふれていて、スピッツらしさ全開のとっても大好きな曲です。

おわりに

なんか超長くなってしまった。このペースで書いていくと、1位の話をするまでどれだけの文を書くことになるのかと考えて、少しゾッとしてしまいました。次回から少しずつ文の量を減らすかもしれません(たぶん無理)。
それでは、またそのうち。




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