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「愛」とは何か。 『存在の耐えられない軽さ』



「永劫回帰」

これはニーチェの考え方で、

僕らが生まれ、生き、死ぬ。この始めから終わりとそのプロセスは永遠にループし続けるというもの。

この考えのもとに仮説を立てると、

僕らの人生において、

僕らの一つひとつの動きには

とても重く、耐えがたい責任がのしかかってくると考えることができないだろうか?


「重さ と 軽さ」

でも、僕らの人生は一度きりでやり直すことなんてできない。

あらかじめ知らされていないし、練習なしの本番を生きていくことになる。

そしてそれがループし、変えられず、回り続けるのなら、

Einmal ist keinmal = 一度は数のうちに入らない」(ドイツのことわざ)

と考えれば、

この一度きりの人生は、一度も起こらなかった人生で

在って無いようなもの、つまり無価値なものだ。

そうなると僕たちの人生は、

とてつもなく軽いものになってしまうことになる。


「二つの両極、肯定 ー 否定」

視点を付け加えて、哲学者パルミニデースの考え方。

世界は二つの肯定的なものと否定的なもの両極のもので二分されている。

細かさ ー 粗さ、暖かさ ー 寒さ、光 ー 闇、そして、 重さ ー 軽さ。

前者が肯定的で後者は否定的とのこと。

そしてたどり着く、一つの疑問。


【だが、重さは本当に恐ろしいことで、軽さは素晴らしいことであろうか?】



みなさんごきげんいかがでしょうか?
冒頭からなんのことやら長々とすいません、美並です。
おうちで過ごさなきゃのこの期間はたくさんのエンタメに触れる絶好の機会ですね。
映像作品や音楽も素晴らしいですが、小説の良さにも改めて気付きました。
時間がある人が大半だと思うので、自分がとっても好きな、気取った小説があるので興味のある人は手にとってみてほしいです。

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ミラン・クンデラ著『存在の耐えられない軽さ』です。

舞台はロシアに占領されてどよーんと暗い時代のチェコです。

物語の軸は、権威ある医者でサイコ気味なプレイボーイのトマーシュと

彼と良くも悪くも?(結末の受け取り方は人それぞれかもしれない)添い遂げる

片田舎のウェイトレスだった、純粋な少女、テレザの愛の変遷です。

そしてそこに度々現れるトマーシュの同志のような愛人、サビナについても触れられています。


筆者は彼らの一部始終を解説しながら、冒頭の

【だが、重さは本当に恐ろしいことで、軽さは素晴らしいことであろうか?】

という疑問を哲学的に検証していきます。

この検証では神視点で登場人物の行動や考えを細く描き、淡々と進んでいくように思いました。

小説の個性とも言える、筆者ならではの比喩とか情景描写とかは余り無かったように思われました。


ただ、、、

心理描写がえげつないです。

一人の人間の意識下層のもっと深い部分の無意識下層まで踏み込んで描写しています。

読んでいると、一人ひとりの人物の経験を直接、脳みそに注入されるような感覚に陥ります。

そしてその膨大で漠然としたイメージに、自分のいろいろな心の中の概念を破壊されます。


ここで最も恐ろしかったのが、その文章が

いかにも共感させるかのように

読み手の心に近づいてくることです。

自分の感想としては、「愛とは?」という難問にあらゆる角度から、または四次元的な方向から

論証し哲学する、これ以上無い愛についてのケーススタディーでした。


そして、この小説にはたくさんの名言が散りばめられているなと感じました。

最も考えさせれられた一節を紹介したいなと思います。

「人間の時間は直線に沿って前へと走るのである。これが人間が幸福になれない理由である。そう、幸福とは繰り返しの憧れである」

んんー。。。確かに人間はこの矛盾の中でもがいているんだなー。。。

自分の直線を進み、幸福の道と平行線を辿ってしまう。

なんかすごく悲しいぞ!!頑張れ人間!!


そんなこんなで、全てを読み終えた時の絶望に似た多幸感は本当に圧巻でした。

そしてそして、自分が伝えたいのは

これを見て興味湧いた人とか、特に大学生とかには絶対読んでほしいなって思います。

まずは自分の感性でありのままを読んで、「は?w いみがわからんw」ってなって、

めちゃくちゃに悩んで、自分の人生と照らし合わせながら、また何回も読み直して欲しいです。

ミスリードした分だけ、自分にとって何かグロくて美しい感情が帰ってくる一冊だと思います。

自分は大学時代の授業の自由課題のレポートで「なんか面白そう」ってだけでこの『存在の耐えられない軽さ』を手にとりました。

振り返ってみると本当にいい出会いでしたね〜。たぶん趣のある大学時代でした。

大学生とかって悩むのがお仕事だと思っているので、がんがん刺激を受けて欲しいです!


というのも、、、(いっぱい書いてすみません!!)

冒頭にあるような「永劫回帰」だの「重さ、軽さ」などの哲学的な視点が

最終的に向かっている方向は「人間の人生」についてです。

でも人生を哲学するとなると、大きすぎて、漠然としすぎて、

捉え所が無いじゃないですか。

だから筆者はこの物語で、

恋愛を人生の象徴、シンボルとして最大限分かりやすく書いていったんではないだろうかと、自分は思うわけです。

だからこそ、最初は「愛」をテーマに読むのをオススメしま〜す。

余談ですが、この小説は映画化もされていているらしいので近々観てみようと思います。

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そして読んだ人、感想語り合ってみたいです!!

近くにいる人で読みたい人、貸します!笑



おわり