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サステナブルな未来を担う子どもたちを育てる「ESD教育」とは?

こんにちは。
ラバブルマーケティングループでSDGsを担当している相澤です。

1.はじめに

学校が冬休みに入り、お子さんとの時間が増える時期ですね。
先日子どもと、東京お台場にある「日本科学未来館」に行ってきました。

いま世界で起きていることを科学の視点から理解し、それらをどう未来に反映していくかを考える場として、最新のテクノロジーや地球環境、宇宙の探検など、さまざまな科学技術を体験することができます。

「未来逆算思考」という展示では、50年後に暮らす子孫たちに、どのような地球を贈ることができるのか、バックキャスティングをゲーム感覚で体感することができます。

時の流れを表した大きなボードに、自分の名前を入れた未来へのルートをインプットして、50年後までに無事に届けることができるのか、その動きを追っていくのですが、これが楽しかったようで何度も繰り返しチャレンジしていました。

小学生の息子は「35年後には魚が獲れなくなってしまった。お寿司が食べられなくなるのは困る。」と言っており、今起きている課題を理解したようです。

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私自身も持続可能な開発と共に、子どもたちへの教育も非常に重要なことだと改めて感じました。

そこで、今回は「持続可能な開発のための教育」=ESD教育(Education for Sustainable Development)について調べてみることにしました。

2.ESD教育とは?

これからの社会をつくる子どもたちに、現代の課題や持続可能な考え方を、学校でも教えていく取り組みの一つがESD教育で、「SDGs17の全ての目標実現の鍵」とも言われています。

文部科学省のサイトには以下のように説明されています。

ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。
今、世界には気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大等人類の開発活動に起因する様々な問題があります。

ESDとは、これらの現代社会の問題を自らの問題として主体的に捉え、人類が将来の世代にわたり恵み豊かな生活を確保できるよう、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことで、問題の解決につながる新たな価値観や行動等の変容をもたらし、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動です。

つまり、ESDは持続可能な社会の創り手を育む教育です。

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出典:文部科学省「持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)」

そもそも「持続可能な社会づくり」に関わる課題を見出すためには、それを課題だと捉える6つの要素(構成概念)を明確にする必要があります。

「持続可能な社会づくり」の構成概念
 1. 多様性(いろいろある)
 2. 相互性(関わりあっている)
 3. 有限性(限りがある)
 4. 公平性(一人一人大切に)
 5. 連携性(力合わせて)
 6. 責任制(責任を持って)

そして、それらを解決するために必要な7つの能力や態度を身に付け、ふさわしい資質や価値観を養う必要があります。

「ESDの視点に立った学習指導で重視する能力・態度」
 1. 批判的に考える力
 2. 未来像を予測して計画を立てる力
 3. 多面的・総合的に考える力
 4. コミュニケーションを行う力
 5. 他者と協力する力
 6. つながりを尊重する態度
 7. 進んで参加する態度

出典:国立教育政策研究所「学校における持続可能な発展のための教育(ESD)に関する研究〔最終報告書〕」

上記の構成概念への理解と解決能力や態度を育成するために、学校教育にはどのように落とし込まれているのでしょうか?

3.ESD実践のために学校が行っていること

2017年3月に幼稚園教育要領、小・中学校の学習指導要領に「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられ、2018年3月に高等学校の学習指導要領に公示されました。

具体的には、以下の資質・能力の三つの柱で整理されています。
①どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか「学びに向かう力、人間性等」
②何を理解しているか、何ができるか「知識及び技能」
③理解していること・できることをどう使うか「思考力、判断力、表現力等」

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出典:文部科学省国際統括官付、日本ユネスコ国内委員会「持続可能な開発のための教育(ESD)推進の手引」

これを各学校では、学習のベースとなる能力に加え、問題発見や課題解決能力など、現代の諸課題に対応できる資質や能力育成のために、教科横断的な学習の充実や、主体的・対話的な学びの実現に向けた授業改善をすることが求められました。

そのためには、生徒や学校、地域の実態の把握や、カリキュラムの内容や時間配分、人的・物質的リソースの確保など、学習効果の最大化を図るためのカリキュラム・マネジメントが必要になります。

そして、地域と連携・協働しながら学校教育を実現する「社会に開かれた教育課程」について考えています。

4.「ESD大賞」受賞校の取り組み

では、具体的にどのような取り組みが行われているのでしょうか?

全国の小・中学校、高等学校などを対象に、優れたESDを実践した学校に贈られる「ESD大賞」を受賞した2つの学校をご紹介します。

①岡山県岡山市立京山中学校

2014年に新設された、最も優れた学校に贈られる『文部科学大臣賞』を受賞しています。

こちらの学校では、多様な取り組みの中で、先述した「6つの構成概念」や「7つの能力・態度」を踏まえ、「ESDカレンダー」を図式化しています。

具体的な実践では、1年生では地域フィールドワーク等で探究活動の基礎を学び、後半から2年生にかけては、広島研修で平和学習に取り組み、2年生後半では、人権や国際理解、環境の学習を実践、3年生では、熊本県水俣市でフィールドワークを行いました。
総まとめとして、個人テーマを設定して探究活動を行い、地域や未来への提案を発信し、3年間を通して、自ら考え、行動し、発信することで、資質の育成を行っています。

成果として、生徒の社会貢献意識が高まり、地域のボランティア活動に積極的に取り組むようになりました。

②愛知県岡崎市立男川小学校

こちらの学校は第5回ESD大賞で「小学校賞」を受賞しています。

地域に生息する昆虫を観察することで、理科の探求学習に取り組んでいます。生物多様性に気づき、地球環境の生態系を支える必要性を実感することなどをねらいとしています。

例えば、チョウの孵化(ふか)や羽化する瞬間を観察したり、昆虫の標本を製作したりするなど、アクティブな体験を行いました。

成果として、「虫が嫌い」という児童が「虫が好き」に変わっただけでなく、チョウから、昆虫の生態の深い部分にまで知的好奇心が発展したとのこと。また、カマキリがバッタを食べる、捕食の様子を目の当たりにした際は、両者の立場を理解しようとするモラルジレンマにぶつかり、道徳とも関連づけられました。

参考:第5回ESD大賞受賞校実践集

5.さいごに

2017年以降、学校側は大きな対応変更が求められていたことや、ESD大賞受賞校の実践を中心に多様な取り組みを知ることができたと同時に、一保護者として学校理解への必要性も感じました。

知・徳・体にわたる「生きる力」を児童生徒に育むために「何のために学ぶのか」という各教科等を学ぶ意義を共有しながら、授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していくことができるようにする

学習指導要領に記載された上記の通り、教育の目的やゴールが明確化されたことは「持続可能な社会づくり」にとって大きな意義を持ちます。

男川小学校の取り組みのように、生き物に対して好き・嫌いだけでなく、生物を学ぶ目的を知ることで教科に対する見方が変わってくるでしょうし、子どもたちが学んだ知識を「持続可能な社会づくり」に生かすことにつながるのではと思いました。

サステナブルな未来を担う子どもたちには、未来へ希望を感じながら、自分たちができることを行い、また次の世代にバトンをつなげていってもらいたいと思います。

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