『BGM』をつくる旅──東北フィールドワークレポート〈3〉
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『BGM』をつくる旅──東北フィールドワークレポート〈3〉

『BGM』制作に向けて2017年5月に行われたロロ主宰・三浦とミュージシャン・江本の旅を記録する東北フィールドワークレポート、第3弾は女川〜仙台編。肝心の制作シーンに一切立ち会えず、ほぼ旅行記と化したレポート。(文&写真・もてスリム)

*第1弾はこちら/第2弾はこちら

3日目は三浦さんの育った街を訪ねることになっていた。三浦さんは女川で生まれ、小学三年生まで女川で育ったのち仙台へ引っ越したのだという。石巻のホテルを出て女川へ向けて車を走らせると、30分ほどで到着してしまう。

最初の目的地はかつて三浦さんが通っていたという女川第一小学校だ。女川駅からほど近い場所にあるこの小学校は2013年に閉校してしまっており、校舎こそ残されてはいるが敷地内には仮設住宅が数多く建てられており、いまでもここで暮らしている人はいるのだという。

小学校をあとにして、三浦さんがかつて住んでいた団地に向かう。いくつかの棟からなるこの団地は斜面に建てられていて、各棟の前に駐車場が設けられていたり、隅に公園がつくられていたりする。団地から海の方を眺めると、いまなお更地になっている土地の様子が見える。「ここに蛾が住み着いててさ、怖いから一週間くらいずっと慎重に階段を上ってたんだよね」とかつて住んでいた団地を眺めながら三浦さんが話している。団地の前には草むらが広がっていて、「こういうスペースが団地っぽいんだよなあ」と三浦さんが続ける。「ここで初めて会う男の子と仲良くなって、うち遊びにおいでよって言われてその子の部屋に行ったんだよ。でも、俺はその棟の方で遊んだことないから未知の世界って感じで」。次々と三浦さんの思い出は蘇る。

東日本大震災に伴う津波で流されてしまった女川駅は2015年に再建されており、駅前には「シーパルピア女川」と名付けられた商店街も整備されている。建物はどれも真新しく、アウトレットモールやショッピングモールのような雰囲気さえ醸し出している。「女川駅ってものすごくコンセプチュアルにつくられててさ」と三浦さんは語る。「駅から海側は新しい建物がたくさんつくられていて、駅を挟んで山側にはお墓がつくられてるんだよ。未来と過去を繋ぐような場所として駅があるんだよね」。階段をのぼって駅の上にあがると、海側も山側も見渡せるようになっていて、確かに山側を見ると線路を少し超えたところの斜面にたくさんの墓石が並んでいる。「でも、こうやってコンセプチュアルに街が作られてくことに複雑な気持ちもあるんだけど……」

実はぼくがこの日の夕方に一度東京へ戻らねばならず、移動するためにみんなで仙台駅へ向かわねばならなかった。仙台ではちょうど青葉まつりの最中で、駅前の商店街では仙台すずめ踊りが行われている。多くの人が商店街を行き交い、街は活気に溢れている。ぼくは東京に戻らねばならないが、三浦さんと江本さんは昨晩ほとんど眠れなかったのでサウナに向かうらしい。仙台駅からほど近い場所にあるカプセルホテルキュアは東北随一のロウリュが売りのサウナだそうだ。二人はサウナを出たら山形に向かう。江本さんの友達の原田さん(彼はHi,how are you?というバンドのメンバーでもある)が山形に住んでいて、家に泊めてくれることになっていた。後ろ髪を引かれながら、ぼくは仙台をあとにする。

そういうわけなので、このフィールドワークのレポートは一時中断ということになるのだが、ここで困ったことが起きた。サウナに入った二人は万全の状態になってしまったのか、どんどん作品をつくり始めてしまったのだ。制作の現場に立ち会ってフィールドワークの様子をレポートするはずのぼくは、完全に制作のシーンに立ち会い損ねてしまったというわけだ。

仙台を出た二人は車に乗って山形へ向かった。ふたりは道中立ち寄ったパーキングエリアで曲をつくり、さらには山形へ移動してからも原田さんと合流するまでの空き時間でもう1曲つくったらしい。三浦さんから届いた動画を開くと、暗闇の中ライトに照らされた江本さんがギターを弾きながら歌っている。聞けば江本さんの提案で車のライトを照明にしたのだという。撮影場所はパーキングエリア。三浦さんから送られた歌詞を見ると、いわきを出発して女川へ向かうドライブについて歌われているようだ。江本さんが演奏する前には三浦さんが朗読を披露していたのだという。山形では旧県庁舎として知られる文翔館という建物の前で曲をつくっていたと三浦さんが教えてくれた。その曲は江本さんの主張する「海に着く前のことを歌った曲は大体名曲説」にならってつくられた曲らしいが、動画は撮れなかったみたいだ。どれも三浦さんから聞いた話なので、この段落はすべて伝聞調なのである。

夜、ふとInstagramを見ると江本さんがインスタライブの配信を始めている(江本さんはマンホールの写真しかあげないが、ときおりインスタライブで何かを配信し始めたりするのだ)。山形で何かしているのだろうかと思って江本さんのアイコンをタップすると、そこには江本さんと原田さんの顔が表示されているのだった。どうやら原田さんの家で夜更かししながらダラダラ喋っているらしい。半日前まで一緒にいた人の姿をiPhone越しにライブストリーミングで眺めるというのはなかなか不思議な気分だ。しかもさらに半日後にはいまiPhoneの向こうにいる二人と直接会っているはずなのだから。二人のインスタライブはなかなか終わらず、見ているうちに飽きてしまって、そっとInstagramを閉じた。

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もてスリム|MOTESLIM
1989年東京生まれ。編集者/ライター。
おとめ座。よく食べ、よく歩く。
@moteslim
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