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Viktor Blom:The Man, The Myth, The Legend by Phil Galfond

オンラインポーカーの関係者なら「Isildur1」という名を目にしただけで強い感情的な反応を引き起こさずにはいられないだろう。彼はまず、オンラインポーカー史上もっとも特筆されるべき大勝と大敗を経験したことで名を知られることになった。話をそこから始めよう。

<ミステリー>

割と小額のデポジットから始めた(と思う)Isildur1は、ハイステークスの最高額でベスト中のベストを相手にしてあっという間に600万ドルの勝ちを積み上げた。この金の大半は他ならぬTomDwan相手に$300/$600、$500/$1000のNLHEで作ったものだ。

さらにIsildur1は、オンラインで誰も見たことがなかった挑戦の道へと自ら踏み込んだ。私の記憶に焼きついているのは彼がDwan、Ivey、Antoniusを同時に相手して$500/$1000を9テーブルプレイしていた姿だ。Isilはアップダウンを繰り返しつつ、観戦者たちに驚異のアクションを繰り出して見せていった。オンラインのビッグゲームを観戦する1ファンのような気持ちになったのは私にとって初めてのことで、最前列の座席にしがみついてスペクタク
ルを見守るのを待ちきれなかったものだ。

彼はHUのNLHEに集中していたが、いったんBRを築き上げるや当時の彼がまだ精通していなかったゲームであるPLOに相手を求め始めた。観戦者たちにとって残念なことに(いまだ正体不明のままだった)Isildur1と彼のBRは、主としてPLO最強プレイヤーの1人であるBrianHastingsとの長い1セッションで崩れ落ちてしまった。

翌年にかけて、彼は再びBRをアップダウンさせ続け、ハイステークスのオンラインゲームで彼以前の誰よりも多く(というか絶後の)アクションを繰り出した。私のキャリア最大の勝利は、$300/600、$500/$1000のPLOテーブルでの彼とのHUで得たものだ。まる一日続いたかのような長さに感じられた戦いの後、私は$160万を勝ち取った。

話を2010年末へと進めよう。PokerStarsはIsildur1とのプロ契約を発表し、彼の身元を明かすことを約束した。それからまもなく、私たちはViktorBlomという名を知り、若くハンサムなスウェーデン人が脅しつけるかのような視線でゲームを凝視するアバターを目にすることになったのだ。

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以来私はViktorと多くのハンドをプレイした。それは私のキャリア中の他の誰とよりも多いものだった(なにせ6-8テーブルのHUだったのだ)。

<どのくらい上手いか>

Viktorはオンラインで最も話題にのぼるプレイヤーだけに、私はよく彼について尋ねられることがある。彼のようなステークスでプレイせず、彼の信じられないほどアグレッシブなプレイスタイルと激しいアップダウンを目にするだけの人には、Viktorというプレイヤーが実際のところどのくらい上手いのかを語ることは難しいだろう。多分私こそが、この答えをある程度はっきりさせる資格がある者だと思う。

フルティルトで初めて彼とPLOをプレイしたときは下手だった。もちろん彼は悪いポーカープレイヤーではなくNLHEでは既に世界クラスだったのだが、全く異なるゲームを当時始めたばかりで、しかも最高ステークスに飛び込んで来たのだ。弱いペア+ドロー、弱い2ペア、その他NLからの合流組がミスプレイする類いのあらゆるハンドを過剰評価していた。私は比較的タイトにプレイして、彼をドミネイトしているハンドとドローで大金を得ることが出来た。

ただし、多くの過ちを犯しているさなかにも、彼のポーカーインテリジェンスが垣間見える瞬間が数多あった。ここで何を言わんとしているのかいわく説明しがたいのだが、あるいは説明なんてできないのかも知れないが、とにかく私を信じて欲しい。信じがたく聡明な人物とプレイしてるのだ、ということが感じ取れたのだ。

その後ブラックフライデーがあって、私はオンラインをプレイせずに何ヶ月も過ごし、その結果、Viktorとも何ヶ月もの間プレイしなかった。

昨年末に2人がStarsでプレイしはじめて以来、私はこんな短時間に彼のPLOゲームが長足の進化を遂げていたことに驚嘆させられたものだった。私がかつて見覚えていたリークのほとんどを修正していただけでなく新しいスタイルでプレイしてさえいたので、自分自身のゲームのあり方についてかなり真剣に考え込まざるを得なくなったものだった。おかげで私は、彼とプレイしているだけで多くを学ぶことが出来たし、自分のゲームを進歩させることができた。依然として私のほうにかなり分があり、彼のゲームは完璧ではないと思ってはいたが、この状態は長く続かないだろうと思われた。

実際、私は正しかった。

2012年の初頭までにViktorは非常に優れたPLOプレイヤーになりおおせただけでなく、これ以上無いくらいにタフな対戦相手へと成長を遂げてしまった。

いまやViktorは、私が自分に分があるかどうか、手がかり全くなしでプレイしなければならない3人の相手のうちの1人である。ちなみに後の2人が誰なのかについては私の胸の内にしまっておくということにさせて欲しい。

<人となり>

この夏ラスベガスでとうとうViktorに会うことが出来た。携番を交換してメールで少し話したのだが、それがきっかけで親しくなることができた。2人が最初に会ったのはポーカールームでだったのだが、シリーズの間に彼と数回親しくする機会を得ていた。

まず以て印象的だったのは彼の背の高さだった。次に私の中でのIsilのイメージ(睨み付けてくる、アグレッシブで、怖い奴)が粉々に砕け散った。出会った瞬間から、Viktorは幸せな感じ、親切そうな雰囲気を発散させていた。彼は本当にいい奴、疑いなく好人物、というタイプの人間だ。彼ののんきな物腰を前にしたら微笑まずにはいられなくなるし、楽しいことだけをしてずっと生きていくような奴に見える。

ほんの何度か親しく接しただけだったが、私たちは一緒にバンクーバーに帰れないことにがっかりしたものだった。機会さえあれば、彼は間違いなくポーカーの世界での私の親友の1人になるに違いないと思った。

一緒に過ごす機会を経るうちに、彼の思考プロセスとゲームへのアプローチを学ぶことが出来た。面白い話がある。彼はデータベースやHUDのようなツールを一切使わないし、教材ビデオも全く見ない。実際彼は、オンラインプロが使っているようなリソースを一切利用したことがない。

私の胸に兆した最大のものは、Viktorのゲームへの純粋な愛情に対する感銘だ。話した印象では、彼は本当にお金のことは気にしていない。「金のことは気にしていない」と口にする人はいるが実際には気にしているものだ。彼もまたそうなのかどうか分からないが、彼がプレイするのはプレイするのが楽しいからだし、彼は競技をエンジョイしている。

彼がWSOPイベントで$50Kの8ゲームをプレイした記事に触れたことがあるなら、私の言いたいことが分かるだろう。そのイベントには彼の知らないゲームが6つも含まれていた。彼はそういうビックイベントでプレイしていること自体にエキサイトしていたし、それと、やりながら急いでゲームを学ぶべく試みることにも興奮していた。まるでお父さんに$500の1/4を貰ったばかりのアーケードの中の子供みたいだった。

彼がポーカーをプレイすることから得ている喜びの大きさに、私は激しい嫉妬を感じたものだ。

この夏、Viktorと3ハンドの$100/$200PLOをプレイした友達がその夜について面白い話をしてくれた。Viktorはリバーでミディアムポットに対してビックベットされ、ただちに降りたという。そしてディーラーがチップをかき集めて相手に渡そうとしている間に、困惑顔をしてマックしたハンドに手を伸ばしたという。伏せられたままでカードをちらっと見た彼は「なんでいっつもこれをやっちゃうのかな」と言ったそうだ。

リバーでボードペアが出たことに気づかずにフルハウスを降りていたのだ。オンラインでの彼の信じられないスピードでのプレイを見ていれば、こんなことが初めてではないと聞いても驚きはしない。

ある夜の食事の席でViktorが説明してくれたところでは、第1感に疑問を差し挟まないようにするために、即座に決断を下すようにしているのだそうだ。私の見るところ、時折ナッツを降りてしまうのはそのためには仕方がない代償というものだろう。

普通はハンドを間違えたりするとうろたえてしまうものだ。プロならばポーカーのスウィングに直面することは避けられない。なぜならそれらはコントロールの及ばないものだからだ。

ひどいミスプレイをすれば(例えばモンスターをフォールドする、などの)金銭的にも感情的にもダメージを受けることになる。少なくとも私はそうだし、私の知るほとんどのプレイヤーもそうだ。しかし、Viktorだけは違う。

何故か?そういうフォールドをするのは金を投げ捨てるのと全く同じことなのだが、Viktorに言わせれば(同じ台詞を言おうとする他の誰より真実味のある感じで)「たかが金だよ」ということなのである。 

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~強さと弱さ~

Viktorのゲームへの情熱はプレイヤーとしての最大の強みだ。彼によれば、世界最高のどんなプレイヤーより自分はプレイが好きだという。自分自身はどうかと問いかけてみる気があるならば、「本っ当に」真剣に問いかけてみるといい。

以前にも言ったことだが、タフな相手とプレイするのは上達のための最高の道だ。Viktorは間違いなく対戦相手それぞれから学んでおり、それで彼のゲームの進歩の速さが説明できる。特にほとんどのプロが使用しているツールを全く使っていないという点を考えるとそうだ。

ゲームに伴うお金のことを考え始めてしまうとベストなプレイが妨げられてしまうものだ。ポーカーに対して純粋に仕事として向き合っている人は、経済的な理由から、ベストの中のベストにまで登り詰めるにはとても苦労することになるだろう(いい金は稼げるかもしれないが)。「偉大」というところにまでなるためには、ゲームを愛さなければいけないし、プレイを楽しまなければいけない。Viktorはこれらを満たしているし、お釣りがくるほどだ。

彼の強みはまた、最大の弱みでもある。お金のことを気にしないせいで、彼はプレイしているゲームについて注意不足なのだ。彼が選ぶ対戦相手について言うとするならば、ただもう、1つのことに尽きる。タフなゲームでしかプレイしないということは、当然、分散や破滅のリスクを急上昇させてしまうということだ。それにそもそも、彼がアンダードックな、分のない相手かもしれないではないか。

さらに加えて、彼がプレイしている正真正銘「異なる」ゲームの話をしよう。彼は最初の$600万のBRをゲームの仕方をちゃんと身につける前にPLOをプレイして失った。ちょうどこの夏彼は、Omaha8とローボールの最高ステークスでプレイしている。どちらも彼がこの夏に初めてプレイしたゲームで、それなのに彼は最高ステークスでスペシャリストを相手として選んでいる。これらのゲームで彼に分がなく、破産するのはほぼ確実なことだ。まあ、そんなことは彼とて先刻承知なのかも知れないが。多分、ただゲームを楽しみ過ぎているのだろう。

Viktorには、PLOの6MAXでもまだするべきことがある。フロップ後のプレイはとても素晴らしいものだが、私見では、ビックポットをプレイすることが好きな余りマージナルハンドでプリフロップでポットに金を投じ過ぎることがある。6ハンドのゲームでは彼のルースさを罰する良いハンドを誰かが持っている可能性がはるかに高いし、HUでならば多くの弱いハンドをプレイすることも出来るが、マルチウェイになる6ハンドではそうはいかない。

その上、Viktorは大敗を喫した後しばしばはっきりとCゲームをしてしまう(クオリティが落ちたプレイをする)。6MAXで(あるいはHUでさえ)ティルトしているとき、私が思うに彼のゲーム結果は相当に悪くなっている。Viktorがストップロス戦略を採用すれば、彼のゲーム結果は著しく改善されることだろう。

自分が最も頻繁に対戦する相手の1人を上達させる助けになる可能性があるこのような文章を私が公開するのは何故なのか、いぶかしむ向きもあることだろう。しかしこれらは全て、以前にViktorに話してあることだし、彼も既に自分で理解していることばかりだ。彼に対して正直に、正しいと思うこと、或いは間違っていると思うことを話すのは楽しいと伝えたことがある。実際私たちは非常にオープンにHUでの一連の対戦を通じて互いが互いに対して適応してきたやり方について話し合ったものだ。

 
<伝説>

ハイステークスでの私の対戦相手の大半は、私よりもテーブルを離れて研究する時間を長く取っている(それでもViktorよりは私のほうがまだ多いが)。どんな理由があろうとも、私にはそういう勉強のやり方は合わないのだ。私がいまだに対戦相手たちとの競争力を維持できている訳は、幸運にも何か天与のスキルがあって、その天分に恵まれているおかげなのである。それを「無形の天分」「生まれ付いてのポーカーの才能」「ポーカーIQ」等とどう呼んでも構わないが、何であれ他人よりはポーカーを簡単に感じられるというのはとても幸運なことだ。

Viktorは、その私よりも明らかにもっと深い天分に恵まれていると思う。

彼には感心させられる。ゲームだけでなく、誰にも負けない活力、ポーカーへの愛情、すがすがしくて幸福な気質など、どのレベルでもだ。率直に言って、私は正統のViktorBlomファンなのだ。ポーカーの勝ち組で、しかも最もタフで最高レートのゲームを「楽しみ」のためにプレイする者なんて、ただリスペクトするしかない。

さて、ポーカーでのViktorの将来はどんなものになるだろうか?彼の才能、恐れ知らずの気質、ゲームを純粋に楽しむ姿勢などからすれば、私たちはこの時代で最高のポーカー伝説の幕開けを目撃しつつあるのだろうか?

個人的には、Viktorにはどんな種類のポーカーであろうと彼がフォーカスしたゲームでなら(どんな高額なゲームであろうとも間違いなく)第一人者になれるだけの能力があると信じている。ただし、メジャーレベルでの持続的な成功を求めるならば訓練に取り組む必要はある。

そこで、問題は以下のようなものとなる。彼は、トップに登り詰めてその地位を維持するための道筋に待ち構えているリークを塞ぐことができるだろうか?彼は、ローステークスで習熟するまで慣れないゲームでの勝負を避けることが出来るだろうか?彼は、PLOの6MAXでプレイをもっとタイトに出来るだろうか?彼は、BR管理をある程度身につけて一度にBR全額を賭けない姿勢を保てるようになるだろうか?


答えは「もちろん出来る」である。ただ・・・、そんなのあんま面白そうじゃないけどね。


元記事︰http://www.philgalfond.com/viktor-blom-the-man-the-myth-the-legend/


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