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レクリエーション空間は有無よりもアクセシビリティが重要

case | 事例

都市計画や開発事業において、公園や遊び場などのレクリエーション空間については、アクセシビリティの基準などは予め定められている。しかしながら、これらの空間が実際にコミュニティによって利用され、機能しているかどうかは、「心理的なアクセシビリティ(perceived accessibility)」に依存しているとWorld Leisure Journal誌に掲載された研究でこの概念が掘り下げられている。研究は、アクセシビリティとは単に空間が物理的に利用可能かどうかだけでなく、人々がその空間を利用できることをどのように感知するかに関係していることを指摘している。この感知は、安全性、社会的交流、地域社会の関与などの要因によって影響を受ける可能性がある。例えば、公園の計画において、複数の住宅地から5キロ以内の場所に建設することを検討するかもしれないが、その公園までの経路で危険な道路を通らなければならない場合、第三者との安全でない接触を伴う場合などが発生するのであれば、計画上はアクセス可能であっても、実際には予想ほど頻繁には利用されない。このような計画は往々にして計画の段階で一般市民の関与が限られる場合に生じる。

研究はアリゾナ州フェニックスの低所得者層コミュニティでの調査に基づいているが、参加型マッピングインタビューという手法を用い、参加者がレクリエーション空間とそのアクセシビリティに関する具体的な詳細を視覚的な支援を受けながら思い出し、話し合う内容を整理したものだ。このアプローチにより、疎外された低所得者層は、計画や設計プロセスに参画できなかったり、彼らの意見が無視されたりするため、不公正な計画や設計プロセスだと関連付けることが起きているなど、コミュニティの経験と認識についてより深い洞察が得られた。従来のアクセシビリティに関する計画指標では明らかにならない問題が浮き彫りになったのだ。

研究では、心理的なアクセシビリティを理解する上で、使いやすさ、計画と設計への関与の経験、社会的交流の役割の3つを重要なテーマだと特定している。これらのテーマは、不平等な計画プロセスに直面したり限られたインフラしか利用できなかったりするような疎外されたコミュニティや低所得者層にとって特に重要だと考えられる。本研究結果は、都市計画や政策立案者が、真にアクセシブルで包括的なレクリエーション空間を創出するには、これらの要因を考慮する必要があることを示唆している。

insight | 知見

  • レクリエーション空間に限らず、かつ公共民間問わず、恐らくあらゆる施設やサービスに関してもこのような心理的なアクセシビリティが、利用者層や利用頻度に影響を与えていると思います。ただ、都市が公共空間をあらゆる市民に平等に使ってもらうことを意図するのであれば、誰もが障壁を感じなく使えるように、物理的にも心理的にもアクセシビリティを良くしないといけない、ということを言っているのだと思います。

  • パークPFIなど民間活力を利用した公共空間作りが流行っていますが、その公共空間を利用する地域住民が計画や設計に関与せずにコンペが実施され、地域住民が主役の交流の場というよりも商業の場に変わっていくのであれば、地域にとっては疎遠な(アクセシビリティの悪い)公共空間になってしまいます。こういう事例が増えているような気がします。