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米シャーロットの自動運転実証では社会受容性の課題が顕在化

case|事例

ノースカロライナ州交通局(NCDOT)は、ノースカロライナ大学シャーロット校(UNCシャーロット)のキャンパスで2023年下半期に実施した自動運転の実証実験の結果を取りまとめ社会実装に向けては社会受容性やニーズへの適合が課題であることを報告した。今回の実証実験は、Connected Autonomous Shuttle Innovation(CASSI)プログラムの一環で、キャンパス内にLRTの電停を含む6つの停留所のある3.5kmのルートを設置して行われた。これまでにCASSIプログラムの中で最も複雑な環境で行われた実証だった。

NCDOTは、市民参加型イベントや調査を通じて市民からのフィードバックを収集、分析し、自動運転技術を現時点でどのように使うべきか、利用者ニーズを満たすためにどのように技術を進化させるべきかの知見、教訓をまとめている。主な知見は以下の通り。

  • 大学や地域住民のニーズを満たすためにはさらなる技術の進歩が必要である。

  • 完全な自動運転化ができていないこと、車両の正確で安全な挙動や環境に応じた挙動を確保するために車内に係員が必要であること、車いす用の自動スロープや自動アナウンスなどの安全機能が必要なことなどの理由から現時点の技術は日常的な公共交通サービスを担う水準にない

  • 住民の一部は技術を経験し実証を支援できたことに感謝を示す一方で、ほとんどの市民は、快適性、利便性、信頼性などの理由で他の移動手段を利用していた。

  • 運行速度の遅さ、トラブル対応やマニュアル運行に伴う運行の遅れによって、他の移動手段と比較した際のパフォーマンスを低下させた。

今後、NCDOTは、実証期間中に実施した非利用者まで対象にした広範なアンケートの分析を進めるほか、UNCシャーロットとの別のプログラムでの共同研究などを進める。

insight|知見

  • NCDOTのように失敗や課題を明確にし知見を積み上げていくスタイルは好感がもてます。日本の新技術の実証実験は、パフォーマンスに重点を置かれたものやなし崩し的に社会実装するものなどが目立ち、NCDOTのようなスタイルでの実証は多くないように思います。

  • 車いす対応などの利用者の支援ニーズや移動手段の選好はより現実に近しい環境で実証しないと見えてこないように思います。実証環境や調査設計などがとても重要だということを示す記事だと思います。