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命短し恋せよ乙女〜短編ストーリー〜

今日マックで見たかわいいカップル。
注文するためレジで待ってるとこんな会話が聞こえてきた。

「浮気とか絶対だめだからね?」
「うん」
「こんな可愛くしちゃってさー」
と言いながら、彼氏は彼女の髪を撫でていた。

まだ付き合いたてなんだろうか。
女の子のほうは嬉しそうな表情をしていた。

漫画とかアニメでは見たことがある会話。
でも、生で見たのは初めてかも。
確かに、女の子はとても可愛かった。

トレーを受け取った二人を横目に見送ったあと、ふと、いま遠距離で付き合っている彼を思い出した。
それと同時に、羨ましいという、暗い嫉妬の感情が湧き起こった。

私も彼とあんな風な会話がしたかった。

彼とは、遠距離から始まった関係だった。
出会いはスマホ経由だが、決して不純なものではない。出会い系でもない。
趣味、考え方、夢が一緒で、短期間ですぐ意気投合してしまい、一年を通してほぼ毎日欠かさないくらい会話をした。
そして出会って一年後くらいに付き合った。
一番最初はほぼシルエットくらいしか見えない中でビデオ通話をした。
初めの頃、ほぼ毎日ビデオ通話をした。
彼は辛抱強く、私が顔を映してくれるのを待ってくれ、姿を見た時はベタ褒めしてくれた。

でもやっぱり私は見た目に自信がなく、会うのを躊躇い、付き合って半年で現実に会うことになった。

付き合って四か月。その頃くらいには彼の恋愛感情は前より落ち着いたと感じた。

最初の頃は、私の彼も、さっき見た男の子と似たような感じだったのに。
現実で経験できなかったことを後悔した。
もっと早く会っていれば。
断らなかったら。
彼とあんな経験ができたのかな。
近距離だったらもっと二人とも上手くいったはずなのに。
そう思わずにいられない。

今だってそうだ。やっと近づいて会えるとしても月一回。

やっと注文が呼ばれてトレーを受け取った。
チキンバーガーのセットを持ち席につく。
ネガティブな気持ちを閉じ込め、一口ドリンクを飲んだ。
にっっが!
アールグレイを頼んだはずだったが...。
私の苦手なコーヒーだった。
なぜかレモンも渡されて、通りで変だと思った。
さっきまでの暗い気持ちが一瞬で覚める。
無理矢理、現実に引き戻されてしまった。

コーヒーとレモン。
ああ、これはいまの私のようだ。
恋愛の、切なさと悲しみの苦さと、嫉妬や不満の酸っぱさ。

もし過去に戻れるなら、今こんな後悔をしているんだ、と過去の私にアドバイスしたい。
でも、こんなこと誰かと比べたってしょうがないじゃないか。私には私なりの生き方がある。

私は苦手なコーヒーを、なんでもない顔をしながら無理矢理全部飲み干した。
ああ、、あとから腹痛を訴える私の未来が見える。

と思いながら、私はなんでもない顔をして店を出た。


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