ゆみ

神奈川県の海辺の町で、議員をしています。趣味で書いている小説を、皆さんに読んで頂けたら…

ゆみ

神奈川県の海辺の町で、議員をしています。趣味で書いている小説を、皆さんに読んで頂けたらと思います。 ブログは「山田由美in葉山」でhttps://hayama-nagae1b39.seesaa.net ホームページ は「山田由美in葉山」で検索を。

最近の記事

恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』3章-2

3章-2 紅泉  そうやって離れ小島で三か月ほど過ごしてから、あたしたちは中央に戻った。  いや、本当は辺境が故郷なのだが、もう長いこと市民社会で過ごしているので、すっかり中央星域での暮らしに馴染んでしまっている。  あたしたちはジュニアを同行し、司法局のハンター管理課に頼んで、彼の市民登録をしてもらった。仮の名前で架空の経歴をでっち上げ、市民社会で自由に動けるようにしてもらったのだ。特例だが、〝リリス〟の見習いということにしたので、それが通った。 「だからあんたには

    • 恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-4 3章-1

      2章-4 アスマン  金色のドレスの美女が立ち去るのを、呆然として見送っていたら、リリーが俺に目で合図した。俺が彼女の横の席に移ったら、声を低めて言う。 「あんたを引き取ることに、ヴァイオレットは反対だったのよ。だから、態度が冷たいのは仕方ない。我慢しなさい。それも修行だと思って」  俺が不服な顔をしていると、リリーは更に声を低めて言う。 「問題は、あんたじゃなくて、あんたの父親なの。ちょうどあんたくらいの年齢の時に、シヴァがヴァイオレットに何かしたらしい……というこ

      • 恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-3

        2章-3 アスマン  しかし、頭をさすりながら、何だかひどく懐かしい気分になった。おふくろにもリザードにも、こんな真似をされたことはないのに。  リザードは冷静な書斎派で、俺にはいつも、静かに話をするだけだった。辺境の現状について。組織の運営について。部下たちはみんな、その静けさを恐れていた。リザードが冷静なまま、冷徹な判断を下すのを知っていたからだ。  でも、この女は最初から、ずんずん俺に踏み込んでくる。まるで、そうすることが当然のように。誰に対しても、こうなんだろう

        • 恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-2

          2章-2 アスマン  機械の召使なんか、八つ当たりで壊しても意味がない。壊さないと約束すると、ナギと名乗った美形のアンドロイドは、俺を通路に連れ出した。  どうやら、どこかの地球型惑星にあるリゾートホテルらしい。大きな窓の外には、波を立てた冷たそうな青い海と、いじけた緑の生えた灰色の海岸線が見えた。意識のないうち、こんな所まで運ばれていたとは。  ここは大陸から離れた孤島で、島にある唯一のホテルは、俺たちが占有しているという。乗り物を奪って島から逃げたとしても、この星か

        恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』3章-2

        • 恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-4 3章-1

        • 恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-3

        • 恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-2

          恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-1

          2章-1 アスマン  おふくろは最近、ヒステリーだ。俺がおふくろと呼ぶと、青筋立てて怒りだす。 「リナと呼びなさいって、言ったでしょ!!」  気色悪い。  母親を名前で呼ばせるなんて、異常だ。  おふくろで、いいではないか。ババアと呼ばれるより、はるかにましだろう。それなのに、 「そんな呼び方したって、返事しないから!!」  まるで小娘みたいにわめく。護衛を引き連れて外へ出れば、いっぱしの女幹部みたいな顔をしているくせに。  俺も小さい頃は、素直にリナと呼んで

          恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』2章-1

          恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』1章

          1章 紅泉  最初は、ナギからの報告だった。 「ミス・リリー、これをご覧下さい。先ほど届いた情報です」  彼はあたしたちが秘書として使っている、美青年型の有機体アンドロイドの一体である。  任務と任務の間の待機時間だったので、あたしたちは中央の植民惑星の快適なホテルにいた。繁華街で買い物をしたり、レストラン巡りをしたりする間に、不定期にネットを通じて、辺境からの連絡を受け取っている。  リリーというのはあたしのコード名のようなものだが、それすらも有名になりすぎてしま

          恋愛SF『ブルー・ギャラクシー ジュニア編』1章

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』15章-2

          15章-2 探春  辺境での彼女の通り名は、ジョルファ。本名はリアンヌ・ルナン。元軍人で、辺境に脱出してからは、老舗組織《フェンリル》のナンバー2として知られてきた人物。  ナンバー1はリザードという通り名を持つ男で、最高幹部会からも重用されているという話だけれど、わたしたちは噂でしか知らない。居場所を秘匿していることが多いため、わたしたちの探査の網にもかからないのだ。  その点、ジョルファと側近たちは拠点を公表しているので、探りやすい。彼女たちは違法都市《ルクソール》

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』15章-2

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』13章 14章 15章-1

          13章 シヴァ 「通話だ、向こうと話す!!」  艦の管理システムにそう命じた。話せば、紅泉はわかってくれる。他でもない、従兄弟の俺が言うことなのだから。  あいつはまだ、子供の頃と変わっていない。一緒に野原を走り、木に登り、川で泳いだ。竹刀で打ち合い、柔道の技をかけ合い、取っ組み合いの喧嘩もした。ほとんど、男同士の付き合いだった。だから、わかっている。悪気のない、単純な奴だと。そうだから、報われない〝正義の味方〟なんか、やっていられるんだ。  だが、首筋でバチッと何か

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』13章 14章 15章-1

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』11章-2 12章

          11章-2 シヴァ 「小さいうちは、うんと甘やかしても平気よ。あなたも、子供と遊んであげて」  リアンヌは夢見るような、心を彼方に飛ばした顔つきだ。もう、歴戦のアマゾネスという印象は受けない。顔の輪郭も、丸みを帯びてきている。これが本来のリアンヌなのだ。くだらない男に誘われて、辺境などに出てこなかったら、とうに幸福な母親になっていただろう。 「ああ、キャッチボールをしよう。電子工作も教えてやる。バイク……いや、その前に自転車だな」 「じゃあ、わたしは娘に空手と、サバイ

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』11章-2 12章

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』11章-1

          11章-1 シヴァ 「グリフィンさま、そこにお掛け下さい」  ルワナに厳かな態度で言われた時、不吉な予感が走った。何か、極めてまずいことがあったらしい。 「お馬鹿な面もあるとは思っていましたが、ここまでの馬鹿とは知りませんでした」  えらい言われようだった。しかし、グリフィンとしての職務に遺漏はないはずだ。暗殺志願者はこちらで把握して、巧く操っている。従姉妹たちも無事だ。  俺の前に立ったルワナが、いきなり右手を振り上げた時は、ぶたれると頭でわかっても、躰が抵抗でき

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』11章-1

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』10章-4

          10章-4 リアンヌ  対外的には、何も変わらないようにと努めていた。他組織の男たちにとっては、わたしは男を憎む〝恐怖のアマゾネス〟なのだ。着るものは濃紺のビジネススーツで、飾りは耳に小さなピアスだけ。化粧にも香水にも用はない、という冷然たる態度。  ただ、拠点内の自室は変わった。クローゼットには、シヴァに会うための女らしいドレスが並んだ。化粧台を据え、化粧品や香水も買い集めた。わたしには選択眼がなかったので、セレネの部下の、美容に詳しい娘に指導してもらったけれど。 「

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』10章-4

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』10章-3

          10章-3 リアンヌ  冷たい雨は、朝まで降り続いた。広葉樹と針葉樹の入り混じった森では、動物たちもどこかで雨宿りをしているだろう。木のうろや、灌木の茂みの奥、厚く積もった枯れ葉の下で。  トレーラー内の簡易ベッドには、大人一人分の幅しかなく、大柄な彼とわたしでは、いかにも狭かった。それでも、わたしたちは他の場所に別れたりせず、手足を絡めるようにして眠った。お互いの体温に温められて。  眠りに落ちる寸前まで、シヴァは、まるで貴重な壊れ物であるかのように、わたしを優しく扱

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』10章-3

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』10章-2

          10章-2 リアンヌ 「あの子が、何か失敗でも? 一生懸命勤めているのに」 「その、一生懸命が困る」  シヴァは説明をためらったが、言うしかないと覚悟したようで、苦々しく白状した。 「今夜、俺の寝室に裸でいた」  あ。 「そんなことを要求したつもりはないんだが、何か誤解があったらしくてな。叱りつけたら、泣き出しやがって」  胸が痛んだ。リナがとうとう、そんな挑戦をしたのか。それでシヴァは、船から逃げ出してきたわけだ。  可哀想に。リナにとっては、父親代わりのリ

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』10章-2

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』9章 10章-1

          9章 シヴァ  ある晩遅く、俺が執務室から戻ってきたら、寝室に人の気配があった。  リナだろう。懲りずに新しい服を作っては、俺に着せようとしているからな。青や水色はともかく、ピンクやラベンダーを着せようとするのは、やめてほしい。俺は暗い色でないと、落ち着かないのだ。 「リナ?」  妙だと思ったのは、室内の明かりが、ベッド脇の小さな夜間灯だけになっているからだ。 「はい」  小さな声で返事があり、リナの居場所がわかった。なぜか、俺のベッドに潜り込んでいる。しかも、上

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』9章 10章-1

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』8章

          8章 リアンヌ  馬鹿げている。  自分でそう思う。  わたしはかつての恋人を去勢し、死に追いやった女ではないか。そのことを、自ら宣伝材料にしたではないか。  おかげで辺境中から、男嫌いのアマゾネスと恐れられている。それがなぜ、たった一人の男を気にするのだ。  だが、わたしがどれだけ粗探しをしても、シヴァはまともな男だった。張議員が暗殺された時は、本気で怒っていた。犯人の学生たちは、いずれ本当に冷凍されてしまうだろう。  世間にグリフィンの名が知れ渡っても、シヴァ

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』8章

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』7章

          7章 紅泉  みんな、あたしを馬鹿だと思っている。  一族の総帥であるヴェーラお祖母さまも、従兄弟のシレールも、司法局員にしては物分かりのいいミギワ・クローデルも、そして親友の探春でさえも。  思い立ったらすぐに飛び出す軽はずみ、反省を知らない能天気、と言うのだ。  いちいち反論はしないが、あたしだって、少しはものを考える。  ――いいのか、このままで。  〝リリス〟が懸賞金リストに載せられたのは、これまでの活動の結果だから、仕方ない。違法強化体であるあたしたちを

          恋愛SF『ミッドナイト・ブルー グリフィン編』7章