note 1か月
思えば、藤から始まったnoteである。
4年前の晩春、佐賀県武雄市にある庭園、御船山楽園を散策した時のこと。
湯上りほろ酔いで、夜も10時を回っていた。乏しい灯りの中、甘くただよう香りに引き寄せられていくと、そこは満開の藤だった。
闇に浮かぶたわわな房。真下に入ると無数の花に包まれ、桃源郷という言葉が浮かんだ。
コロナ禍を経て今年の春、今度は桜を目当てに訪れた。やはり夜だ。月が出、池には灯篭が浮かぶ。映り込む桜は、どちらが本物かわからないほどに、「同じ桜がもうひとつあるのだ」とでも言いたげに在る。山に抱かれ夢見心地で巡る庭は、まさに楽園だった。
藤、桜。見たことはないが、御船山の崖下を埋め尽くして咲くというツツジ。美しさを形にしたい衝動が湧いた。
目覚めてもなお藤色の夢の中
神代の桜の息の桜色
岩肌を真っ逆さまに躑躅へと
私にとっては、それ以来の俳句であり、noteなのである。
〈了〉
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