STB特集(2): Live Extreme Experience for TVのご紹介
Live Extremeは2020年の発表以来、PCやスマホのWebブラウザでの再生を基本としてきました。事前のアプリ・インストールや設定なしに、手軽にロスレス/ハイレゾ音声をストリーミング再生できるのが魅力的でしたが、サラウンドやイマーシブ・オーディオ再生時はOS設定を変更する必要があり、煩わしさがありました。
そこで2024年8月にリリースしたのが、Live ExtremeのSTB(セットトップ・ボックス)向け再生アプリである「Live Extreme Experience」です。今回はLive Extreme Experienceの機能や対応コーデック、独自の音質改善方法についてご紹介いたします。
Live Extreme Experienceの概要
Live Extreme Experience for TVは、Live ExtremeコンテンツをSTBで再生するためのネイティブ・アプリで、以下の機種での動作がサポートされています。各アプリ・ストアから無償でダウンロードできますので、STBをお持ちの方は「Live Extreme」「KORG」などのキーワードで検索してみてください。
Apple TV
Apple TV 4K(第1世代, 2017)
Apple TV 4K(第2世代, 2021)
Apple TV 4K(第3世代, 2022)
Amazon Fire TV
Fire TV Stick(第3世代, 2020)
Fire TV Cube(第3世代, 2022)
Fire TV Stick 4K(第2世代, 2023)
Fire TV Stick 4K Max(第2世代, 2023)
Fire TV Stick HD
Android TV(新バージョンであるGoogle TVを含む)
Nvidia Shield TV(第3世代, 2019)
Nvidia Shield TV Pro(第3世代, 2019)
Chromecast with Google TV(4K)
Chromecast with Google TV(HD)
Google TV Streamer(4K)
再生機能
Live Extreme Experienceのトップページには、多くの無償コンテンツやデモコンテンツが並んでおり、会員登録など無しに高品位なハイレゾ/立体音響コンテンツを無料でお楽しみいただくことができます。
再生モードには以下の3つが用意されています。
再生する:レジューム再生(前回の続きから再生)
初めから再生する:前回停止位置によらずコンテンツの冒頭から再生
チャプター:(長尺コンテンツのみ)任意の楽曲から頭出し再生
再生画面下部の🔁ボタンを押すことで、リピート再生(同じタイトルを繰り返し再生)をすることも可能です。
シリアル・コード入力によるコンテンツの追加
Android TV版とFire TV版では、配信主催者によって配布されるシリアル・コードを入力することで、新たなコンテンツを追加することもできます。シリアル・コードはチケッティング会社などを通じて配布可能なため、有料配信にも対応します。
大人の事情により、Apple TV版にはこの機能が搭載されていませんが、Apple TV版Live Extreme Experienceで対応しているフォーマットは、サラウンドやイマーシブ・オーディオを含め、全てAirPlayでも再生可能です。Apple TVで有料コンテンツを再生する場合は、iPhoneやSafariブラウザからApple TVにAirPlayしてください。
Live Extreme Experienceの対応コーデック
Live Extreme Experienceは幅広い映像/音声コーデックに対応しています。
ロスレス/ハイレゾ・オーディオへの対応
Live Extreme Experienceは対応する全てのSTBで、ロスレスPCM音声(FLAC、Apple TVのみApple Losslessにも対応)の再生をサポートします。ステレオはもちろんのこと、Chromecast with Google TVを除き、5.1chや7.1chのサラウンド音声にも対応します。
48kHz/24bitを超えるハイレゾ音源に対しては、HDMIのサンプルレートをコンテンツに応じて切り替えることで、ダウンコンバートなしに再生する機能が搭載されています。ただし、Apple TV 4KやChromecast with Google TVは、HDMIのサンプルレートが48kHzに固定されているため、残念ながらこの機能をご利用いただけません。
AURO-3Dへの対応
AURO-3Dエンコードされた24bitのPCM信号(5.1ch または 7.1ch)を、AURO-3D対応AVアンプにビットパーフェクトで渡すことができれば、ハイト・スピーカーを含む立体音響信号に復元することができます。
Fire TV Stick(2020年以降発売モデル)、Nvidia Shield TV(第3世代)、Google TV Streamerは、マルチチャンネルPCMのビットパーフェクト出力が可能なため、AURO-3Dコンテンツ(最大13.1ch@48kHz または 11.1ch@96kHz)の再生に対応しています。
Dolby Atmosへの対応
インターネットで配信されているDolby Atmosは、ロッシーな圧縮コーデックであるDolby Digital Plusベースですが、Blu-ray Discに収録されているDolby Atmosは、ロスレス圧縮コーデックであるDolby TrueHDベースなのが一般的です。つまり、同じDolby Atmosでも、配信とパッケージでは音質に差が存在していたわけです。
Live Extreme Experienceは、対応する全てのSTBでDolby Atmos (Dolby Digital Plusベース) の再生をサポートしているだけでなく、Fire TV Cube(第3世代)、Fire TV Stick 4K(第2世代)とNvidia Shield TV(第3世代)では、ロスレスのDolby Atmos (Dolby TrueHDベース) の再生にも対応しました。これにより、インターネット配信でもパッケージ同等の音質を実現できます。
MPEG-H 3D Audioへの対応
Apple TVを除き、Live Extreme Experienceが対応する全てのSTBでMPEG-H 3D Audio(以下、MPEG-H 3DA)の再生がサポートされています。対応機種では、設定メニューの「MPEG-H設定」から、MPEG-H 3DAの再生方法を変更することもできます。
MPEG-H 3DA対応のAVアンプをお持ちの場合は、「音声出力モード」で「パススルー」を選択すれば、立体音響再生にも対応可能です。AVアンプがMPEG-H 3DAに非対応の場合は、環境に応じて「2ch」「5.1ch」「7.1ch」を選択すると、アプリ内でPCMにデコード/ダウンミックスされた上で出力されます。
MPEG-H設定には、「DRCエフェクト」というオプションも用意されています。これは、ダイナミックレンジを圧縮して再生することができるもので、深夜に小音量で音楽を聴きたい場合などに便利です。音質を重視する場合は「なし」を選択するのが良いでしょう。
4K/HDRへの対応
Live Extremeは、ライブ配信で一般的な「H.264 (AVC)」と、Ultra HD Blu-rayの動画コーデックとしても知られている「H.265 (HEVC)」の再生に対応しています。4K対応のSTBであれば、4K解像度のコンテンツの再生も可能です。
輝度や色域を拡張させる「HDR(ハイダイナミックレンジ)」については、H.265コーデックのみの対応となりますが、Live Extremeがサポートする全てのSTBで「HDR10」に対応。更に4K対応機種では「Dolby Vision」もサポートしています。
独自の音質改善オプション
Live Extreme Experienceを開発する過程で分かったことですが、STBのOSにはまだまだバグ(あるいは奇妙な仕様)が潜んでいます。悪いことに、それによってオーディオ性能に制限が掛かっている事象が確認されています。
コルグでは、発見したバグをできる限り開発元にフィードバックするようにしていますが、いつ修正されるかは開発元次第です。そこで、Live Extreme ExperienceのAndroid TV / Fire TV版(v1.1以降)には「プレーヤー詳細設定」という機能を追加し、これらのバグを回避する仕組みを実装しています。上級者向けの設定と言えますし、デフォルトのままでも再生されないということはないので、以下の内容をよく理解した上で設定してみてください。
2ch PCM (44.1~96kHz) を5.1chに拡張する
一部のSTBは、ステレオのPCMを全て48kHz/16bitにダウンコンバートしてHDMI出力してしまうことが分かりました。同一機種で、5.1chや7.1chのPCMは、オリジナルのサンプルレートや24bitでの出力ができているので、大変奇妙な挙動です。
本オプションは、2ch PCMコンテンツ(48kHz/16bitを除く)を再生時に5.1chに拡張(L/Rチャンネル以外は無音)してやることで、ダウンコンバートを回避するためのものです。
本オプションは、以下のSTBをお使いで、それがハイレゾ/5.1ch対応のAVアンプに接続されている場合に推奨されます。
Fire TV Stick (第3世代, 2020)
Fire TV Cube (第3世代, 2022)
Fire TV Stick 4K (第2世代, 2023)
Fire TV Stick 4K Max (第2世代, 2023)
Fire TV Stick HD
Google TV Streamer
2ch PCM (176.4~192kHz) を5.1chに拡張する
上記オプションと関連していますが、Google TV StreamerやFire TV Stick HDは、176.4kHz以上でのHDMI出力に対応していないようで、5.1ch拡張機能を使うと逆に再生ができなくなってしまいます。
本オプションは、以下のSTBをお使いで、それがハイレゾ/5.1ch対応のAVアンプに接続されている場合に推奨されます。
Fire TV Stick (第3世代, 2020)
Fire TV Cube (第3世代, 2022)
Fire TV Stick 4K (第2世代, 2023)
Fire TV Stick 4K Max (第2世代, 2023)
Google TV StreamerやFire TV Stick HDでは本オプションが利用できないため、176.4kHz以上のステレオPCMコンテンツは、残念ながら48kHz/16bitへのダウンコンバート再生となります。
7.1ch PCMのサラウンドとリア・チャンネルを入れ替える
PCM 7.1chの再生に対応しているSTBのうち、一部のモデルは、チャンネル順が間違ってHDMI出力される(サラウンド・チャンネルとリア・チャンネルが入れ替わっている)ことが確認されています。このようなSTBでは、Auro 11.1 (7.1+4H) や Auro 13.1 も正常に再生されません。
本オプションは、7.1ch PCM再生時にサラウンド・チャンネルとリア・チャンネルを入れ替えてシステムに渡すことができます。これによって、問題のあるSTB(下記リスト参照)で、7.1chサラウンドの音像やAURO-3Dの再生が改善されます。
Fire TV Stick (第3世代, 2020)
Fire TV Cube (第3世代, 2022)
Fire TV Stick 4K (第2世代, 2023)
Fire TV Stick 4K Max (第2世代, 2023)
Fire TV Stick HD
Google TV Streamer
まとめ
以上のように、Live Extreme ExperienceはSTBの機種によって、対応コーデックやスペックに大きな違いがありますが、まとめると以下のようになります。
では、一体どのSTBを選ぶのがオーディオ的に最善と言えるでしょうか…?
次回からはいよいよ各STBの違いに切り込んでいきますが、まずは現時点で最強のSTBと思われる「Nvidia Shield TV」について取り上げます。