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【書店員さんから】感想が届きました!① -グカ・ハン『砂漠が街に入りこんだ日』

 ここではないどこかへ。グカ・ハンが見ているものは、ここではない新しい世界だ。
 そこはここよりずっと悪いという絶望と、そこはここよりずっと優しいという希望のあいだを彷徨いながら、グカ・ハンは言葉を紡いでいく。
 そうして出来た作品を私は、私のための作品だと感じる。「ルオエス」の彼女も、「雪」の彼女も、「真夏日」の彼女も、この作品集の誰もが、私と「同じ」光景を見ている。
 誰もが絶望と希望のあいだで彷徨っている。たぶん、あなたも。
                   BOOKS青いカバ 小国貴司さん


 一冊読み終わって、しばらく経ってもなお、この気持ちをことばに出来ずにいます。はっきり言えることはひとつ、
『わたし、この本が大事。』
 あれ、なんかこんな映画みたことある……という既視感と、この妙にひんやりとした距離感が新しく、なんだか寝る前にもこの作品のシーンを思い描いたりして、気付けばわたしの中にすんなりと入ってきて、やさしく浮上させてくれました。
救われた気持ちにもなるし、突き放されたり、混乱させられたり、ときに共感したり。
 この作品から受け取るメッセージは人それぞれだと思うし、元からそんなメッセージさえもないような気さえもしてくる、不思議なお話です。
 感情をもって読むというより、五感で感じて読む、不思議な読書体験だったように思います。
 この世界にうまく溶け込めずにいる人たちに、届けたい本。
 ぜひ、グカ・ハンの世界に浸ってください。
                   旭屋書店池袋店 礒部ゆきえさん

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韓国からフランスへ渡り、自ら選びとったフランス語で
鮮烈な作家デビューを果たした、グカ・ハン。
8作の短編からなる「越境」小説集、ついに日本へ。

砂漠が街に入りこんだ日』 グカ・ハン 著 原 正人 訳
四六変型/164ページ/並製  2020年8月1日より好評発売中!
全国の書店またはオンラインストア、小社WEBショップにてお買い求めいただけます。

◆著者略歴
グカ・ハン(Guka Han)1987年韓国生まれ。ソウルで造形芸術を学んだ後、2014年、26歳でパリへ移住。パリ第8大学で文芸創作の修士号を取得。現在は、フランス語で小説を執筆している。翻訳家として、フランス文学作品の韓国語への翻訳も手掛ける。

◆訳者略歴
原 正人(Masato Hara)1974年静岡県生まれ。訳書にフレデリック・ペータース『青い薬』(青土社)、トニー・ヴァレント『ラディアン』(飛鳥新社)、ジャン・レニョ&エミール・ブラヴォ『ぼくのママはアメリカにいるんだ』(本の雑誌社)、バスティアン・ヴィヴェス『年上のひと』(リイド社)、アンヌ・ヴィアゼムスキー『彼女のひたむきな12カ月』、『それからの彼女』(いずれもDU BOOKS)などがある。

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