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『V2H(Vehicle to Home)』:サステナブルな未来のための100のアイデア vol.5

サステナブルな未来のための100のアイデア(通称:サス100)』は、NPOグリーンズの植原正太郎が自学自習のために更新していくサステナビリティ探究マガジンです。

卒FIT後の電気自動車の使い方「V2H」

日本では家庭における太陽光発電の固定価格買取制度の終了に伴い「卒FIT」市場が盛り上がっている。自宅の屋根に設置した太陽光パネルで発電した電力をこれまでのように売電しても収益になりづらいので、自家消費への流れが増えています。

その流れで「EV(電気自動車)」にも大きな波が来ており、先日の東京モーターショーでも国内の自動車メーカーも様々な新型EVの発表を行い「主役」級の扱いだったそうだ。

そんな中、家庭の太陽光発電とEVの組み合わせとして「V2H(Vehicle to Home)」という使い方にも注目が集まっている。

EVのバッテリーを家庭用の蓄電池としても使ってしまおうとするのが「V2H」という考え方だ。車から家に電力を供給するから「Vehicle to Home」。

日産「リーフ」を蓄電池利用する

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太陽光発電に蓄電池を組み合わせると、昼間に発電した電力を貯めておいて夜間に消費することができる。逆に、夜間の電気料金が安い時間帯に蓄電しておいて、昼間に使うことで電気代を節約することができる。また災害時・停電時には、蓄電池の電力で賄うこともできる。

日産のEV「リーフ」は早くから蓄電池利用を可能にしており「V2H」でも注目されている。

一般的な定置型蓄電池よりも大容量なので「蓄電池」としてもコストパフォーマンスが高い。

パナソニックの定置型蓄電池(LJPB21A):
容量「5.6kWh」で65万円、つまり「11万/kWh」。

テスラ「パワーウォール」:
容量「13.5kWh」で82.5万円、つまり「6.1万/kWh

日産「リーフe+」:
容量「62kWh」で441万円、つまり「7.1万/kWh」。

※いずれもコンバーターや工事費、V2H機器などを除いた蓄電池価格のみで比較

リーフの蓄電池コスパはテスラには及ばないが、パワーウォールは「走らない」。

「日産リーフe+」の62kWhの容量があれば、停電時でも3〜4日間も利用できるのでリジリエンスの面からも望ましい。(一般的な4人家族の電力消費量は平均18.5kWh)

今年度、リチウムイオン電池の研究開発でノーベル科学賞を受賞した吉野彰氏も「一般家庭向けで蓄電のためだけの用途では設備コストが大きいので、電気自動車の蓄電池で電気を貯めることが望ましい」と発言されている。

「V2H」からさらに進んだ「V2G」

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画像引用:Motor Fan Tech

V2Hは家庭内での発電〜蓄電〜消費の話だが、その仕組みを社会全体に実装しようという取り組みも進んでいる。

EVの蓄電池と電力系統(グリッド)と接続して、需給調整に活かす取り組みだ。だから「Vehicle to Grid」。

住宅とのグリッド接続はもちろん、EV普及に伴い増える充電スポットでもEVが蓄電している余剰電力をグリッドに流すことができるようになる。

EVは現在普及段階にあるが、6000万台ある国内乗用車の1/6に当たる1000万台でもEVに切り替わったら蓄電される電気量は測りしれない量になり、総体として社会の電力インフラになり得る。太陽光などの変動型再エネ発電所の普及が進むと電力の供給は「不安定」になる問題があるが、それを全国を走るEVの蓄電池で変動分を吸収することが可能になる。

日本でも実証実験が進み、昨年はルノーが世界最大規模の実証実験を始めたそうだ。 V2Gは2020年代に研究と普及が進む領域なので、またちゃんと勉強したい。

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そんなわけで今回のサス100は「V2H(Vehicle to Home)」をテーマに書いてみました。次回もお楽しみに!

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