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『マイクロ物流による地産地消』:サステナブルな未来のための100のアイデア vol.2

サステナブルな未来のための100のアイデア(通称:サス100)』は、NPOグリーンズの植原正太郎が自学自習のために更新していくサステナビリティ探究マガジンです。

マイクロ物流による農家の挑戦

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Netflixのドキュメンタリー映画「地球に優しくする方法」(原題:Sustainable)をご覧になっただろうか?

アメリカ・イリノイ州郊外のとある有機農家が、自分たちが育てた野菜を、自分たちの手でトラックで都会に運んで、レストランやベーカリーに直接野菜を卸すシーンから始まる。生産者が自らの手で運び、注文をもらった料理人と直接コミュニケーションをしながら、時にはフィードバックをもらいながら、また農場に戻り生産に活かしている。

この仕組みに手応えを感じた農家マーティさんは、次第に近隣の有機農家を説得し、巻き込み、複数の有機農家が協同組合として協力しあうことで自分たちが育てた有機野菜の流通量を増やそうとチャレンジする。

とてもシンプルな取り組みではあるのだが、このモデルはたくさんの可能性を秘めている。

有機農家にとってはレストランなどへの直接販路を獲得することで、安定的な売上と、通常よりも高い収益を確保することができるので難易度の高い有機栽培に安心して臨めることになる。また、料理人にとっても、顔の見える関係の中で食材を仕入れることができ、かつ、自分たちの料理のために必要な野菜を農家にオーダーすることができるので、提供する料理の質を継続的に上げていくことができる。

「中央卸売市場」システムの限界

日本でもそうだが「中央卸売市場」のようなプラットフォームに、全国の野菜が集められ、値段を決められ、その後に各地に配送されるのが「大規模物流」だとするなら、イリノイ州の取り組みは「マイクロ物流」だと言えるだろう。

前者は「全体最適」としては大変重要な機能だが「地産地消」は難しくなり、当たり前だがフードマイレージも高くなる。(皆さんも経験したことがあるだろうが、地方のスーパーで地産の生鮮品を購入しようとしてもなぜか「全国」の野菜しか並んでいない)

都市に近いエリアに農家がいれば「トラックを一台出す」という「マイクロ物流」によって、地産地消を実現することができるのだ。

そして、そんなチャレンジは日本でも行われ始めている。

150名の農家と200軒の飲食店をつなぐ「やさいバス」

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静岡県の会社「エムスクエア・ラボ」が始めた「やさいバス」は、焼津から静岡市までおよそ直径100キロメートルの範囲を巡回するトラックを運行させ、エリア内の150軒の農家と、200軒の飲食店が加盟しているそうだ。

ローカル経済のライター甲斐かおりさんの取材記事から見どころを引用させてもらおう。

バスの運行ルートと時刻はあらかじめ決まっていて、野菜の供給者である農家も、買い手である店も、それぞれ最寄りのバス停まで、野菜を運んだり、取りに行ったりする。一見手間になりそうだが、直売所まで売れ残った分を引取りに行く二度手間や、遠い市場まで買い出しに行くことを考えると、すぐ近くまでバスが来てくれて必要な量だけを運ぶのはとても便利だ。
野菜の受発注はすべてシステム上で行われる。システム利用料として出荷額の11パーセントを農家が負担。そして買い手である小売店や飲食店が、コンテナ1箱につき350円の送料を負担する。原則、買い手は法人のみで個人は利用できない。

先述のイリノイ州の農家の取り組みを、システム開発含めて実現している凄い取り組みだ。

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こちらの記事でも紹介されているが「市場流通」と「やさいバス」では農家の手取り金額が大きく違ってくることも注目すべきポイントだろう。やさいバスは、なんと市場流通の二倍の割合だ。

大都会でも地産地消のチャレンジ「こくベジ」

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所変わって、大都会・東京の国分寺市でも同様のチャレンジが行われている。「こくベジ」と名付けられたプロジェクトは「国分寺産」の野菜をPRする目的で、地元レストランに地産野菜をつかったオリジナルメニューを提供することからはじまったそうだ。2015年から始まったプロジェクトは加盟農家は10軒、こくベジのオリジナルメニューを作る飲食店は100店舗を越えるまで広がったそうだ。

こちらのインタビュー記事で中心メンバーの南部良太さんは、成功の要因は「配達」にあったと語っている。

南部さん:こくベジが始まった頃は、農家さんと飲食店が直接ふれあう機会がほとんどありませんでした。そこで、僕たち有志が勝手に野菜の配達を始めたんです(笑)。農家さんから新鮮な野菜を預かって、それを飲食店に届けて。そうしたら、少しずつ農家さんと飲食店がつながっていきました。うれしかったですね。今、僕たちは40店舗くらいのお店に野菜を配達しています。

「有志で勝手に野菜を配達する」というのはイリノイ州の農家の取り組みとも共通しているのが面白い。「マイクロ物流」を自分たちでつくって、農家と料理人をつなげることが地産地消の鍵となることが見えてくる。

今後、日本でも様々な地域で同様の取り組みが増えていく予感がします。

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そんなわけで今回のサス100は「マイクロ物流による地産地消」をテーマに書いてみました。次回もお楽しみに!

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